bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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最小多項式

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

前回は代数拡大について定義したが、代数拡大の性質について調べていく。

定理

$L/K$ を体の拡大とする。
このとき、$[L:K]<\infty$ なら、$L$ は代数拡大となる。

証明

$[L:K]=n$ とする。
$B=\{1,\dots ,a^{n}\}$ とすると、$|B|=n+1$ なので、$K$ 上一次従属である。
すなわち、$\exists c_{0},\dots ,c_{n-1}\in K\ ;(c_{0},\dots ,c_{n-1})\neq (0,\dots ,0)\ ,c_{0}+c_{1}a+\cdots c_{n}a^{n}=0$
よって、$a$ は代数的である。

$\Box$

定義(最小多項式

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$f(x)\in K[x]-\{0\}:monic,\ f(a)=0$ をみたす次数最小の $f(x)$ を $a$ の $K$ 上の最小多項式という。
また、$Irr(a,K)=f(x)$ とも表す。

既約の定義を復習しておく。

定義

$A$ を整域とし、$a\in A\backslash \{0\}$ とする。
$a\in A\backslash A^{\times}$ で、$\forall b,c\in A\ ,a=bc\Rightarrow b\in A^{\times}\lor c\in A^{\times}$ となるとき、$a$ を既約元という。
$f\in A[x]\backslash \{0\}$ が既約多項式であるというのは、$A[x]^{\times}=A^{\times}$ なので、
$f\in A[x]\backslash A^{\times}$ で、$\forall g,h\in A[x]\ ,f=gh\Rightarrow g\in A^{\times}\lor h\in A^{\times}$
ということである。

代数的な元 $a$ で生成する体という大域的な情報を考えるうえで、$a$ の最小多項式という局所的な情報が役に立つ。

命題

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$Irr(a,K)=f(x)$ とすると、$f(x)$ は既約で一意的である。

証明

$(1)$ 既約

$f(x)$ が可約であると仮定すと、
$\exists g,h\in K[x]\ ;f(x)=g(x)h(x)$ かつ $g,h\neq A^{\times}$ なので、$deg(g),deg(h)<degf(x)$
$f(a)=g(a)h(a)=0$ となり $K[a]$ 体なので整域であるので、$g(a)=0 \lor h(a)=0$
どちらにしても、$degf(x)$ の最小性に矛盾。 よって、$f(x)$ は既約である。

$(2)$ 一意性

$Irr(a,K)=f(x),g(x)\ (f(x)\neq g(x))$ とする。
$h(x)=f(x)-g(x)$ とすると、$h(a)=f(a)-g(a)=0$ $f(x),g(x)$ はモニックなので、$degh(x)<f(x),g(x)$ であるが、$f(x),g(x)$ の次数の最小性に矛盾。

$\Box$

命題

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$Irr(a,K)=f(x)$ とおく。
$g(x)\in K[x]$ で $g(a)=0$ なら、$f(x)\mid g(x)$

証明

$\exists q(x).r(x)\in K[x]\ ;g(x)=f(x)q(x)+r(x)$ かつ $degr(x)<degf(x)$
$g(a)=r(a)=0$ となるが、$f(x)$ の次数の最小性より、$r(x)=0$ とならなければならない。
よって、$g(x)=f(x)q(x)$ となるので、$f(x)\mid g(x)$

$\Box$

補足

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$Irr(a,K)=f(x)$ とおく。
$\phi:K[x]\to K[a]$ を $\phi(g(x))=g(a)$ と定義したとき、$Ker(\phi)=(f)$ である。
$(f)\subset Ker(\phi)$ は自明である。
$g(x)\in Ker(\phi)$ とすると $g(a)=0$ であるので、上の命題より、$f(x)\mid g(x)$ である。
よって、$g(x)=f(x)h(x)$ となり、$f(x)$ で生成されているので、$Ker(\phi)\subset (f)$

命題

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$f(x)\in K[x]$ が既約でモニックな多項式であり、$f(a)=0$ なら、$Irr(a,K)=f(x)$

証明

$Irr(a,K)=g(x)$ とする。
命題より、$g(x)\mid f(x)$ であり、仮定より、$f(x)$ は既約なので、$\exists c\in A^{\times}\ ;f(x)=cg(x)$
$f(x)$ はモニックなので、$c=1$ より、$f(x)=g(x)$

$\Box$

次の定理は、最小多項式次数という局所的な情報が体の拡大次数という大域的な情報を持っているという意味で重要です。

定理

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$Irr(a,K)=f(x)$ で、$degf(x)=n$ とすると、$K(a)$ の $K$ 上の基底として $B=\{1,a,\dots ,a^{n-1}\}$ がとれる。
特に、$[K(a):K]=n$ である。

命題

$K[a]=K(a)$ であることに注意する。
$(1)$ 一次独立

もし、$\exists c_{0},\dots ,c_{n-1}\in K\ ;(c_{0},\dots ,c_{n-1})\neq (0,\dots ,0)$
$c_{0}+\cdots c_{n-1}a^{a-1}=0$ となったら、$f(x)$ の取り方に矛盾する。
よって、$B$ は $K$ 上一次独立。

$(2)$ 生成
$\forall c\in K[a]\ ,\exists g(x)\in K[x]\ ;c=g(a)$
また、$\exists q(x),r(x)\in K[x]\ ;g(x)=f(x)q(x)+r(x)\ ,degr(x)<degf(x)$ とできる。
$\exists c_{0},\dots ,c_{n-1}\in K\ ;r(x)=c_{0}+\cdots c_{n-1}a^{a-1}$ とおくと、
$g(a)=r(a)$ より、$B$ は $K$ を生成する。

$\Box$

この定理からすぐに次のことがわかる。

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ を $K$ 上代数的とする。
$K(a)$ は代数拡大である。

証明

上の定理より、$[K(a):K]< \infty$ なので、代数拡大となる。

$\Box$

つまり、代数的な元による単拡大は代数拡大ということである。

命題

$L/M,M/K$ を体の拡大とすると、次は同値。
$L/K$ が代数拡大 $\Leftrightarrow$ $L/M,M/K$ は代数拡大

証明

$\underline{(\Rightarrow)}$
$L$ の任意の元は $K$ 上代数的である。
$M\subset L$ なので、もちろん $ M $ の任意のも $K$ 上代数的である。
$K\subset M $ なので、$L$ の任意の元は $ M $ 上も代数的である。

