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bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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部分群

今回は部分群に関して書いていく。

bananake-tai.hatenablog.com

まずは、上記の演習の証明からする。

演習

  1. $G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、$\forall a\in G$ に対して、 $$ \phi(a^{-1})=\phi(a)^{-1} $$ であることを示せ。
  2. $G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ を同型とする。
    このとき、逆写像も同型であることを示せ。つまり、全単射の逆写像全単射なので、逆写像も準同型であることを示せ。

証明1

$\forall a\in G$ をとる。
$\phi(a^{-1})\phi(a)=\phi(a^{-1}a)=e'$
よって、右から $\phi(a)^{-1}$ をかけると、$\phi (a^{-1})=\phi(a)^{-1}$ となる。

$\Box$

証明2

$\forall x',y'\in G'$ をとる。
$\phi$ は準同型なので、 $$ \phi(\phi^{-1}(x'y'))=x'y'=\phi(\phi^{-1}(x'))\phi(\phi^{-1}(y'))=\phi(\phi^{-1}(x')\phi^{-1}(y')) $$ $\phi$ は単射なので、$\phi^{-1}(x'y')=\phi^{-1}(x')\phi^{-1}(y')$

$\Box$

また、この演習より新しい群の例をあげる

例(自己同型)

$G$ を群とする。
${\rm Aut}G=\{f:G\to G\mid f:isom.\}$ とすると、${\rm Aut}G$ は群になる。
つまり、$G$ から $G$ への同型写像全体は群になるということである。

ある、群が与えられたとき、その部分集合が群の演算により、群になることがある。

定義(部分群)

$(G,・)$ を群とする。
$H\subset G$ が ・に関して群になるとき、$H$ を $G$ の部分群といい、$H\leq G$ と表す。
また、$G\neq H$ のとき、$H<G$ と表す。

例をあげるまえに、次の命題を証明する。

命題

$G$ を群とする。
$H\subset G$ が $G$ の部分群である
$ \begin{align} {\Leftrightarrow} \left\{ \begin{array}{l} (1)1_G\in H\\ (2)\forall x,y\in H\ ,xy\in H\\ (3)\forall x\in H\ ,x^{-1}\in H \end{array} \right. \end{align} $

証明

$(\Rightarrow)$
$H\subset G$ が $G$ の部分群であると仮定する。すなわち、次の $(G'0)\sim(G'3)$ が成立する。
$(G'0)f:H\times H\to H$ が定まっている。
$(G'1)\forall x,y,z\in H\ ,(xy)z=x(yz)$
$(G'2)\exists e\in H\ ;\forall x\in H\ ,xe=xa=a$
$(G'3)\forall x\in H\ ,\exists y\in H\ ;xy=yx=e$

$\underline{(1)}$
$(G'2)$ より $1_H1_H=1_H$ が $G$ の演算として成立する。
また、$(G'3)$ より $1_H$ の逆元が存在するので、$1_H^{-1}$ を左からかけると、$1_H=1_G$ となる。

$\underline{(2)}$
$(G'1)$ より自明である。

$\underline{(3)}$
$(G'3)$より、$\forall x\in H\ ,\exists y\in H\ ;xy=yx=1_H$ が$G$ の演算として成立する。
$1_H=1_G$ であったので、$y$ は $G$ での逆元でもあり、$y=x^{-1}$ である。

$(\Leftarrow)$
$\underline{(G'0)}$
$(1)$ より、$H\neq \varnothing$ であり、$(2)$ より、$H$ 上の演算が定まっている。

$\underline{(G'1)}$(結合法則)
$(G1)$ より、自明である。

$\underline{(G'2)}$(単位元の存在)
$(1)$ より、$1_G\in H$ である。
$(G2)$ より、$\forall x\in G\ ,x1_G=1_G=x$ が成立する。とくに、$x\in H$ なので、$1_G=1_H$ である。

$\underline{(G'3)}$(逆元の存在)
$(3)$ より、$\forall x\in H\ ,x^{-1}\in H$ なので、$(G3)$ より、$x^{-1}$ は $G$ の元として $xx^{-1}=x^{-1}x=1_G$ が成立する。
よって、$1_H=1_G$ なので、$x^{-1}$ は $H$ での逆元でもある。

$\Box$

証明のポイントは、 $(\Rightarrow)$ に関しては、$H$ でみたときの単位限や逆元が $G$ でみたときの単位限や逆元の概念と一致すること示し、 $(\Leftarrow)$ は $G$ でみたときの単位限や逆元が $H$ でみたときの単位限や逆元の概念と一致すること示すことである。

例1

$G$ を群とする。
常に、$1<{G},G\leq{G}$ であり、これらを自明な部分群という。

例2

通常の $+$ に関して、
$\mathbb{Z}<\mathbb{Q}<\mathbb{R}$
となる。

例3(特殊線形群

$SL_n({\mathbb{R}})=\{A\in GL_n({\mathbb{R}})\mid {\rm det}A=1\}$
と定義すると、$SL_n({\mathbb{R}})<GL_n({\mathbb{R}})$ となる。
$SL_n({\mathbb{R}})$ を特殊線形群という。

