bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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剰余群

前回、剰余類というのを考えた。

bananake-tai.hatenablog.com

今回は、剰余類がいつ群になるのかを考える。

命題

$N\lhd G$ とする。
$\forall g\in G, gN=Ng$ が成立する。

証明

$\forall x\in gN$ をとる。
$\exists n\in N; x=gn$
$N\lhd G$ なので、$gng^{-1}\in N$ である。
よって、$\exists n'\in N; gng^{-1}=n'$
よって、$x=gn=n'g\in Ng$ なので、$gN\subset Ng$
$Ng\subeet gN$ も同様なので、$gN=Ng$

$\Box$

$G$ を群として、$N$ を $G$ の部分群とし剰余類 $G/N。
剰余類にがいつ群となるのだろうか、まず群を考えるには2項演算を入れなければならない。
どのような、演算をいれるかだが、一番自然に考えれば、

$$ f:G/N\times G/N\to G/N\\ f(gN,hN)=(gh)N $$

と定めるのが良いだろう。もし、この写像がwell-defiendになるかどうかは後で考え、 もしなった場合に $G/N$ が上の演算で群となることを示す。

証明

$(1)$ 結合律
$g,h,k\in G$

$$ \begin{align} \left( (gN)(hN) \right)(kN)&=(ghN)(kN) \\ &=((gh)k)N \\ &=\left( g(hk) \right)N \\ &=(gN)(hkN) \\ &=(gN)\left( (hN)(kN) \right) \end{align} $$

$(2)$ 単位元
$g\in G$ $$ \begin{align} gN・N=gN・eN=geN=gN \end{align} $$

$(3)$ 逆元
$g\in G$ $$ \begin{align} gN・g^{-1}N=gg^{-1}N=H \end{align} $$

$\Box$

よって、群になることが分かった。
演算がwell-defiendになるかどうか確かめるためには、
$\forall g,h\in G$ に対し、$gNhN=gnhn'\ (n,n'\in N)$ による $N$ 剰余類と、$gh$ による $H$ の剰余類が一致すればよい。
もし、$G$ が可換群なら、$gnhn'=ghnn'\in ghN$ となり、well-defiendである。
$G$ が可換群という条件は結構きつい条件であるが、$G$ の可換性がなくとも、$nh=hn$ くらいの可換性があれば、well-defiendである。
この条件は、どこかでみたことがないだろうか、最初にやった命題で、$N$ が正規部分群なら、$Ng=gN$ である。
すなわち、$N$ が正規部分群なら、上の演算はwell-defiendであり、剰余類は群になる。
なので、剰余類を群にするために、正規部分群という概念があるといっても良いだろう。
上の演算により群となった剰余類を剰余群という。

命題

$\pi:G\to G/N$ を $\pi(g)=gN$ とすると $\pi$ は群の全射準同型である。

証明

全射は明らかである。
準同型であること、 $$ \begin{align} \pi(xy)&=xyN \\ &=(xN)(yN) \\ &=\pi(x)\pi(y) \end{align} $$

$\Box$

命題

指数が2の部分群は正規部分群である。

証明

$G$ を群とし、$H$ をその部分群で $|G:H|=2$ とする。
$\forall g\in G$ をとる。
$g\in G$ をとる。
$g\in H$ のとき、$gHg^{-1}=H$ なので、$H\lhd G$
$g\not\in H$ のとき。 $G=H\cup gH=H\cup Hg$ となる。
$H\cap gH=H\cap Hg=\varnothing$ なので、$gH=Hg$ である。
よって、$H\lhd G$ である。

$\Box$

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.

剰余類

る今回は、群論で非常に重要な概念となる剰余類についてかく。

定義

$H$ を 群 $G$ の部分群とする。 $\forall x,y\in G$ に対し、
$$ x\sim y\Leftrightarrow x^{-1}y\in H $$ と定義すると、$\sim$ は $G$ 上の同値関係となる。 このとき、$x\in G$ の同値類$C(x)$ を $xH$ と書く。
この同値関係による商 $G/\sim$ を $G/H$ と書く。
$\forall x,y\in G$ に対し、
$$ x\sim y\Leftrightarrow xy^{-1}\in H $$ と定義すると、$\sim$ は $G$ 上の同値関係となる。 このとき、$x\in G$ の同値類$C(x)$ を $Hx$ と書く。
この同値関係による商 $G/\sim$ を $G\backslash H$ と書く。