$\underline{(\Leftarrow)}$
$\forall a\in L$ をとる。
$a$ が $K$ 上代数的であることを示す。
$Irr(a,M)=f(x)=x^{n}+c_{1}x^{n-1}+\cdots +c_{n}\ (c_{1},\dots ,c_{n}\in M)$ とする。
$$ K_{0}=K,\ K_{1}=K_{0}(c_{1}),\ \cdots ,\ K_{n}=K_{n-1}(c_{n}) $$ とする。すると、$1\leq \forall i\leq n$ に対し、$c_{i}$ は $K$ 上代数的である。
特に、$K\subset K_{i-1}$ なので、$c_{i}$ は $K_{i-1}$ 上代数的である。
よって、$1\leq \forall i\leq n$ に対し、$K_{i}$ は 代数的な元により、 $K_{i-1}$ の単拡大となっており、$[K_{i}:K_{i-1}]<\infty$
また、$a$ は $K_{n}$ 上代数的なので、$[K_{n}(a):K_{n}]<\infty$
よって、 $$ [K_{n}(a):K]=[K_{n}(a):K_{n}][K_{n}:K_{n-1}]\cdots [K_{1}:K]<\infty $$ となるので、$K_{n}(a)$ は 代数拡大となり、特に、$a$ は $K$ 上代数的である。

$\Box$

これで、代数拡大を繰り返すことでも代数拡大が保たれることが分かった。

命題

$L/K$ を体の拡大とする。このとき、次は同値。
$L/K$ は有限次拡大 $\Leftrightarrow$ $L/K$ は有限生成で代数拡大

証明

$\underline{(\Rightarrow)}$
有限次拡大なら代数拡大であるということは示した。
$[L:K]=1$ なら、$L=K$ なので示すことはない。
$[L:K]>1$ とし、$K_{0}=K$ とする。

$a_{1}\in L\backslash K$ をとり、$K_{1}=K_{0}(a_{1})$ とおくと、$[L:K]=[L:K_{1}][K_{1}:K_{0}]$
今、$[K_{1}:K_{0}]>1$ なので、$[L:K]>[L:K_{1}]$ となり、$[L:K_{1}]=1$ なら、これで終わりである。

$[L:K_{1}]\neq 1$ とする。
$a_{2}\in L\backslash K$ をとり、$K_{2}=K_{1}(a_{2})$ とおくと、$[L:K_{1}]=[L:K_{2}][K_{2}:K_{1}]$
今、$[K_{2}:K_{1}]>1$ なので、$[L:K_{1}]>[L:K_{2}]$ となり、$[L:K_{2}]=1$ なら、これで終わりである。

$[L:K_{2}]\neq 1$ とする。
以下同様に、
$a_{i}\in L\backslash K$ をとり、$K_{i}=K_{i-1}(a_{i})$ とおくと、$[L:K_{i-1}]=[L:K_{i}][K_{i}:K_{i-1}]$
今、$[K_{i}:K_{i-1}]>1$ なので、$[L:K]>[L:K_{1}]>[L:K_{2}]>\cdots >[L:K_{i-1}]>[L:K_{i}]>\cdots$ となるが、 有限次拡大なので、$\exists n\geq 1\ ;[L:K_{n}]=1$ となり、$L=K_{n}$
$K_{n}=K(a_{1},\dots ,a_{n})$ なので $L$ は有限生成である。

$\underline{(\Leftarrow)}$
$L$ は有限生成なので、$\exists a_{1},\dots , a_{n}\in L\ ;K=(a_{1},\dots , a_{n})$
$$ K_{0}=K,\ K_{1}=K_{0}(a_{1}),\ \cdots ,\ K_{n}=K_{n-1}(a_{n})=L $$ とする。$a_{1},\dots , a_{n}$ は $K$ 上代数的であるが特に、$a_{i}$ は $K_{i-1}$ 上代数的である。
よって、$[K_{i}:K_{i-1}]<\infty$
したがって、 $$ [L:K]=[L:K_{n-1}]\cdots [K_{1}:K]<\infty $$ となり、有限次拡大である。

$\Box$

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学2, 日本評論社, 2015.

代数拡大

この話は、基本的な群、環の知識を持っていると仮定し、体の定義も知っていると仮定する。

定義(拡大体)

体 $L$ の部分環 $K$ が体であるとき、$K$ は $L$ の部分体、$L$ は $K$ の拡大体という。
また、$L/K$ は拡大体であるともいう。

$\mathbb{R}/\mathbb{Q}$ のは拡大体である。

$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]=\{a+b\sqrt{2}\mid a,b\in \mathbb{Q}\}$ とすると、 $\mathbb{Q}[\sqrt{2}]/\mathbb{Q}$ は拡大体である。

$K$ を体とする。
$K(x)$ を1変数有理関数体とすると、$K(x)/K$ は拡大体である。

定義

$L/K$ を拡大体とすると、$L$ は $K$ のベクトル空間とみなせる。 $$ [L:K]=dim_{K}L $$ とし、$L$ の $K$ 上の拡大次数という。
$[L:K]<\infty$ なら$L$ は $K$ の有限次拡大といい、
そうでなければ無限次拡大といい、$[L:K]=\infty$ とかく。
$[L:K]=d$ なら、$d$ 次拡大であるという。

$\mathbb{R}\subset \mathbb{C}$ であり、$\mathbb{C}$ の $\mathbb{R}$ ベクトル空間としての基底を、 $\{1,\sqrt{-1}\}$ としてとれるので、$[\mathbb{C}:\mathbb{R}]=2$

$[\mathbb{Q}[\sqrt{2}]:\mathbb{Q}]=2$ である。

$[K(x):K]=\infty$ である。

定理

$L/M,M/K$ を有限次拡大とする。
このとき、$L/K$ も有限次拡大で、 $$ [L:K]=[L:M][M:K] $$ が成立する。

証明

$[L:M]=l,[M:K]= m $ とおく。
$B_{1}=\{x_{1},\dots ,x_{l}\}$ を $L$ の $ M $ 上の基底、$B_{2}=\{y_{1},\dots ,y_{m}\}$ を $ M $ の $K$ 上の基底とする。
$B=\{x_{i}y_{j}\mid i=1,\dots ,l,\ j=1,\dots ,m\}$ とおき、$B$ が $L$ の $K$ 上の基底となることを示す。