証明

$\underline{(1)}$
${\rm det}A=1$ なので、$I_n\in SL_n({\mathbb{R}})$

$\underline{(2)}$
$\forall A,B\in SL_n({\mathbb{R}})$ をとる。

$$ {\rm det}AB={\rm det}A\ {\rm det}B=1 $$ よって、$AB\in SL_n({\mathbb{R}})$

$\underline{(3)}$
$\forall A\in SL_n({\mathbb{R}})$ をとる。 $$ \begin{align} 1&={\rm det}I_n\\ &={\rm det}AA^{-1}\\ &={\rm det}A\ {\rm det}A^{-1} \end{align} $$ よって、$({\rm det}A)^{-1}={\rm det}A^{-1}=1$ なので、$({\rm det}A)^{-1}\in SL_n({\mathbb{R}})$

例4

$m\in \mathbb{Z}_{>0}$ を1つとる。
このとき、$m\mathbb{Z}< \mathbb{Z}$ である。

例5(直交群)

$O(n)=\{A\in GL_n{(\mathbb{R})}\mid ^tAA=I_n\}$
と定義すると、$O(n)<GL_n(\mathbb{R})$ となる。
$O(n)$ を直交群という。

例6

$\forall n\in \mathbb{Z}_{>0}$ に対して、
$\Omega_n=\{\omega\in\mathbb{C}\mid \omega^{n}=1\}$
と定義すると、$\Omega_n<\mathbb{C}$ となる。

演習

  1. $G$ を群とする。次を示せ。
    $H<G\Leftrightarrow\forall x,y\in H\ ,x^{-1}y\in H$
  2. 例5に関して、演習の1の同値条件を用いて部分群であることを証明せよ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf

群の準同型写像

今回は以下の続きで準同型写像というものについて書く。

bananake-tai.hatenablog.com

まずは演習をとく。

演習

  1. 群 $G$ の逆元は一意的であることを示せ。

証明

$\forall a\in G$ をとる。
$\exists b,b'\in G\ ;ab=e,ab'=e$ とする。
$$ b=be=b(ab')=(ab)b'=eb'=b' $$

$\Box$

定義(群の準同型写像

$G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ とする。
$\phi$ が準同型である
$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\forall a,b\in G\ ,\phi(ab)=\phi(a)\phi(b)$

さて、この性質をみたすとなにがうれしいのだろうか。とりあえず、次の命題を証明する。

命題

$G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、 $$ \phi(1_A)=1_B $$ である。

証明

$\phi(a)=\phi(1_Aa)=\phi(1_A)\phi(a)$ なので、
右から、$\phi(1_A)^{-1}$ をかけると、$1_B=\phi(1_A)$

$\Box$

すなわち、$G$ の単位元は $G'$ の単位元に写るということである。

同様に、$G$ の逆元は $G'$ の逆元に写るというのも示せる。これは演習とする。

では、$G$ から $G'$ への準同型があったらなにがうれしいのだろうか。それは、$G$ の構造を $G'$ の中へ移せる。ということである。
構造とは、$G$ の演算なのど性質である。

f:id:bananake-tai:20170424193426j:plain:w400

定義(同型)

$G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ とする。
$\phi$ が全単射かつ準同型であるとき、$G$ と $G'$ は同型であるといい、$G\cong G'$ と表す。

さらに、$G$ と $G'$ が同型であるときは、$G$ と $G'$ は同じ構造を持っている。どういうときに役立つかというと、 一見よくわからない群 $G'$ が与えられたときに、$G'$ の構造を調べるために、よく知っている群 $G$ への同型を作れれば、$G$ と $G'$ は同じ構造であるとわかる。

例1

$G$ を群として、$f:G\to G$ を $f=\rm{id}_G$ とすると、$f$ は同型である。

恒等写像全単射であり、準同型であることもすぐわかる。

例2

$n\in \mathbb{Z}_{\geq 0}$ とする。

$f:\mathbb{Z}\to n\mathbb{Z}_{\geq 0}$ を $f(k)=kn$ とすると、$f$ は同型である。

証明

例3

$f:(\mathbb{R},+)\to (\mathbb{R}_{>0},・)$ を $f(x)=e^{x} $ とすると、$f$ は同型である。

証明

$(1)$ 全単射
写像は $\log y$ で与えられる。

$(2)$ 準同型 $\forall x,x'\in \mathbb{R}$ とする。

$f (x+y)=e^{x+y}=e^{x}e^{y}=f (x) f (y)$

例4

${\rm det}:GL_n(\mathbb{R})\to \mathbb{R}^{\times}$ を ${\rm det}(A)=|A|$ とすると、 $\rm{det}$ は準同型となる。

これは、線形代数行列式の性質である。

例5

$f:\mathbb{R}^{\times}\to \mathbb{R}_{>0}$ を $f(x)=|x|$ とすると、$f$ は準同型である。

これも、絶対値の性質をつかうと、準同型である。

例6

$f:(\mathbb{R},+)\to (GL_n(\mathbb{R}),・)$ を $$ f(a)= \left( \begin{array}{c} 1 & a \\ 0 & 1 \end{array} \right) $$ とすると、$f$ は準同型となる。

証明

$\forall a,b\in \mathbb{R}$ をとる。

$ f(a+b)= \left( \begin{array}{c} 1 & a+b \\\ 0 & 1 \end{array} \right) $ $=$ $ \left( \begin{array}{c} 1 & a \\\ 0 & 1 \end{array} \right) $ $ \left( \begin{array}{c} 1 & b \\\ 0 & 1 \end{array} \right) $ $=$ $f(a)f(b)$
$\Box$

さらに、合成写像は準同型を保つ。

命題

$\phi:G_1\to G_2$ $\psi:G_1\to G_3$を準同型とする。
このとき、$\psi\circ\phi$ も準同型となる。

証明

$$ \psi(\phi(xy))=\psi(\phi(x)\phi(y))=\psi(\phi(x))\psi(\phi(y)) $$

$\Box$

演習

  1. $G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、 $$ \phi(a^{-1})=\phi(a)^{-1} $$ であることを示せ。
  2. $G,G'$ を群として、$\phi:G\to G'$ を同型とする。
    このとき、逆写像も同型であることを示せ。つまり、全単射の逆写像全単射なので、逆写像も準同型であることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.