上の関係が同値関係となるのは演習とする。

命題

$H$ を 群 $G$ の部分群とする。
このとき、 $$ xH=\{xh\in G\mid h\in H\} $$ が成立する。

証明

$$ \begin{align} xH&=\{y\in G\mid x\sim y\} \\ &=\{y\in G\mid x^{-1}y\in H\} \\ &=\{y\in G\mid \exists h\in H;x^{-1}y=h \} \\ &=\{y\in G\mid \exists h\in H;y=xh\}\\ &=\{xh\in G\mid h\in H\} \end{align} $$

$\Box$

例1

$G=\mathbb{Z}_{6}$ の部分群 $<2>$ による剰余類を求める。

$<2>=\{0,2,4\}=H$ とする。
$1+H=\{1,3,5\}$
よって、$\mathbb{Z}_{6}=H\cup (1+H)$
$G/H=\{H,1+H\}$

例2

$D_2=\{e,t,r,tr\}$ の部分群 $<t>,<r>$ による剰余類を求める。
$H= <t>=\{e,t\}$ のとき、$rH=\{r,tr\}$ である。よって、
$D_{2}=\{H,rH\}$

$H= <r>=\{e,r\}$ のとき、 $tH=\{t,tr\}$ である。よって、
$D_{2}=\{H,tH\}$

命題

$H$ を群 $G$ の部分群とする。
次の $(1),(2)$ が成り立つ。
$(1)$ $|G/H|=|H\backslash G|$ $(2)$ $\forall g\in G, |H|=|gH|=|Hg|

証明

$(1)$
$f:|G/H|\to |H\backslash G|$ を $f(gH)=Hg^{-1}$ とすると、$f$ はwell-defined $\forall a,b\in G$ をとる。

$$ \begin{align} aH=bH&\Leftrightarrow a^{-1}b\in H \\ &\Leftrightarrow a^{-1}b\in H\\ &\Leftrightarrow z^{-1}(b^{-1})^{-1}\in H\\ &\Leftrightarrow Ha^{-1}=Hb^{-1} \end{align} $$ よって、$f$ はwell-defined

同様に、$g:|H\backslash G|\to |G/H|$ を $f(Hg)=g^{-1}H$ とすると、$g$ はwell-defined
$f,g$ は互いの逆写像であるので、全単射である。よって、$|G/H|=|H\backslash G|$

$(2)$
$\forall g\in G$ をとる。
$\phi:H\to gH$ を $\phi(h)=gh$ とする。
$\forall h_1,h_2\in H$に対し、$gh_1=gh_2$ なら $h_1=h_2$ である。 よって、$\phi$ は単射
全射は明らか。よって、$\phi$ は全単射である。 $|H|=|Hg|$ も同様。

$\Box$

定義

$|G/H|$ を $G$ における $H$ の指数といい、$|G:H|$ で表す。

剰余類を考えることは、次の強力な定理が成り立つため重要である。

定理(ラグランジュの定理)

$H$ を群 $G$ の部分群とする。
このとき、 $$ |G|=|G:H||H| $$ が成り立つ。

証明

$G/H$ の完全代表系 $\{x_{i}\}_{i\in I}\subset G$ をとる。
$G=\coprod_{i\in I}x_{i}H$ である。 $\forall i\in I$ に対し、$|x_{i}H|=|H|$ なので、
$|G|=|G:H||H|$ が成り立つ。

$H$ を有限群 $G$ の部分群とする。
$|H|$ は $|G|$ の約数である。

$\Box$

証明

ラグランジュの定理から明らかである。

$\Box$

なぜ、ラグランジュの定理が強力かというと、ガロア理論などで、ある群の部分群を決定する必要がある場合がある。
部分群を決定するさいに、ラグランジュの定理は非常に役立つ。 いくつか、位数に関する命題をあげる。

命題

$G$ を位数 $p$ の群とする。
$G\in x\neq 1$ なら、$G=<x>$ である。

証明

$H=<x>$ とすると、$H<G$ である。
ラグランジュの定理より、$p=|G|=|G:H||H|$ であり、$x\neq 1$ なので、$|H|\neq 1$
よって、$|H|=p=|G|$。$H\subset G$ なので、$G=H$。