$(1)$ 生成
$\forall x\in L$ をとる。
$B_{1}$ は $L$ の基底なので、 $$ \exists a_{1},\dots ,a_{l}\in M\ ;x=\sum_{i=1}^{l}a_{i}x_{i} $$ となる。$B_{2}$ は $ M $ の基底なので、$1\leq \forall i\leq l$ に対して、 $$ \exists b_{i1},\dots ,b_{im}\in K\ ;a_{i}=\sum_{j=1}^{n}b_{ij}y_{j} $$ となる。よって、 $$ x=\sum_{i=1}^{l}\sum_{j=1}^{n}b_{ij}x_{i}y_{j} $$ となる。

$(2)$ 一次独立
$$ \forall b_{11},\dots ,b_{lm}\in K\ ,\sum_{i=1}^{l}\sum_{j=1}^{n}b_{ij}x_{i}y_{j}=0 $$ とする。$B_{1}$ は $ M $ 上一次独立なので、 $$ \sum_{j=1}^{n}b_{ij}y_{j}=0 $$ である。$B_{2}$ は $ K $ 上一次独立なので、 $$ 1\leq \forall i\leq l\ ,1\leq \forall j\leq m\ ,b_{ij}=0 $$ よって、$B$ は $K$ 上一次独立

$\Box$

補題

$L/K$ を拡大体とする。
$S\subset L$ とすると、$S\cup K$ を含む最小の部分体が存在する。

証明

$\forall \lambda\in \Lambda\ ,S\cup K\subset M_{\lambda}$ とする。
$S\cup K\subset L$ なので、$\Lambda \neq \varnothing$
$M=\bigcap_{\lambda\in \Lambda}M_{\lambda}$ とおくと、$ M $ は体である。
$\forall \lambda\in \Lambda\ ,K\cup S\subset M\subset M_{\lambda}$ であるので、最小の部分体は $ M $ である。

$\Box$

いくつか、定義をする。

定義

$L/K$ を体の拡大とする。
$S\subset L$ とすると、$S\cup K$ を含む $L$ 最小の部分体を $K(S)$ と書き、$K$ に $S$ を添加した体という。
$S=\{s_{1},\dots , s_{n}\}$ が有限集合のときは $K(S)$ のことを $K(s_{1},\dots , s_{n})$ と書く。
また、$K(S)$ を $K$ 上 $S$ で生成された体ともいう。

$K(S)$ の同値表現として、次の表現がある。

命題

$L/K$ を体の拡大とする。
$S=\{s_{1},\dots , s_{n}\}\subset L$ とし、  $$ A=\left\{\frac{f(s_{1},\dots , s_{n})}{g(s_{1},\dots , s_{n})}\mid f,g\in K[X_{1},\dots , X{n}],\ g(s_{1},\dots ,s_{n})\neq0\right\} $$ とおくと、$A=K(S)$ である。

証明

$A\subset K(S)$を示す。
$A$ の元は、$f(s_{1},\dots , s_{n})/g(s_{1},\dots , s_{n})$ という形をしていて、 $f(s_{1},\dots , s_{n})$ と $g(s_{1},\dots , s_{n})$ は $K\cup S$ の元の和や積で表されているので、$K(S)$ の元である。
また、$K(S)$ は体であり、$g(s_{1},\dots , s_{n})$ の逆元が存在するので、$f(s_{1},\dots , s_{n})/g(s_{1},\dots , s_{n})\in K(S)$ である。

$K(S)\subset A$を示す。
自明な考察により、$A$ は体となる。
明らかに、$K\cup S$

$\Box$

補足

$L/K$ を体の拡大とし、$a.b\in L$ とする。
$K(a,b)=K(a)(b)$ となる。
なぜなら、$K(a,b)$ は $K\cup \{a,b\}$ を含む最小の部分体で、$K(a)(b)$ は $K(a)\cup \{b\}$ を含む最小の部分体であるが、 $K(a)$ は $K\cup \{a\}$ を含む最小の部分体であるので、結局、$K(a)(b)$ は $K(a)\cup \{a\}\cup \{b\}$ 含む最小の部分体である。

定義

$L/K$ を体の拡大とする。
$\exists a\in L\ ;L=K(a)$ となるとき、$L$ を $K$ の単拡大という。
また、$\exists a_{1},\dots , a_{n}\in L\ ;K=(a_{1},\dots , a_{n})$ となるとき、$L$ は $K$ 上有限生成であるという。

有限生成の性質をしらべるまえに代数拡大を定義する。

定義(代数拡大)

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ とする。
$\exists f(x)\in K[x]:minic\ ;f(a)=0$ となるとき、$a$ は $K$ 上代数的であるという。
さらに、$\forall a\in L$ に対して、$K$ 上代数的なら、$L$ を代数拡大という。

代数拡大の性質を調べる。

命題

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ のとき、次は同値。
$(1)$ $a$ は $K$ 代数的である。
$(2)$ $K[a]=K(a)$

証明

$\underline{(1)\Leftrightarrow (2)}$
$K[a]\subset K(a)$ は自明なので、逆の包含を示す。

$\phi :K[x]\to K[a]$ を $\phi(f)=f(a)$ とする。
$K[a]$ の定義より、$\phi$ は全射であり、また、凖同型でもある。
よって、凖同型定理より、$K[x]/Ker(\phi)\cong K[a]$
$a$ は代数的なので、$Ker(\phi)\neq (0)$
$K[a]$ は体なので、$K[a]$ は整域であり、$K[x]/Ker(\phi)$ も整域である。
よって、$Ker(\phi)$ は素イデアルで、$K[x]$ はPIDなので、$Ker(\phi)$ は極大イデアルである。
よって、$K[x]/Ker(\phi)$ は体なので、$K[a]$ は体となる。
$K(a)$ の最小性より、$K(a)\subset K[a]$ よって、$K[a]=K(a)$

$\underline{(2)\Leftrightarrow (1)}$
$a=0$ は $K$ 上代数的なので、$a\neq 0$ とする。
$K[a]=K(a)$ なので、$a^{-1}\in K[a]$
よって、$\exists n\geq 0\ ;\exists c_{0},\dots ,c_{n}\in K\ ;a^{-1}=c_{0}+c_{1}a+\cdots +c_{n}a^{n}$
すなわち、$0=-1+c_{0}a+c_{1}a^{2}+\cdots +c_{n}a^{n+1}$ となり、$a$ は $K$ 上代数的である。

$\Box$

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学2, 日本評論社, 2015.