群の定義

今回は群についてかく。

とりあえず、群の定義をする。

定義(群)

$G$ を集合とする。
$G$ に対して、$2$ 項演算 $f:G\times G\to G$ が定まっているとする。 $f(a,b)=ab$ 書く。
$(G,f)$ が群である
$ \begin{align} \overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow} \left\{ \begin{array}{l} (1)\forall a,b,c\in G\ ,(ab)c=a(bc)\\ (2)\exists e\in G\ ;\forall a\in G\ ,ae=ea=a\\ (3)\forall a\in G\ ,\exists b\in G\ ;ab=ba=e \end{array} \right. \end{align} $
$e$ を単位元といい $1$ と表し、$b$ を 逆元といい $a^{-1}$ と表す。
また、(1)を結合法則、(2)を単位元の存在、(3)を逆元の存在という。

群の例についてあげる。

例1

$\mathbb{Z}^{\times}$ は積の演算に関して群である。

積は結合法則をみたし、単位元を $1$、$a$ の逆元を $-a$ とすればよい。

同様に、$\mathbb{Q}^{\times},\mathbb{R}^{\times},\mathbb{C}^{\times}$ に関しても、積に関して群をなす。

例2

$GL_{n}(\mathbb{R})=\{A\in M_{n}\mid \rm{det}A\neq 0\}$
とすると、$GL_n(\mathbb{R})$ は積に関して群となる。

行列の積は結合法則をみたし、単位元単位行列、また、行列式が $0$ でないので逆行列があるので、逆行列が逆元となる。

例3

$G=\{a,b\}$ とする。 $$ aa=a\\ ab=b\\ ba=b\\ bb=a\\ $$ と定義すると、$G$ は群になる。

$a$ が単位元で、$a,b$ の逆元は $a,b$ である。
この演算を以下のような表で表す。

a b
a a b
b b a

この表を乗法表という。

例4

$G=\{1,a,b,c,d,e\}$ とする。

1 a b c d e
1 1 a b c d e
a a b c d e 1
b b c d e 1 a
c c d e 1 a b
d d e 1 a b c
e e 1 a b c d

と定義すると、$G$ は群になる。

例5

$G=\{1,a,b,c,d,e\}$ とする。

1 a b c d e
1 1 a b c d e
a a 1 e d c b
b b d 1 e a c
c c e d 1 b a
d d b c a e 1
e e c a b 1 d

と定義すると、$G$ は群になる。

例6

$X$ を集合とする。
${\rm End}X=\{f:X\to X\mid f:bij.\}$ とすると、${\rm End}X$ は群になる。

単位元は、恒等写像で与えられ、逆元は逆写像で与えられる。 また、合成写像結合法則をみたすので、$F$ は群になる。

定義(可換群)

$G$ を群とする。
$G$ が可換群である $\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\forall a,b\in G\ ,ab=ba$

例4は可換群となるが、例5は非可換群である。非可換群がつくれる最小の群の位数は6である。つまり、群の位数が6より小さいなら全て可換群になるということである。 これは、群論を勉強していけば証明できる。あと、群論のおもしろさとしては、位数が6の群は例4,5の形のみであるということも勉強していけば示せるようになる。

命題(簡約法則)

$G$ を群とする。
このとき、 $\forall a,b,c \in G\ ,ab=ac\Rightarrow a=c$ が成立する。

証明

$$ \begin{align} b&=1b\\ &=(a^{-1}a)b\\ &=a^{-1}(ab)\\ &=a^{-1}(ac)\\ &=(a^{-1}a)c\\ &=1c\\ &=c \end{align} $$

命題

群 $G$ の単位元は一意的である。

証明

$1,e\in G$ を単位元とする。
$1$ は単位元なので、 $$ 1e=e1=1 $$ また、$e$ も単位元なので、 $$ e1=1e=e $$ よって、$e=1$ となる。

逆元についても一意性はいえる。これは演習とする。

命題

$G$ を群とする。
$\forall a,b\in G\ ,(ab)^{-1}=b^{-1}a^{-1}$

証明

$$ (ab)(b^{-1}a^{-1})=a(bb^{-1})a^{-1}=aa^{-1}=1 $$ 同様に、$(b^{-1}a^{-1})(ab)=1$ も成立する。

演習

  1. 群 $G$ の逆元は一意的であることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
B.バウムスラグ, 訳 根本精司, 群論, マグロウヒル好学社, 昭和57.