$\Box$

命題

$x\in G,ord(x)=d$ とする。
$|H|=<x>$ とすると、$|H|=d$ となる。

証明

$H=\{x^{n}\mid n\in \mathbb{Z}\}$ である。
$\exists q,r\in \mathbb{Z};n=qd+r$ $(0\leq r< d)$
$x^{n}=x^{r}$ なので、$H=\{1,x^{2},\dots , x^{d-1}\}$
もし、$|H|\neq d$ とすると、$\exists 0\leq i<j< d,x^{i}=x^{j}$
すると、$x^{j-i}=1$ で、$1<j-i<d$ となり、$d$ の最小性に矛盾。
よって、$|H|=d$

$\Box$

同様に、この命題の逆も言える。

問題

$S_3$ の部分群を決定せよ。

$|S_3|=6$ なので、ラグランジュの定理より、部分群 $H$ の位数は、$1,2,3,6$ のどれかである。

$(1)$ 位数 $1$ の部分群
$H=\{e\}$ のみである。

$(2)$ 位数 $2$ の部分群
$|H|=2$ で、$2$ は素数なので、$|H|$ は巡回群である。
よって、命題より、$H$ は $x\in S_3,ord(x)=2$ なる $x$ で生成される。
位数2の $S_3$ の元は、$(1,2),(1,3),(2,3)$ である。
よって、位数2の部分群は、$H=\{e,(12)\},\{e,(1,3)\},\{e,(2,3)\}$ の3つである。

$(3)$ 位数 $3$ の部分群
$|H|=3$ で、$3$ は素数なので、$|H|$ は巡回群である。
よって、命題より、$H$ は $x\in S_3,ord(x)=3$ なる $x$ で生成される。
位数3の $S_3$ の元は、$(1,2,3),(1,3,2)$ である。
$(1,2,3)^{2}=(1,3,2)$ である。 よって、位数3の部分群は、$H=\{e,(1,2,3),(1,3,2)\}$ の1つである。

$(4)$ 位数 $6$ の部分群
$H=S_3$ のみである。

演習

  1. $V_4$ の部分群を決定せよ。
  2. $D_2,D_3$ の部分群を決定せよ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.

群の生成と2面体群

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

まずは、演習の解説からする。

演習

  1. 命題2の $(4)\Rightarrow (1)$ を示せ。
  2. 命題5を直交群の同値命題 $(3)$ を用いて証明せよ。また、幾何学的な意味も考察せよ。
  3. $G$ を可換群、$G'$ を群とする。
    $f:G\to G'$ を準同型なら、${\rm Im}(f)$ は可換群となることを示せ。
  4. $G$ を群とする。
    $H<G,K\lhd G$ のとき、$H\cap K \lhd H$ となることを示せ。

証明1

$\forall A\in O(n)\ ,\forall \boldsymbol{v}\in \mathbb{R}^n$ をとる。

$$ \begin{align} |A\boldsymbol{v}|^{2}&=(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{v})\\ &={}^t(A\boldsymbol{v})(A\boldsymbol{v})\\ &=({}^t\boldsymbol{v}{}^tA)(A\boldsymbol{v})\\ &={}^t\boldsymbol{v}({}^tAA)\boldsymbol{v}\\ &={}^t\boldsymbol{v}I_n \boldsymbol{v}\\ &={}^t\boldsymbol{v} \boldsymbol{v}\\ &=\boldsymbol{v} \cdot \boldsymbol{v}\\ &=|\boldsymbol{v}|^{2}\\ \end{align} $$

よって、$|A\boldsymbol{v}|=\boldsymbol{v}$

$\Box$

証明2

$\forall A\in SO(2)$ をとると、$a,b,c,d\in \mathbb{R}$ が存在して、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a & b \\ c & d \\ \end{array} \right) $$

と表せる。

$ \boldsymbol{v}\_{1}= \left( \begin{array}{c} a \\ c \\ \end{array} \right) , $ $ \boldsymbol{v}_{2}= \left( \begin{array}{c} b \\ d \\ \end{array} \right) $

とおくと、直交群の同値命題$(3)$ より、次の3条件が成立する。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)&\boldsymbol{v}_{1}\cdot \boldsymbol{v}_{1}=1\Leftrightarrow |\boldsymbol{v}_{1}|=1\\ (2)&\boldsymbol{v}_{1}\perp \boldsymbol{v}_{2}=1\Leftrightarrow \boldsymbol{v}_{1}\cdot \boldsymbol{v}_{2}=0\\ (3)&\boldsymbol{v}_{2}\cdot \boldsymbol{v}_{2}=1\Leftrightarrow |\boldsymbol{v}_{2}|=1 \end{array} \right. \end{align} $