位数p^2の群の分類

今回は位数 $p^{2}$ の群の分類をする。

命題

$G$ を群、$H,K\lhd G$ で、$H\cap K=\{1_{G}\}$ 、$HK=G$ とする。
このとき、$G\cong H\times K$ となる。

また、上記の命題を使う。

補題

$G$ が $p$ 群なら、$Z(G)\neq \{1\}$ である。

証明

$G$ の類等式を考えると、 $$ |G|=|Z(G)|+\sum_{i}|C(x_{i})| $$ $|C(x_{i})|\neq 1$ なので、$p$ の倍数で、$Z(G)=\{1\}$ なら、$|G|$ が $p$ 群であることに矛盾。
よって、$Z(G)\neq \{1\}$ である。

$\Box$

命題

$G$ を群とし、$|G|=p^{2}$ なら、$G$ はアーベル群である。

証明

$Z(G)<G$ と補題より、$|Z(G)|$ は $p,p^{2}$ のどちらかである。
$|Z(G)|=p$ とする。
$x\in G\backslash Z(G)$ をとり、$H=<x>$とする。
$Z(G)\subset Z_{G}(H)$ で、 $\forall h\in H\ xh=hx$ で、$x\in Z_{G}(H)$ なので、$Z(G)\neq Z_{G}(H)$
よって、$|Z_{G}(H)|>p$ であり、$Z_{G}(H)<G$ なので、$|Z_{G}(H)|=p^{2}$ となるしかない。
よって、$Z_{G}(H)=G$ となるが、これは $x\in Z(G)$ を意味する。 これは、$x\in G\backslash Z(G)$ に矛盾。
よって、$|Z(G)|=p^{2}$ なので、$G=Z(G)$ となり、$G$ はアーベル群である。

$\Box$

定理

$p$ を素数として、位数 $p^{2}$ の群は $C_{p^{2}}$ か $C_{p}\times C_{p}$ に同型である。

証明

$G$ を群で、$|G|=p^{2}$ とする。
元の位数は群の位数の約数なので、$1,p,p^{2}$ のどれかである。
もし、$p^{2}$の元が存在すれば、$G$ は巡回群となり、$C_{p^{2}}$ に同型である。

位数 $p^{2}$ の元を持たないとする。
位数1の元は単位元のみなので、単位元以外の元の位数は $p$ である。
$a\in G$ をとり、$H=<a>$ とし、$b\in G\backslash H$ をとり、$K=<b>$ とする。
ここで、$H\neq K$ であることに注意する。
$H\cap K<H$ なので、$|H\cap K|$ は $|H|$ の約数、すなわち、$1,p$ のどちらかである。
$|H\cap K|=p$ とする。
$H\cap K \subset H$ かつ $|H\cap K|=|H|$ なので、$H\cap K=H$
また、$H\cap K$ かつ $|H|=|K|$ なので、$H=K$
これは、$H\neq K$ に矛盾。
よって、$|H\cap K|=1$ すなわち、$H\cap K=\{e\}$
$H<HK$ なので、$|HK|$ は $p$ の倍数である。
$|HK|=p$ とする。
$H,K\subset HK$ かつ $|HK|=|H|=|K|$ なので、$HK=H=K$
これは、$A\neq B$ に矛盾。
よって、$|HK|>p$ である。
命題より、$|G|$ はアーベル群なので、$H,K\lhd G$ となる。
よって、$HK<G$ なので、$|HK|\leq |G|=p^{2}$ となり、$|HK|=p^{2}$ となるしかない。
よって、 $G=HK$ となり、命題より、$G\cong H\times K\cong C_{p}\times C_{p}$

$\Box$

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
http://rikei-index.blue.coocan.jp/gunron/tyugokuzyouyo.html
http://mathematics-pdf.com/pdf/sylow_thm.pdf

位数15の群の分類

シローの定理を使って位数15の群を分類する。
その前に必要な命題を証明する。

命題

$H<G,N\lhd G$ とする。
このとき、$HN<G$ となる。

証明

$\forall x,y\in HN$ をとると、$\exists h,h'\in H\ ,n,n'\in N\ ;x=hn,y=h'n'$
$$ \begin{align} xy^{-1}&=hn(h'n')^{-1}\\ &=hnn'^{-1}h'^{-1}\\ &=hNh'^{-1}\\ &=hh'^{-1}N\in HN \end{align} $$
よって、$HN<G$

$\Box$

命題

$G$ を群、$H,K\lhd G$ で、$H\cap K=\{1_{G}\}$ 、$HK=G$ とする。
このとき、$G\cong H\times K$ とする。

命題

$f:H\times K\to G$ を $f(h,k)=hk$ と定義する。
$G=HK$ なので、$f$ はwell-defiendである。
定義より、$f$ は全射である。
$\forall (h,k)\in Ker(f)$ をとる。
$f(h,k)=hk=1$ なので、$h=k^{-1}\in H\cap K=\{1_{G}\}$
よって、$h=k=1$ なので、$Ker(f)=\{1_{H\times K}\}$ となり、$f$ は単射
$H\lhd G$ なので、$\forall k\in K\ ,khk^{-1}\in H$ である。
よって、$hkh^{-1}k^{-1}=h(kh^{-1}k^{-1})\in H$
同様に、$hkh^{-1}k^{-1}=(hkh^{-1})k^{-1}\in K$
よって、$hkh^{-1}k^{-1}\in H\cap K=\{1_{G}\}$ なので、$hk=kh$
よって、 $$ f(h,k)f(h',k')=hkh'k'=hh'kk'=f(hh',kk')=f\left((h,k)(h',k')\right) $$ となり、$f$ は凖同型となる。