行列の演算

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

前回は行列の定義をして、色々な特徴的な行列の例をあげた。前回の行列の定義でも問題はないのだが、厳密な行列の定義もしておく。

定義(行列)

$I,J$ を有限集合とする。
このとき、 $$ A:I\times J\to \mathbb{R} $$ という写像 $A$ を行列という。

つまり、行列というものは $1$ つの写像を与えているのである。
いちお、こういうイメージを持っておくと行列を理解しやすいかもしれない。 前回の記事で書いた、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} \end{array} \right) $$

という表記は、写像 $A$ を $(i,j)\mapsto a_{ij}$ と表せば、$A$ の像を並べているにすぎない。つまり、写像の意味での行列と、写像の意味のでの行列の像を並べたものを、同一視して単に行列として扱っているわけである。 また、前回定義した記号、$M_{m,n}(\mathbb{R})$ は $I\times J\to \mathbb{R}$ という写像全体を集めているということになる。

そう考えると前回行列の相等を定義したが、写像の相等と考えているということである。
このように、行列を写像ととらえることによって、色々みえてくるものをあると思う。以降は、行列を前回のように扱っていく。

定義(行列の和) $A=(a_{ij}),B=(b_{ij})$ とする。 このとき、
$$ A+B=(a_{ij}+b_{ij}) $$ と定義する。

つまり、各成分同士の実数の和で定義するのである。

和が定義されたら、積の定義もほしいところである。

定義(行列の定める写像

$A=(a_{ij})$ とする。
$T_A:\mathbb{R}^{n}\to \mathbb{R}^{m}$ を次のようにさだめる。 i=1,\ldots ,m にたいして、 ただし、$\boldsymbol{x}\in \mathbb{R}^{n}\ ,\boldsymbol{y}\in \mathbb{R}^{m}$ をそれぞれ、 $$ \boldsymbol{x}= \left( \begin{array}{c} x_{1}\\ x_{2}\\ \vdots\\ x_{m} \end{array} \right) \ , \boldsymbol{y}= \left( \begin{array}{c} y_{1}\\ y_{2}\\ \vdots\\ y_{m} \end{array} \right) $$ と書くことにする。
$T_A(\boldsymbol{x})=\boldsymbol{y}$ を $\forall i\in \{1,\ldots ,m\}$ に対して、 $$ y_i=\sum_{j=1}^{n}a_{ij}x_j $$ と定義する。

最初に連立方程式の話をしたが、以上のように定義すると、以下のm 個の $n$ 元1次連立方程式を表しているようにみえる。

$$ a_{11}x_{1}+a_{12}x_{2}+\cdots +a_{1n}x_{n}=y_{1}\\ a_{21}x_{1}+a_{22}x_{2}+\cdots +a_{2n}x_{n}=y_{2}\\ \cdots \\ a_{m1}x_{1}+a_{m2}x_{2}+\cdots +a_{mn}x_{n}=y_{n}\\ $$

表しているようにみえるというか、このような連立方程式を扱いたくて、以上のように写像を定義したと考えるほうが私は自然だと思う。

さて、行列の積はどのように定義すればよいのだろうか。たぶん、一番最初に思い浮かぶのは和と同じように成分どうしの積で定義することだろうが、 これは自然ではない。なぜかというと、上記の行列から定まる写像を考えて、自然に積を導入していくと、そうならないからである。

命題

$A\in M_{l,m}(\mathbb{R}),B\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ とし、$A=(a_{ij}),B=(b_{jk})$ とする。
それぞれ、対応する写像を、 $$ T_A:\mathbb{R}^{m}\to \mathbb{R}^{l}\ ,T_B:\mathbb{R}^{n}\to \mathbb{R}^{m} $$ とする。
このとき、$C\in M_{l,n}(\mathbb{R})$ を $C=(c_{ik})$ とし、$\forall (i,k)$ に対して、 $$ c_{ik}=\sum_{j=1}^{m}a_{ij}b_{jk} $$ と、$T_A\circ T_B=T_C:\mathbb{R}^{n}\to \mathbb{R}^{l}$ となる。

証明

$\boldsymbol{u}=T_B(\boldsymbol{x})\ ,\boldsymbol{v}=T_B(\boldsymbol{u})$ とおき、


\begin{eqnarray}
u_{j}=\sum_{k=1}^{n}b_{jk}x_{k}\   (1\leq j\leq m)\\
v_{i}=\sum_{j=1}^{m}a_{ij}u_{j}\   (1\leq i\leq l)
\end{eqnarray}

とおく。


\begin{eqnarray}
v_i&=&\sum_{j=1}^{n}a_{ij}x_{j}\\
&=&\sum_{j=1}^{m}a_{ij}\sum_{k=1}^{n}b_{jk}x_{k}\\
&=&\sum_{j=1}^{m}\sum_{k=1}^{n}a_{ij}b_{jk}x_{k}\\
&=&\sum_{k=1}^{n}\sum_{j=1}^{m}a_{ij}b_{jk}x_{k}\\
&=&\sum_{k=1}^{n}c_{ik}x_{k}
\end{eqnarray}

よって、$T_A\circ T_B=T_C$ となる。

$\Box$

この命題からわかるのように、積をどう定義すればいいのかは自然とみえてくるだろう。

定義(行列の積)

$A\in M_{l,m}(\mathbb{R}),B\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ の積 $C=AB\in M_{l,n}(\mathbb{R})$ を $$ c_{ik}=\sum_{k=1}^{n}a_{ij}b_{jk} $$ と定義する。