$(1)$ より、$\ a^{2}+c^{2}=1$

これを図で表すと、以下のようになる。

f:id:bananake-tai:20170518153538j:plain:w300

$(2)$ より、$\boldsymbol{v}_{1}$ と $\boldsymbol{v}_{2}$ は直交していることがわかるので、$\boldsymbol{v}_{2}$ は以下の図の2つである。

f:id:bananake-tai:20170518155602j:plain:w250

これは、$(3)$ を満たす。

あとは、$|A|=1$ ということを使えば、最終的に、

$$ A= \left( \begin{array}{c} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{array} \right) $$

となる。

$\Box$

証明3

$\forall a',b'\in {\rm Im}(f)$ をとる。
$\exists a,b\in G\ ;a'=f(a),b'=f(b)$

$$ \begin{align} a'b'&=f(a)f(b)\\ &=f(ab)\\ &=f(ba)\\ &=f(b)f(a)\\ &=b'a' \end{align} $$

$\Box$

証明4

$\Box$

では、$SO(2)$ の続きからやっていく。

定義

$G$ を群とする。
$|G|<\infty$ のとき、$G$ を有限群という。

$n\in \mathbb{Z}_{\geq 0}$ とする。
ことのき、

$$ \mu_n=\{R_{\theta}\mid \theta =\frac{2\pi k}{n}\ ,(k=0,\dots n-1)\} $$

と定義すると、$\mu_n<SO(2)$ となる。

証明

$\forall a,b\in \mu_n$ をとる。
すると、$\exists k,l\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;a=R_{\frac{2\pi k}{n}},b=R_{\frac{2\pi l}{n}}$

$$ \begin{align} a^{-1}b&=R_{\frac{2\pi k}{n}}R_{\frac{2\pi l}{n}}\\ &=R_{-\frac{2\pi k}{n}}R_{\frac{2\pi l}{n}}\\ &=R_{\frac{2\pi(n-k)}{n}}R_{\frac{2\pi l}{n}}\ (0\leq n-k\leq n)\\ &=R_{\frac{2\pi(n-k+l)}{n}} \end{align} $$

また、$\exists q,r\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;n-k+l=nq+r\ (0\leq r\leq n)$
よって、

$$ \begin{align} a^{-1}b&=R_{\frac{2\pi(nq+r)}{n}}\\ &=R_{2\pi q+\frac{2\pi r}{n}}\\ &=R_{\frac{2\pi r}{n}}\\ \end{align} $$

よって、$a^{-1}b\in \mu_n$ なので、$\mu_n<SO(2)$

$\Box$

よって、$\mu_n$ は位数 $n$ の有限群の例となっているのである。

これから、少し抽象的な話をする。

定義

$G$ を群とし、$S\subset G$ とする。
$x\in S$ が $S$ の元による語である $\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\exists n\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;\exists x_1,\cdots ,x_n\in S\ ;x=x_1^{\pm 1}\cdots x_n^{\pm 1}$
但し、重複もゆるし、$n=0$ のときは、$S$ の語は $G$ の単位元 $1$ を表すものとする。
$<S>$ を $S$ の元による語全体の集合とする。

少し、難しいかもしれないが、言い方を変えれば $S$ の元による語 というのは、$S$ の元を有限個並べて積をとったものと等しい。
なぜ、このようなものを定義するのかというと、群の部分集合をさだめ、$<S>$ というものを考えれば自然に群を構成できるからである。 次の命題が成立する。

命題

$G$ を群とし、$S\subset G$ とする。 このとき、$<S><G$ が成立する。

証明

$\forall a,b\in <S>$ をとる。
すると、$\exists n,m\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;\exists x_1,\cdots ,x_n,y_1,\dots y_m\in S\ ;x=x_1^{\pm 1}\cdots x_n^{\pm 1},y=y_1^{\pm 1}\cdots y_n^{\pm 1}$

$$ \begin{align} x^{-1}y&=(x_1^{\pm 1}\cdots x_n^{\pm 1})^{-1}(y_1^{\pm 1}\cdots y_n^{\pm 1})\\ &=x_m^{\mp 1}\cdots x_1^{\mp 1}y_1^{\pm 1}\cdots y_n^{\pm 1} \end{align} $$