$\Box$

これ以降、$\mathbb{Z}/n \mathbb{Z}$ を $C_{n}$ と書くことにする。

命題

位数15の群 $G$ は $C_{3}\times C_{5}$ に同型である。

証明

$|G|=3\times 5$ なので、$H\in Syl_{3}(G),K\in Syl_{5}(G)$ とする。
$\forall h\in H\ ,hHh^{-1}=H$ なので、$H\subset N_{G}(H)$
よって、$H<N_{G}(H)<G$ なので、$5=|G:H|=|G:N_{G}(H)||N_{G}(H):H|$
よって、$|G:N_{G}(H)|$ は $5$ か $1$ であるが、シローの定理より、$|G:N_{G}(H)|\equiv 1 \mod 3$
よって、$|G:N_{G}(H)|=1$ となるしかない。
すなわち、$H$ と共役なシロー$p$-部分群は $H$ のみである。これは、$H\lhd G$ を意味する。
同様に、$K\lhd G$
$H\cap K<H,K$ なので、$|H\cap K|$ は $|H|=3,|K|=5$ の約数である。
よって、$H\cap K=\{1\}$
$H,K\lhd G$ なので、$HK<G$ であり、$H,K<HK$ なので、$|HK|$ は $|H|=3,|K|=5$ の公倍数である。
よって、$|HK|\leq |G|$ より、$|HK|=15$
よって、$HK=G$ なので、命題より、$G\cong H\times K\cong C_{3}\times C_{5}$

$\Box$

この命題を応用すると、次の定理が成り立つ。

定理

$p,q\ (p>q)$ を素数とし、$p\not\equiv 1\mod q$ とする。
このとき、位数 $pq$ の群 $G$ は $C_{p}\times C_{q}$ に同型である。

証明

$|G|=p\times q$ なので、$H\in Syl_{p}(G),K\in Syl_{q}(G)$ とする。 $n_{p}=|G:N_{G}(H)|,n_{q}=|G:N_{G}(K)|$ とおく。
命題と同様に、$n_{p}\equiv 1 \mod p$ かつ $n_{p}\mid q$ なので、$n_{p}=1$
同様に、$n_{1}\equiv 1 \mod q$ かつ $n_{q}\mid p$ だが、$p\not\equiv 1\mod q$ なので、$n_{q}=1$
よって、$H,K\lhd G$
あとは、命題と同様の議論により、$G\cong C_{p}\times C_{q}$

$\Box$

$G$ を群とし、$|G|=35$ とすると、$7\not\equiv 1\mod 5$ なので、$G\cong C_{5}\times C_{7}$

$\Box$

定理(中国式剰余定理)

$m,n\in \mathbb{Z}_{>1}$ で $gcd(m,n)=1$ なら、$C_{mn}\cong C_{m}\times C_{n}$ となる。

証明

$f:C_{mn}\cong C_{m}\times C_{n}$ を $f([x]_{mn})=([x]_{m},[x]_{n})$ と定義する。

$(1)$ well-defined
$[x]_{mn}=[y]_{mn}$ とする。
$mn\mid x-y$ なので、$m\mid x-y$ かつ $n\mid x-y$ である。
よって、$[x]_{m}=[y]_{m}$ かつ $[x]_{n}=[y]_{n}$
よって、$([x]_{m},[x]_{n})=([y]_{m},[y]_{n})$

$(2)$ 凖同型 $$ \begin{align} f([x]_{mn}+[y]_{mn})&=f([x+y]_{mn})\\ &=([x+y]_{m},[x+y]_{n})\\ &=([x]_{m}+[y]_{m},[x]_{n}+[y]_{n})\\ &=([x]_{m},[x]_{n})+([y]_{m},[y]_{n})\\ &=f([x]_{mn})+f([y]_{mn}) \end{align} $$

$(3)$ 全射
$\forall ([x]_{m},[y]_{n})\in C_{m}\times C_{n}$ をとる。
$gcd(m,n)=1$ より、$\exists a,b\in Z\ ;am+bn=1$
$z=xbn+yam$ とおくと、$[z]_{m}=[xbn]_{m}=[x(1-am)]_{m}=[x]_{m}$
同様に、$[z]_{n}=[y]_{n}$
よって、$f([z]_{mn})=([z]_{m},[z]_{n})=([x]_{m},[y]_{n})$

$(4)$ 単射
$f([x]_{mn})=f([y]_{mn})$ とする。
$([x]_{m},[x]_{n})=([y]_{m},[y]_{n})$ なので、$[x]_{m}=[y]_{m}$ かつ $[x]_{n}=[y]_{n}$ である。
すなわち、$n\mid x-y$ かつ $m\mid x-y$ である。
$gcd(m,n)=1$ なので、$mn\mid x-y$
よって、$[x]_{mn}=[y]_{mn}$

$\Box$

この定理を使えば、位数15の群 と 位数35の群は、それぞれ、$C_{15}$ と $C_{35}$ に同型である。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
http://rikei-index.blue.coocan.jp/gunron/tyugokuzyouyo.html
http://mathematics-pdf.com/pdf/sylow_thm.pdf

シローの定理(2)

以下の記事の続きを書く。 bananake-tai.hatenablog.com

補題

$G$ を群とし、$N\lhd G$ とする。
このとき、$\forall H<G/N\ ,\exists K<G\ ;K/N\cong H$ が成立する。

証明

$\pi:G\to G/N$ を自然な凖同型とする。
$K=\pi^{-1}(H)$ とおくと、$K<G$
$\pi$ の $K$ への制限を、$\pi\mid_{K}:K\to G/N$ とすると、${\rm ker}(\pi\mid_{K})=K\cap N=N$
$\pi$ は全射なので、$\pi(K)=H$ となる。