このように定義すれば、$T_A\circ T_B=T_{AB}$ となり、ごく自然であることがわかると思う。各成分どうしの積で定義すると、このようなことは起こらない。

さらに、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} \end{array} \right) \ , \boldsymbol{x}= \left( \begin{array}{c} x_{1}\\ x_{2}\\ \vdots\\ x_{m} \end{array} \right) \ , \boldsymbol{y}= \left( \begin{array}{c} y_{1}\\ y_{2}\\ \vdots\\ y_{m} \end{array} \right) $$

とおくと、最初にかいた連立方程式を単に

$$ A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y} $$

というように、書き表せる。こういうこともあって、行列が研究対象となるのである。

定義(スカラー倍)

$A=(a_{ij})$ とする。
$\lambda \in\mathbb{R}$ に対して、 $$ \lambda A=(\lambda a_{ij}) $$ と定義する。

これで行列に必要な演算を定義できた。

定理(積の結合法則

$A\in M_{k,l}(\mathbb{R}),B\in M_{l,m}(\mathbb{R}),C\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ とし、$A=(a_{ij}),B=(b_{jk}),C=(C_{kl})$ とする。 このとき、 $$ (AB)C=A(BC) $$ が成立する。

証明

$(AB)C$ の $(i,h)$ 成分は


\begin{eqnarray}
\sum_{k=1}^{m}(\sum_{j=1}^{l}a_{ij}b_{jk})c_{kh}&=&\sum_{k=1}^{m}(\sum_{j=1}^{l}a_{ij}b_{jk}c_{kh})\\
&=&\sum_{j=1}^{l}(\sum_{k=1}^{m}a_{ij}b_{jk}c_{kh})\\
&=&\sum_{j=1}^{l}a_{ij}(\sum_{k=1}^{m}b_{jk}c_{kh})\\
\end{eqnarray}

よって、$A(BC)$ の $(i,h)$ 成分と一致する。

行列の積は結合法則を満たすが、一般的には、$AB=BA$ とはならないことに注意してほしい。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

砂田利一, 行列と行列式 ,岩波書店, 2003.
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~takagi/Draft/lecnote2014.pdf https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C%E5%88%97#.E5.8E.B3.E5.AF.86.E3.81.AA.E5.AE.9A.E7.BE.A9

同値関係

以下の定義の続きを書く。 bananake-tai.hatenablog.com

定義(2項関係)

$X$ を集合とすると、$R\subset X\to X$ を $X$ 上の2項関係という。
$\forall x,y\in X$ に対して、$x$ と $y$ に関係があるというのを $(x,y)\in R$ と定義し、$a\sim b$ または $xRy$ と表す。

以降、2項関係を関係という。

集合 $X$ 上にある関係 $R$ があったとき、$R$ が次を満たせばよい性質を導ける。

定義(同値関係)

$X$ を集合として、$R$ を $X$ 上の関係とする。
$R$ が $X$ 上の同値関係である
$ \begin{align} \overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow} \left\{ \begin{array}{l} (1)\forall a\in X\ ,a\sim a \\ (2)\forall a,b\in X\ ,a\sim b \Rightarrow b\sim a \\ (3)\forall a,b,c\in X\ ,a\sim b,b\sim c\Rightarrow a\sim c \end{array} \right. \end{align} $
(1)を反射律、(2)を対称律、(3)を推移律という。

なぜ、$R$ がこの性質を満たせばよい性質になるのかの前に例をいくつかあげる。

例1

$X=\{1,2,3,4\}$ に対して、関係 $R$ を $$ R=\{(1,1),(2,2),(3,3),(4,4),(1,3),(3,1),(3,4),(4,3),(1,4),(4,1)\} $$ と定義すると、$R$ は $X$ 上の同値関係となる。

これは、調べればすぐわかる。

例2

$\mathbb{Z}$ に対して、関係 $R$ を $$ R=\{(a,b)\in \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}\mid a\equiv b \bmod 3\} $$ と定義すると、$R$ は $X$ 上の同値関係となる。

証明

$(1)$ 反射律
$\forall a\in \mathbb{Z}$ をとる。
$k=0$ とすると、$a-a=0=3・0$
よって、$a\sim a$

$(2)$ 対称律
$\forall a,b\in \mathbb{Z}$ をとる。
$a\sim b$ とすると、$\exists k\in R\ ;a-b=3k$ なので、$b-a=3(-k)$
よって、$b\sim a$ である。

$(3)$ 推移律
$\forall a,b,c\in \mathbb{Z}$ をとる。
$a\sim b,b\sim c$ とすると、$\exists k\in R\ ;a-b=3k$ かつ $\exists l\in R\ ;b-c=3l$ となる。 すると、 $$ \begin{align} a-b+(b-c)&=a-c\\ &=3(k+l) \end{align} $$ よって、$a\sim c$ である。

$\Box$

例3

$f:X\to Y$ とする。$X$ に対して、関係 $R$ を $$ R=\{(a,b)\in X\times X\mid f(a)=f(b)\} $$ と定義すると、$R$ は $X$ 上の同値関係となる。

証明

$(1)$ 反射律
$\forall a\in X$ をとる。
写像の定義より、$f(a)=f(a)$
よって、$a\sim a$

$(2)$ 対称律
$\forall a,b\in X$ をとる。 $a\sim b$ とすると、$f(a)=f(b)$
明らかに、$f(b)=f(a)$
よって、$b\sim a$ である。