よって、$x^{-1}y\in <S>$ なので、$<S><G$

$\Box$

$<S>$ を $S$ によって、生成された部分群という。

定義

$G$ を群とする。
$G$ が巡回群である$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\exists g\in G\ ;G=<g>$

$Z=<1>$ である。

$a= R_{\frac{2\pi}{n}}$ とすると、$\mu_n=<a>$ である。

$ T= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\\ 0 & -1 \end{array} \right) $ $ , T'= \left( \begin{array}{c} -1 & 0 \\\ 0 & 1 \\ \end{array} \right) $

とすると、$T,T'$ はそれぞれ、$x$ 軸と $y$ 軸による折り返しで、$T,T'\in O(2)$ である。
このとき。$V_4=<T,T'>$ をクラインの4元数群という。
$<T,T'>$ で生成される部分群は実際どのようなものになるのだろうか。実際に求めていく。

さて、今、次の2つの関係式が成立する。 $$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& TT'=T’T\\ (2)& T^{2}=T'^{2}=I \end{array} \right. \end{align} $$

今、$x=TT'TT’T$ という $S=\{T,T'\}$ の元による語を考えてみる。
$(1)$ の関係式を使って次のような変形を行う。

$$ \begin{align} x&=TT'TT’T\\ &=TT'TTT'\\ &=TTT'TT'\\ &=TTTT’T'\\ \end{align} $$

と変形できる。
次に、$(2)$ の関係式を使って次のような変形を行う。

$$ \begin{align} x&=TTTT’T'\\ &=ITT’T'\\ &=TT’T'\\ &=TI\\ &=T \end{align} $$

となる。
よって以上の議論より、任意の $S$ の元による語が与えられたとき、$(2)$ を使い、$T$ を左に、$T'$ を右に移動させ分けることができる。 次に $(1)$ を使うと $x$ は次のいづれかになる。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& T &(T:odd,T:even)\\ (2)& T' &(T:even,T:odd)\\ (3)& TT' &(T:odd,T:odd)\\ (4)& I &(T:even,T:even) \end{array} \right. \end{align} $

$T,T'$ の個数が偶数か奇数というのを表している。
これで、$S$ によって生成される部分群の元が全て決定された。つまり、

$$ V_{4}=\{I,T,T',TT'\} $$

の4つの元である。
実はこの群は、巡回群でない位数が最小の群である。

$O(2)$ の別の元で生成される部分群を調べる。

例 

$t=R_{\frac{2\pi}{n}}\ ,$ $ r= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\\ 0 & -1 \end{array} \right) $

とする。このとき、$D_n=<t,r>$ を正2面体群という。
クライン4元数群よりもやや複雑であるが、これも同様に、$t$ と $r$ で生成される部分群を記述していく。

今、次の2つの関係式が成立する。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& t^{n}=I,r^{2}=I\\ (2)& t^{k}r=rt^{n-k}& (k\in \mathbb{Z}) \end{array} \right. \end{align} $

これは演習とする。

$D_{2}$ のときを考察してみると、次の関係式となる。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& t^{2}=I,r^{2}=I\\ (2)& t^{k}r=rt^{2-k}& (k\in \mathbb{Z}) \end{array} \right. \end{align} $

今、$t,r$ の元による語として、$x=t^{6}r^{5}t^{-2}tr^{-3}t^{4}r$ を考える。

$(1)$ の $r^{2}=I$ を使い $r$ を1次へ変形する。

$$ \begin{align} x&=t^{6}r^{5}t^{-2}tr^{-3}t^{4}r\\ &=t^{6}rt^{-2}trt^{4}r\\ \end{align} $$

次に、$(2)$ を使い $t$ を前へ、$r$ を後ろへ移動させる。

$$ \begin{align} x&=t^{6}rt^{-2}trt^{4}r\\ &=t^{6}rt^{-2}tt^{-2}rr\\ &=t^{6}t^{-2}rtt^{-2}rr\\ &=t^{6}t^{-2}trt^{-2}rr\\ &=t^{6}t^{-2}tt^{-2}rrr\\ \end{align} $$

$t$ と $r$ を計算し、 $r$ の次数を1次以下にすると、

$$ x=t^{3}r^{3}=t^{3}r $$

となる。
最後に、$(1)$ の $t^{2}=I$ を使うと、$x=tr$ となる。よって、任意の $S$ の元による語に対して、同様の議論を使えば、$x$ は