よって、$\pi\mid_{K}:K\to H$ は全射なので、凖同型定理より、$K/N\cong H$

$\Box$

次の定理も重要である。

定理

$G$ を有限群、$p$ を素数、$p^{k}\mid |G|\ (k\geq 0)$ このとき、$G$ は位数 $p^{k}$ 部分群を含む。

証明

$(1) |G|=1$ のとき
このとき、$p^{0}=1$ なので、$G$ 自身が求める部分群である。

$(2) |G|>1$ のとき
$|H|<|G|$ なる 有限群 $H$ に対して、定理の主張を満たすと仮定する。

$\exists H<G\ ;p\nmid |G:H|$ のとき
$|G|=|G:H||H|$ なので、$p^{k}\mid |H|$
よって、帰納法の仮定より、$H$ は 位数 $P^{k}$ の部分群を含む。

$\forall H<G\ ,p\mid |G:H|$ のとき
$p\mid Z(G)$ なので、$\exists a\in Z(G)\ ;ord(a)=p$
$N=<a>$ とおくと、$N\lhd G$ なので、$G/N$ は群になる。
$|G:N|=|G|/p$ なので、$|G:N|<|G|$ となり、帰納法の仮定より、$\exists B<G/N\ ;|B|=\ $ p^{k-1}
補題より、$\exists K<G\ ;K/N\cong B$
よって、$|K|/|p|=|K/N|=|B|=\ $ p^{k-1}
すなわち、$|K|=p^{k}$

$\Box$

定義(正規化群)

$G$ を群とし、$H<G$ とする。
$$ N_{G}(H)=\{g\in G \mid g^{-1}Hg\} $$ を正規化群という。

共役という作用を考えることで、いろいろなことがわかったが、集合に対しても共役というのを定義する。

定義

$G$ を群とし、$H\subset G$ と $g\in G$ に対して、 $$ gHg^{-1}=\{gxg^{-1}\mid x\in H\} $$ を $H$ の $g$ による共役集合という。

省略するが、$H<G$ なら $gHg^{-1}$ も $G$ の部分群となる。

定義

$G$ を群とし、$H,H'\subset G$ とする。
$\exists g\in G\ ;H'=g^{-1}Hg$ となるとき、 $H$ と $H'$ は共役であるという。
また、$H<G$ のとき、$H$ と共役な部分群全体の集合を $H$ の共役類とPう。

次の補題を示す。

補題

$G$ を群とし、$H<G$ とする。
$H$ の共役類を $S$ とすると、$|G/N_{G}(H)|=|S|$
さらに、$G$ が有限群なら、$|G|/|N_{G}(H)|=|S|$ となる。

証明

$B$ を $G$ の部分群全体の集合とする。
$f:G\times B\to B\ ,f(g,H)=gHg^{-1}$ とすると、
$f$ は $G$ の $B$ への作用となる。
いま、$Orb(H)=\{gHg^{-1}\mid g\in G\}=S$ であり、$St(B)=\{g\in G\mid gBg^{-1}=B\}=N_{G}(S)$ である。
$Orb(H)=|G/St(G)|$ なので、$|S|=|G/N_{G}(S)|$

$\Box$

定義

$G$ を群とし、$|G|=p^{e}n$ ただし、$gcd(p,n)=1$ とする。
$H<G$ で、$|H|=p^{e}$ となるものを、$G$ のシロー$p$-部分群という。
$G$ のシロー$p$-部分群全体の集合を $Syl_{p}(G)$ で表す。

省略するが、$H$ が $G$ のシロー$p$-部分群なら $gHg^{-1}$ も $G$ のシロー$p$-部分群となる。

定義

$G$ を有限群 $G$ が $p$ べきのとき、$G$ を $p$-群という。
$H<G$ で $H$ が $p$ べきのとき、$H$ を $G$ の $p$-部分群という。

ここで、ようやくシローの定理の証明にはいれる。
以下の4つをまとめて、シローの定理と呼ぶことにする。

定理(シローの定理

$G$ を有限群とし、$|G|=p^{e}n$ ただし、$gcd(p,n)=1$ とする。
$(1)$ $G$ のシロー$p$-部分群は存在する。
$(2)$ $K$ が $G$ の $p$-部分群なら、$K\subset R$ なる $G$ のシロー$p$-部分群 $R$ が存在する。
$(3)$ すべての $G$ のシロー$p$-部分群は共役である。
$(4)$ $|Syl_{p}(G)|\equiv 1\mod p$

証明

$\underline{(1)}$
上の定理より成り立つ。

$\underline{(2)}$
$H\in Syl_{p}(G)$ をとる。
今、$|H|=p^{e}$ なので、 $|G/H|=|G|/|H|=n$ である。
$K$ の $G/H$ への積作用を考える。
$G/H$ が $K$ の作用による軌道の直和表されてるとすると、 $$ |G/H|=\sum_{i}|Orb(x_{i})| $$ となる。
$|G/H|=n$ なので、$p\nmid Orb(x_{k})$ なる $K$ の軌道が存在する。
$|Orb(x_{i})|=|K|/|St(x_{i})|$ なので、$|Orb(x_{i})|$ は $K$ の約数である。
よって、$|Orb(x_{k})|=1$ となるしかない。
$Orb(x_{k})={gH}$ とすると、これは、$\forall k\in K\ ,kgH=gH$ を意味する。
よって、$kg\in gH\Leftrightarrow k\in gHg^{-1}=R$ が任意の $k\in K$ に対して成り立つので、 $K\subset R$

$\underline{(3)}$
$H、K\in Syl_{p}(G)$ とすると、$|H|=|K|=p^{e}$ であり、 $(2)$ と同様に、$K\subset gHg^{-1}$ なので、$K=gHg^{-1}$