$(3)$ 推移律
$\forall a,b,c\in X$ をとる。
$a\sim b,b\sim c$ とすると、$f(a)=f(b)$ かつ $f(b)=f(c)$
明らかに、$f(a)=f(c)$
よって、$a\sim c$ である。

$\Box$

例4

$\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times}$ に対して、関係 $R$ を $$ R=\{\left((a,b),(a',b')\right)\in (\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times})\times (\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times})\mid \exists t\in \mathbb{Z}^{\times}\ ;t(as'-a’s)=0\} $$ と定義すると、$R$ は $\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times}$ 上の同値関係となる。

証明

$(1)$ 反射律
$\forall (a,s)\in \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times}$ をとる。
$t=1$ とすると、$1・(as-as)=0$
よって、$(a,s)\sim(a,s)$

$(2)$ 対称律
$\forall (a,s),(a',s')\in \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times}$ をとる。 $a\sim b$ とすると、$t\in \mathbb{Z}^{\times}\ ;t(as'-a’s)=0$
すると、$-t(a’s-as')=0$
よって、$(a',s')\sim(a,s)$ である。

$(3)$ 推移律
$\forall (a_1,s_2),(a_2,s_2),(a_3,s_3)\in \mathbb{Z}\times \mathbb{Z}^{\times}$ をとる。
$(a_1,s_2)\sim(a_2,s_2)$ かつ $(a_2,s_2)\sim(a_3,s_3)$ とすると、
$t_1,t_2\in \mathbb{Z}^{\times}\ ;t_1(a_1s_2-a_2s_1)=0$ かつ $t_2(a_2s_3-a_3s_2)=0$
すると、 $$ \begin{align} t_1t_2s_3(a_1s_2-a_2s_1)+t_1t_2s_1(a_2s_3-a_3s_2)&=t_1t_2s_2(a_1s_3-a_3s_1)\\ &=0 \end{align} $$ よって、$(a_1,s_1)\sim(a_3,s_3)$ である。

$\Box$

この時、$(a,s)$ を $\frac{a}{s}$ と表す。

例5

$X=\{$収束する実数列$\}$ に対して、関係 $R$ を $$ R=\{(\{a_n\},\{b_n\})\in X\times X\mid \lim_{n\to \infty}a_n=\lim_{n\to \infty}b_n\} $$ と定義すると、$R$ は $X$ 上の同値関係となる。

これは、高校の範囲で議論すれば自明である。
いまは、$\varepsilon-N$ 論法で証明はしない。

例6

$X$ を集合とする。$A,B\in \mathcal P(X)$ に対して、 $$ R=\{(A,B)\in \mathcal P(X)\times \mathcal P(X)\mid \exists f:A\to B\ ;f:\rm{bij.}\} $$ と定義すると、$R$ は $\mathcal P(X)$ 上の同値関係となる。

証明

$(1)$ 反射律
$\forall A\in \mathcal P(X)$ をとる。
$f=id_A$ とすると、$f$ は恒等写像となる。
よって、$A\sim A$

$(2)$ 対称律
$\forall A,B\in \mathcal P(X)$ をとる。 $A\sim a$ とすると、$\exists f:A\to B\ ;f:\rm{bij.}$
$f$ は全単射なので、逆写像 $f^{-1}:B\to A$ が存在して全単射である。 よって、$B\sim A$ である。

$(3)$ 推移律
$\forall A,B,C\in \mathcal P(X)$ をとる。
$A\sim b,B\sim c$ とすると、$\exists f:A\to B\ ;f:\rm{bij.}$ かつ $\exists g:B\to C\ ;g:\rm{bij.}$
合成写像 $(g\circ f):A\to C$ は全単射となる。
よって、$A\sim C$ である。

$\Box$

このように、たくさんの同値関係の例があるのがわかったと思う。
では、良い性質とはなんなのだろうか。それは同値関係があれば次のような定義をみたす集合をつくれるということである。

定義(直和分割)

$X$ を集合として、$\mathfrak{M}\subset \mathcal P(X)$ とする。
$\mathfrak{M}$ が $X$ の直和分割である
$ \begin{align} \overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow} \left\{ \begin{array}{l} (1)\forall C\in \mathfrak{M}\ ,C\neq \varnothing\\ (2)\bigcup_{C\in \mathfrak{M}}=X \\ (3)\forall C,C'\in \mathfrak{M}\ ,C\neq C'\Rightarrow C\cap C'=\varnothing \end{array} \right. \end{align} $
(2)の条件を互いに素であるという。

イメージ的には下の図のようにいくつかのかたまりで $X$ が構成されているということである。

f:id:bananake-tai:20170420111657j:plain:w300

定義(代表元)

$X$ を集合として、$R$ を $X$ 上の同値関係とする。
$$ C(a)=\{x\in X\mid a\sim x\} $$ を $a$ の同値類といい、$a$ を $C(a)$ の代表元という。

さて、次の命題を証明する。

命題1

$X$ を集合として、$R$ を $X$ 上の同値関係とする。
このとき、次が成立する。
$(1)\ \forall a\in X\ ,a\in C(a)$
$(2)\ \forall a,b\in X\ ,a\sim b\Leftrightarrow C(a)=C(b)$
$(3)\ \forall a,b\in X\ ,C(a)\neq C'(b)\Rightarrow C(a)\cap C'(b)=\varnothing$