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& e,t&(r:even)\\ (2)& r, tr &(r:odd) \end{array} \right. \end{align} $

と表せる。
よって、$D_{2}=\{e,t,r,rt\}$ となる。

以上の議論を使えば、一般の $D_{n}$ に対しても適応でき、$x$ は次のいずれかの元になる。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& e,t,t^{2},\dots ,t^{n-1} &(r:even)\\ (2)& r, tr,,t^{2}r,\dots ,t^{n-1}r &(r:odd) \end{array} \right. \end{align} $

よって、$D_{n}$ のすべての元が確定でき、

$$ D_{n}= \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} e,t,t^{2},\dots ,t^{n-1}\\ r, tr,,t^{2}r,\dots ,t^{n-1}r \end{array} \right\} \end{align} $$

となる。つまり、$D_{n}$ は 位数 $2n$ の群となる。

このように、一般に群があり、ある生成元が与えられて、その元で生成される部分群をの元を全て決定するのは、なかなか大変である。
このように、きれいに求まるのはめずらしいのである。めちゃくちゃな生成元も考えようと思えば山ほどかんがえられるが、普通はこのようには決定できない。

さて、最後に $D_{n}$ という群がどのような意味を持つのかを幾何学てきに考える。
今、$D_{3}$ で考えるとする。それと、次のような番号のついた正6角形を考える。

それを、分かりやすいように単位円上の $(1,0)$ に1つの頂点があるように配置する。

f:id:bananake-tai:20170518151824j:plain:w250

各頂点を $t^{2}r\in D_{3}$ という元によって移動させると、$r$ は$x$ 軸に関しての折り返しなので、次のようになる。

f:id:bananake-tai:20170518153620j:plain:w250

$n=3$ なので、$t^{2}$ によって、$\frac{2\pi}{3}$ 回転を2回行うことになる。
すると、次のようになる。

f:id:bananake-tai:20170518151753j:plain:w250

つまり、幾何学的な記述では次のように言い換えることができる。
$P_{n}$ を単位円周上に頂点をもつ正 $n$ 角形として、

$$ D_{n}=\{A\in O(2)\mid A(P_{n})=P_{n}\} $$

つまり、回転しても折り返しても図形が一致するような、$A$ 全体である。つまり、$D_{n}$ というのはどうやら図形の対称性を表しているような群であるということが分かった。

これは、結構おもしろい結果である。このように、群というものの構造を調べていった結果幾何学的な意味も持つということが分かったのである。
このように、非可換な群というのは、対称性を記述することができるのである。
ここまできて、ようやく群というものが少しは、分かってもらえたと思う。

演習

  1. $G$ を群とし、$S\subset G$ とする。このとき、$<S>$ は $S$ を含む最小の部分群であるということを示せ。
  2. $D_{n}$ に対し、
    $ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& t^{n}=I,r^{2}=I\\ (2)& t^{k}r=rt^{n-k}& (k\in \mathbb{Z}) \end{array} \right. \end{align} $ が成立することを示せ。
  3. $V_4$ と $D_2$ が同型になることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
部分群 http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf

直交群

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

とりあえず、演習の証明からする。

演習

  1. $G,G'$ を群とし、$f:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、 $$ N'\lhd G'\Rightarrow f^{-1}(N')\lhd G $$ を示せ。
  2. $1$ を用いて命題3を証明せよ。
  3. $G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、${\rm Im}(\phi)<G'$ である。

証明1

$\forall g\in G\ ,\forall h\in f^{-1}(N')$ をとる。
このとき、$f(g)\in G',f(h)\in N'$ であり、$N'\lhd G'$ なので、$f(g)f(h)f(g)^{-1}\in N'$ である。

よって、$f(ghg^{-})=f(g)f(h)f(g)^{-1}$ なので、$ghg^{-1}\in f^{-1}(N')$ である。
よって、$f^{-1}(N')\lhd G$

$\Box$

証明2

$\{1'\}<G'$ であるのはいいだろう。
$\forall g\in G'$ をとる。

$$ g1'g^{-1}=gg^{-1}=1'\in \{1'\} $$

よって、${1'}\lhd G'$ なので、演習1より、${\rm ker}(f)=f^{-1}(\{1'\})\lhd G$ である。

$\Box$

つまり、$kef(f)$ が $G$ の正規部分群になるのは演習1の特別な場合だったというわけである。

証明3

$\forall x,y\in {\rm Im}(\phi)$ をとる。
すると、$\exists x_1,y_1\in G\ ;x=f(x_1),y=f(y_1)$

$$ \begin{align} x^{-1}y&=f(x_1)^{-1}f(y_1)\\ &=f(x_1^{-1})f(y_1)\\ &=f(x_1^{-1}y_1)\\ \end{align} $$