$\underline{(4)}$
$H\in Syl_{p}(G)=X$ 1つをとる。
$H$ の $Syl_{p}(G)$ への共役作用を考える。
$X^{H}$ を固定点全体の集合とすると、$X^{H}\neq \varnothing$ である。
なぜなら、$\forall h\in H\ ,hHh^{-1}=H$ なので、$H\in X^{H}$
$X$ を $H$ の作用による軌道の直和で表すと、
$$ |X|=\sum_{i}|C(H_{i})| $$ となる。必要なら番号をつけかえて、$X^{H}=\{H=H_{1},\dots ,H_{s}\}$ とする。
$|X^{H}|=1$ となることを示す。
$H\neq Q\in X^{H}$ とすると、$\forall a\in H\ ,aQa^{-1}=Q$ なので、$H\subset N_{G}(Q)$
また、$Q\subset N_{G}(Q)$ で $|N_{G}(Q)|\mid |G|$ なので $|N_{G}(Q)|=p^{e}n'$ となる。
よって、$H,Q$ は $N_{G}(Q)$ のシロー$p$-部分群なので、$(3)$ より、$\exists x\in N_{G}(Q)\ ;xQx^{-1}=H$
一方、$N_{G}(Q)$ の定義より、$xQx^{-1}=Q$ なので、$H=Q$
すなわち、$|X^{H}|=1$ であり、$X^{H}=\{H\}$ を意味する。
$H\in X^{H}\Leftrightarrow |C(H)|=1$ であることに注意すると、
$$ |X|=1+\sum_{i\neq 1}|C(H_{i})| $$ $i\neq 1$ なら $|C(H_{i})|\mid |G|$ であり、$|C(H_{i})|>1$ なので、$p\mid |C(H_{i})|$ である。
よって、$|X|=|Syl_{p}(G)|\equiv 1\mod p$
特に、補題と $(3)$ を使えば、$|X|=|G|/|N_{G}(H)|\equiv 1\mod p$

$\Box$

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
http://mathematics-pdf.com/pdf/sylow_thm.pdf

シローの定理(1)

シローの定理とは、有限群を調べるうえで重要な定理である。 シローの定理を示すのは結構大変で、いくつかの命題が必要となる。

定義(中心化群)

$H$ を 群 $G$ の部分群とする。
$Z_{G}(H)=\{g\in G\mid \forall h\in H\ ,gh=hg\}$
を $H$ の中心化群という。
$Z_{G}(G)$ を $Z(G)$ と表し、$G$ の中心という。

簡単なため省略するが、任意の中心化群は $G$ の部分群である。

定義

$G$ を群とする。 $x,y\in G$ に対し、$\exists g\in G,\ gxg^{-1}=y$ となるとき、$x$ と $y$ は共役であるという。
$x$ と共役である元の集合を $C(x)$ とかき、$x$ の共役類という。

次の命題は省略する。

命題

$G$ を群とする。
$$ x\sim y\Leftrightarrow \exists g\in G,\ gxg^{-1}=y $$ と定義すると、$\sim$ は $X$ 上の同値関係となる。

つまり、上の状況で $x$ の同値類と $x$ の共役類は同じである。

補足

$G$ の $G$ への共役による作用を考えると、$x$ の共役類と $x$ による $G$ の軌道は同じである。

補題

$G$ を有限群とする。
$$ C(x)=\{x\}\Leftrightarrow x\in Z(G) $$

証明

$$ \begin{align} C(x)=\{x \}&\Leftrightarrow \forall g\in G\ ,gxg^{-1}=x \\ &\Leftrightarrow \forall g\in G, gx=x\ g \\ &\Leftrightarrow x\in Z(G) \end{align} $$

$\Box$

系(類等式)

$G$ を有限群とする。
$|C(x_{s})|> 1$ とすると、 $$ |G|=|Z(G)|+\sum_{s}|C(x_{s})| $$

証明

$G$ を同値類の直和で表すと、 $$ |G|=\sum_{i}|C(x_{i})| $$

上の補題を使えば、系が成立する。

$\Box$

命題

$G$ を有限群とする。
$\forall H<G\ ,|G:H|\equiv 0 \mod p$
とすると、$Z(G)\equiv 0 \mod p$

証明

$G$ の類等式を

$$ |G|=|Z(G)|+\sum_{s}|C(x_{s})| $$

とする。 $C(x_{s})$ は $G$ の $G$ への共役による作用を考えたときの軌道でもあるので、

$$ |C(x_{s})|=|Orb(x_{s})|=|G:St(x_{s})| $$

よって、$|C(x_{s})| \equiv 0 \mod p$
また、仮定より、 $$ |G|=|G:{e}||{e}|=|G:{e}| \mod p $$

したがって、$|Z(G)|\equiv 0 \mod p$

$\Box$

ここで、位数に関する命題を1つ扱う。

命題

$G$ を群とする。
$a\in G$ とし、$ord(a)=$m とする。
$n\geq 1$ に対し、次が同値。
$$ a^{n}=1 \Leftrightarrow m\mid n $$

証明

$\underline{(\Rightarrow)}$ $n=mq$ とすると、 $$ a^{n}=a^{mq}=(a^{m})^{q}=1 $$

$\underline{(\Leftarrow)}$ $\exists q,r\in \,\mathbb{N}\ ;n=mq+r\ (0\leq r< m)$
とできる。
$$ a^{n}=a^{mq+r}=a^{r}=1 $$ $a^{r}=1$ だが、位数の最小性により、$r=0$
よって、$n=mq$ となり、$m\mid n$

$\Box$

命題

$G,G'$ を群とする。
$f:G\to G'$ を凖同型とし、$a\in G$ の位数を $n$ とすると、$f(a)$ の位数は $n$ の約数である。

証明

$$ f(a)^{n}=f(a^{n})=f(e)=e' $$

$\Box$

次は重要な定理である。

定理(Cauchy定理)

$G$ を有限群とし、$p$ を $|G|$ の素因数とする。
このとき、$G$ に位数 $p$ の元が存在する。

証明

$|G|=pm$ とする。
$(1)$ $m=1$ のとき $|G|=p>1 $ より、単位元以外の元 $a$ が存在する。
元の位数は群の位数なので、$a$ の位数は $1$ か $p$ であるが、 $a$ は単位元ではないので、$a$ の位数は $p$ である。

$(2)$
$|H|=p(m -1) $ なる $H<G$ に対して、定理の主張を満たすと仮定する。
$\exists H<G\ ;p \nmid |G:H|$ なら、$p\mid |H|$ なので、 帰納法の仮定より、$H$ は位数 $p$ の元を含む。

$\forall H<G\ ;p \mid |G:H|$ のとき、上の命題より、$p\mid Z(G)$ である。
$1\neq a\in Z(G)$ をとり、$ord(a)=l$ とする。