証明

$\underline{(1)}$
$\forall a\in X$ をとる。
反射律より、$a\sim a$ なので、$a\in C(a)$ である。

$\Box$

$\underline{(2)}$
$\forall a,b\in X$ に対して、$a\sim b$ とする。
$\forall x\in C(a)$ をとると、$a\sim x$ である。
$a\sim b$ なので、対称律より、$b\sim a$ である。
推移律より、$b\sim x$ なので、$x\in C(b)$
逆の包含関係も同様に成立する。
よって、C(a)=C'(b)

$\Box$

$\underline{(3)}$ $\forall a,b\in X$ に対して、$C(a)\neq C'(b)$ とする。
もし、$\exists x\in X\ ;x\in C(a)\cap C'(b)$ とすると、$a\sim x$ かつ $b\sim x$ なので、$a\sim b$ である。
すると、(2)より、$C(a)=C'(b)$ となるが、これは矛盾。
よって、$C(a)\cap C'(b)=\varnothing$

$\Box$

$X$ を集合として、$R$ を $X$ 上の同値関係とする。
$\mathfrak{M}=\{C(a)\mid a\in X\}$ と定義する。
このとき、$\mathfrak{M}$ は $X$ の直和分解である。

証明

命題1.1より、直和分割の定義の(1),(2)を満たす。
命題1.3より、直和分割の定義の(3)を満たす。

$\Box$

これが、なんで良い性質なのかというと、似たものを同じ集まりとして扱えるからである。
次に定義する商集合という概念が生み出される。

定義(商集合)

$X$ を集合として、$R$ を $X$ 上の同値関係とする。
$$ X/{\sim}=\{C(a)\mid a\in X\} $$ を商集合という。

つまり、商集合とは同値類全体の集合である。
このような分類をすると、たとえば、例2での商集合は以下の図のイメージである。

f:id:bananake-tai:20170420121714j:plain:w300

つまり、線で区切ってあるのをまとめて1つの元と考えているわけである。

例4での商集合は以下の図のイメージである。

f:id:bananake-tai:20170420121722j:plain:w300

つまり、分数で約分して同じ数になるものは同じと考えているわけである。もっといえば、普段もちいている有理数ということである。

演習

  1. 次の主張は正しいか。
    対称律があれば、$x\sim y$とするとき、$y\sim x$ 。ここで推移律を用いると $x\sim x$ が導かれる。だから同値関係の定義で反射律は実は余分である。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

松坂和夫, 集合・位相入門, 岩波書店, 2004.
同値関係になぜ反射律が必要か - わさっき
http://nalab.mind.meiji.ac.jp/~mk/lecture/literacy-2014/equivalence.pdf

行列の定義

前回は、行列の例として以下の記事で連立方程式を紹介した。

bananake-tai.hatenablog.com

今回から、行列の定義から始める。

定義(行列)

$$ A= \left( \begin{array}{c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} \end{array} \right) $$ のように、実数を並べたものを $m\times n$ 行列といい、また、$A=(a_{ij})$ と表すこともある。 また、各実数を行列 $A$ の成分といい、特に $a_{ij}$ を $A$ の $(i,j)$ 成分といい、$(m,n)$ を行列のサイズという。
$(i,i)$ $(i=1,2,\cdots ,\rm{min}\{m,n\})$成分のことを対角成分という。

簡単なため次の記号を導入する。

$$ M_{m,n}(\mathbb{R})=\{(a_{ij})\mid a_{ij}\in \mathbb{R}\} $$

つまり、$m\times n$ 行列全体の集合である。
$m=n$ のときには、$M_{n,n}(\mathbb{R})=M_{n}(\mathbb{R})$ と表す。

定義(列ベクトル、行ベクトル)

$1\times n$ 行列を $n$ 次元列ベクトルといい、
$m\times 1$ 行列を m 次元行ベクトルという。

つまり、

$ \left( \begin{array}{c} a_{11}\\\ a_{21}\\\ \vdots\\\ a_{m1} \end{array} \right) $ $\ ,$ $ \left( \begin{array}{c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \end{array} \right) $

という形の行列である。

定義(行列の相等)

$A,B\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ として、$A=(a_{ij}),B=(b_{ij})$ とする。
$A$ と $B$ が等しい
$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\forall (i,j)$ に対して、$a_{ij}=b_{ij}$ が成り立つ。

行列の相等の定義は対応する各成分が等しいということなので、あまりこの定義の仕方に疑問を持つ人はいないと思う。

行列どうしの演算は次回にするとして、どんな行列があるか例をあげる。

例1(零行列)

$O\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ とする。

$$ O= \left( \begin{array}{c} 0 & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & 0 & \cdots & 0 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & \cdots & 0 \end{array} \right) $$

を零行列という。
つまり、$m\times n$ 行列の成分が全て $0$ ということである。

例2(単位行列

$I_n\in M_{n}(\mathbb{R})$ とする。 $$ I_n= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & 1 & \cdots & 0 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & \cdots & 1 \end{array} \right) $$

を $n$ を $n$ 次単位行列という。
つまり、$\forall i\in \mathbb{N}$ に対して、$a_{ii}=1$ ということである。また、$E_n$ と表すこともある。

例3(転置行列)