$p\mid l$ のとき、$ord(a^{l/p})=p$ である。

$p\nmid l$ のとき、$Z(G)$ はアーベル群なので、$H=<a>$ とすると、
$H \lhd G$ であり、$G/H$ は群となる。
$|G/H|=|pm|/|l|$ で $p\nmid l$ なので、$l\mid k$ である。
よって、$|G/H|\leq p(m -1)$ なので、帰納法の仮定より、 $\exists y\in G/H\ ;ord(y)=p$
$\pi: G\to G/H$ を自然な凖同型とする。
$\pi$ は全射なので、$\exists x\in G\ ;\pi(x)=y$
$ord(x)=n$ とすると、命題より、$p\mid n$ である。よって、$ord(x^{n/p})=p$

$\Box$

cauchyの定理の証明のポイントは、剰余群つくること、すわなち、正規部分群を作る部分である。
$G/H$ として剰余群としたが、$Z(G)/H$ として、同じ議論をしても問題ない。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
http://mathematics-pdf.com/pdf/sylow_thm.pdf

群の作用

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

対称群や2面体群は複雑な群であったが、それぞれ要素の並べ変えや、平面の変換と考えることで、 その群の性質をとらえることができた。このような考えの一般化が群の作用である。

定義

$G$ を群、$X$ を集合とする。 $\phi:G\times X\to X$ が次を満たすとき、$G$ の $X$ への左作用という。
$ (1)\ \phi(1,x)=x \\ (2)\ \phi(g,\phi(h,x))=\phi(gh,x) $ このとき、$G$ は $X$ に左から作用するという。

例(自明な作用)

$G$ を群、$X$ を集合とする。
$\phi:G\times X\to X$ を $\phi(g,x)=x$ と定義すると、
$G$ は $X$ に左から作用する。

$\phi:GL_{n}(\mathbb{R})\times \mathbb{R}^{n}\to \mathbb{R}^{n}$ を $\phi(A,v)=Av$ と定義すると、
$G$ は $X$ に左から作用する。

$\phi:S_n\times I_n\to I_n$ を \phi(\sigma,i)=\sigma (i) と定義すると、
$G$ は $X$ に左から作用する。

例(共役による作用)

$G$ を群とする。
$\phi:G\times X\to G$ を $\phi(g,x)=gxg^{-1}$ と定義すると、 $G$ は $X$ に左から作用する。

証明

$(1)$ $\phi(1,x)=1x1^{-1}=x$

$(2)$
$\phi(g,\phi(h,x))=\phi(g,hxh^{-1})=ghxh^{-1}g^{-1}=ghx(gh)^{-1}=\phi(gh,x)$

$G$ の $X$ への作用があったとき、作用で移る点全体を考察する。

定義

$G$ は $X$ に作用しているとする。
$x\in X$ とする。
$$ {\rm Orb}_{G}(x)=\{gx\mid g\in G\} $$ を $x$ の $G$ による軌道という。
$$ {\rm St}_{G}(x)=\{g\in G\mid gx=x \} $$ を $x$ の安定化群という。

安定化群とはつまり、$G$ によって動かないような $G$ の元全体である。

$SO_{2}(\mathbb{R})$ は $\mathbb{R}^{2}$ に自然に作用する。
$x=(1,0)\in \mathbb{R}^{2}$ とすると、
${\rm Orb}_{G}(x)=\{(\cos\theta,\sin\theta)\mid \theta\in \mathbb{R}\}=\{(x,y)\mid x^{2}+y^{2}=1\}$

命題

$G$ は $X$ に作用しているとする。
$\forall x\in X$ に対して、${\rm St}_{G}(x)$ は $G$ の部分群である。

証明

$\forall g,h\in {\rm St}_{G}(x)$ をとる。
$g^{-1}hx=g^{-1}x=x$
よって、$g^{-1}h\in {\rm St}_{G}(x)$

$\Box$

命題

$群G$ は 集合 $X$ に作用しているとする。
$\forall x,y\in X$ に対して、 $$ x\sim y \Leftrightarrow y\in {\rm Orb}_{G}(x) $$ と定義すると、すると、$\sim$ は $X$ 上の同値関係となる。
よって、この同値関係による剰余類は $X$ 上の軌道に対応する。
この同値関係による商集合を $X/G$ とかく。

証明

$(1)$ 反射律
$g=1$ とすれば、$1x=x$ なので、$x\in {\rm Orb}_{G}(x)$

$(2)$ 対称律 $x\sim y$ とする。
$y\in {\rm Orb}_{G}(x)$ なので、$\exists g\in G;\ y=gx$
よって、$x=g^{-1}y$ なので、$x\in {\rm Orb}_{G}(y)$
すなわち、$y\sim x$

$(3)$ 推移律
$x\sim y,\ y\sim z$ とする。
$y\in {\rm Orb}_{G}(x)$ なので、$\exists g\in G;\ y=gx$
$z\in {\rm Orb}_{G}(y)$ なので、$\exists h\in G;\ z=h y$
よって、$h^{-1}z=gx \Leftrightarrow z=hgx$ なので、$z\in {\rm Orb}_{G}(x)$
すなわち、$x\sim z$

$\Box$

命題

$G$ は $X$ に作用しているとする。
$x\in X$ とする。
$\phi:{\rm Orb}_{G}(x)\to G/{\rm St}_{G}(x)$ を $\phi(gx)=g{\rm St}_{G}(x)$ と定義すると、全単射である。
よって、$|{\rm Orb}_{G}(x)|=|G/{\rm St}_{G}(x)|=|G:{\rm St}_{G}(x)|$ なので、$|G|<\infty$ ならラグランジュの定理より $$ |{\rm Orb}_{G}(x)|=|G|/|{\rm St}_{G}(x)| $$ が成立する。

証明

$$ \begin{align} g_{1}x=g_{2}x&\Leftrightarrow g_{2}^{-1}g_1x=x \\ &\Leftrightarrow g_{2}^{-1}g_{1}\in {\rm St}_{G}(x) \\ &\Leftrightarrow g_{1}\in g_{2}{\rm St}_{G}(x) \\ &\Leftrightarrow g_{1}{\rm St}_{G}(x)=g_{2}{\rm St}_{G}(x) \end{align} $$

よって、$\phi$ はwelld-defined であり、全単射である。

$\Box$

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.