$A\in M_{m,n}(\mathbb{R})$ とし、$A=(a_{ij})$ とする。
$$ ^tA= \left( \begin{array}{c} a_{11} & a_{21} & \cdots & a_{n1} \\ a_{12} & a_{22} & \cdots & a_{n2} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{1m} & a_{2m} & \cdots & a_{nm} \end{array} \right) $$ を転置行列という。
つまり、$(1\leq i\leq m\ ,1\leq j\leq n)$ とすると、$^tA=(a_{ji})$ と表せる。また、$a_{ij}=a_{ji}$ である。

例4(対角行列)

$A\in M_{n}(\mathbb{R})$ とする。 $$ A= \left( \begin{array}{c} a_1 & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & a_2 & \cdots & 0 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & \cdots & a_n \end{array} \right) $$

を対角行列という。
つまり、対角成分以外は $0$ ということである。
また、$A=\rm{diag}(a_1,a_2,\cdots ,a_n)$ と表すこともある。

例5(正方行列)

$A\in M_{n}(\mathbb{R})$ のとき $A$ を正方行列という。

例6(上三角行列、下三角行列)

$A\in M_{n}(\mathbb{R})$ とし、$A=(a_{ij})$ とする。

$$ A= \left( \begin{array}{c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ 0 & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & \cdots & a_{nn} \end{array} \right) $$

を上三角行列という。
つまり、$i>j$ のとき、$a_{ij}=0$ ということである。

また、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a_{11} & 0 & \cdots & 0 \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & 0 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{n1} & a_{n2} & \cdots & a_{nn} \end{array} \right) $$

を下三角行列という。
つまり、$j>i$ のとき、$a_{ij}=0$ ということである。

例7(スカラー行列)

$A$ を対角行列とする。
$A=\rm{diag}(a,a,\cdots ,a)$ のとき、スカラー行列という。

このように、さまざまな特徴をもった行列が考えられる。1つ1つ基本的なトピックから発展的なトピックをもった興味深い行列である。 それはのちのちやっていくこととして、色々おもしろそうな行列を考えてほしい。

次回は、単に $A=(a_{ij})$ と書いたら、特に断りがない限り、$A$ は $m\times n$ 行列とする。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

砂田利一, 行列と行列式 ,岩波書店, 2003.
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~takagi/Draft/lecnote2014.pdf

行列の始まり

最初は簡単な導入のため2次の行列で解説する。

中学生の頃に連立方程式を解いたと思う。たとえば、以下のような連立方程式を解いてみる。

$$ \begin{align} \left\{ \begin{array}\ctos x+y=3&\cdots(1)\\ 2x+5y=9&\cdots(2) \end{array} \right. \end{align} $$

まずは、$(2)$ から $(1)$ の 2倍を引くと、

$$ \begin{align} \left\{ \begin{array}\ctos x+y=3&\cdots(1)\\ 3y=3&\cdots(2) \end{array} \right. \end{align} $$

次に、$(2)/3$ をすると、

$$ \begin{align} \left\{ \begin{array}\ctos x+y=3&\cdots(1)\\ y=1&\cdots(2) \end{array} \right. \end{align} $$

最後に、$(1)-(2)$ をすると、

$$ \begin{align} \left\{ \begin{array}\ctos x=2&\cdots(1)\\ y=1&\cdots(2) \end{array} \right. \end{align} $$

よって解が出る。これは、中学生でやった連立方程式だが、このように解いてみると、連立方程式を解くにはなにが本質的なのだろうか。 よくよくみてみると、係数だけ追っかけていけばよいのではないだろうか。係数だけをみて先ほどの計算をおこなってみる。

$$ \left( \begin{array}{rr} 1 & 1 & 3 \\ 2 & 5 & 9\\ \end{array} \right) $$

上の段を $(1)$ で下の段を $(2)$ とする。

まずは、$(2)$ から $(1)$ の 2倍を引くと、

$$ \left( \begin{array}{rr} 1 & 1 & 3 \\ 0 & 3 & 3\\ \end{array} \right) $$

次に、$(2)/3$ をすると、

$$ \left( \begin{array}{rr} 1 & 1 & 3 \\ 0 & 1 & 1\\ \end{array} \right) $$

最後に、$(1)-(2)$ をすると、

$$ \left( \begin{array}{rr} 1 & 0 & 2 \\ 0 & 1 & 1\\ \end{array} \right) $$

連立方程式の解は $x=2,y=1$ だった。一番右の行をみてみると、縦に $2,1$ と並んでいて、これが解である。 だた、$x,y$ をなくして計算したが、$x,y$ があるかどうかはあまり本質的ではないことがわかった。 つまり、連立方程式を解くためには、係数を並べたものをうまく変形していけばよいということがわかる。このような変形を次のようにかく。

$ \left( \begin{array}{rr} 1 & 1 & 3 \\\ 2 & 5 & 9 \end{array} \right) $ $\to$ $ \left( \begin{array}{rr} 1 & 1 & 3 \\\ 0 & 3 & 3 \end{array} \right) $ $\to$ $ \left( \begin{array}{rr} 1 & 1 & 3 \\\ 0 & 1 & 1 \end{array} \right) $ $\to$ $ \left( \begin{array}{rr} 1 & 0 & 2 \\\ 0 & 1 & 1 \end{array} \right) $

非常に簡潔に書けていて、数字だけなのでコンピューターにも扱いやすそうである。 このようにして行列というものが考えられ始めたのである。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~takagi/Draft/lecnote2014.pdf