$G$ は群なので、$x_1^{-1}y_1\in G$ である、よって、${\rm Im}(\phi)<G'$ である。

$\Box$

さて、今回はもう少し、群の実際の例についてみてく。

命題1

$O(n)=\{A\in GL_n{(\mathbb{R})}\mid \forall \boldsymbol{v}\in \mathbb{R}^n\ ,|A\boldsymbol{v}|=\boldsymbol{v}\}$
と定義すると、$O(n)<GL_n(\mathbb{R})$ となる。

証明

$\forall A,B\in O(n)$ をとる。
定義より、$\forall v\in \mathbb{R}^n\ ,|A\boldsymbol{v}|=|\boldsymbol{v}|,|B\boldsymbol{v}|=|\boldsymbol{v}|$ $$ \begin{align} |A^{-1}B\boldsymbol{v}|&=|A^{-1}(B\boldsymbol{v})|\\ &=|A^{-1}\boldsymbol{v}|\\ &=|A(A^{-1}\boldsymbol{v})|\\ &=|(AA^{-1})(\boldsymbol{v})|\\ &=|I_n\boldsymbol{v}|\\ &=\boldsymbol{v}\\ \end{align} $$

$\Box$

つまり、この群は、ベクトルの長さを変えないような変換群である。 以下のようなイメージである。

f:id:bananake-tai:20170514174742j:plain:w400

さて、これが群になるということが分かったが、長さを変えないという群ってどんなものか良く分からない。 なので、この群をもっと別の形で記述してみる。
前に、群の例で、$O(n)$ と書いて直交群というのを例であげたが、実は先の $O(n)$ というのと、前の直交群は同じなのである。 それを証明していく。いちお、もう一度直交群の定義を書いておく。

例5(直交群)

$O(n)=\{A\in GL_n{(\mathbb{R})}\mid ^tAA=I_n\}$
と定義すると、$O(n)<GL_n(\mathbb{R})$ となる。
$O(n)$ を直交群という。

命題2

$\forall A\in GL_n(\mathbb{R})$ に対し、次の $(1)\sim (4)$ は同値である。
$(1)\ A\in O(n)$
$(2)\ \forall \boldsymbol{v},\boldsymbol{w}\in \mathbb{R}\ ,(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})=\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w}$
$(3)\ A=(\boldsymbol{v}_1|\boldsymbol{v}_2|\cdots |\boldsymbol{v}_n)$ を列ベクトル分解として、$\boldsymbol{v}_{i}\cdot \boldsymbol{v}_{j}=\delta_{ij}$
$(4)\ {}^tAA=I_n$

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$ $$ \begin{align} |A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|=|A(\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w})|=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}| \end{align} $$

なので、

$$ \begin{align} |A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}|&\Leftrightarrow |A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}|^{2}\\ \end{align} $$

よって、

$|A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}|^{2}$
$\Leftrightarrow |A\boldsymbol{v}|^2+2(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})+|A\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}|^{2}+2(\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w})+|\boldsymbol{w}|^{2}$
$\Leftrightarrow |\boldsymbol{v}|^{2}+2(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})+|\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}|^{2}+2(\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w})+|\boldsymbol{w}|^{2}$
$\Leftrightarrow 2(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})=2(\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w})$
$\Leftrightarrow (A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})=\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w}$

$\underline{(2)\Rightarrow (3)}$
$1\leq \forall i\leq n\ ,\boldsymbol{v}_i=A\boldsymbol{e}_i$ なので、 $$ \boldsymbol{v}_i\cdot \boldsymbol{v}_j=A\boldsymbol{e}_i\cdot A\boldsymbol{e}_j=\boldsymbol{e}_i\cdot \boldsymbol{e}_j=\delta_{ij} $$

$\underline{(3)\Rightarrow (4)}$
${}^tAA$ の $(i,j)$ 成分は $$ {}^t\boldsymbol{v}_i\boldsymbol{v}_j=\boldsymbol{v}_i\cdot \boldsymbol{v}_j=\delta_{ij} $$ よって、${}^tAA=I_n$

$\underline{(4)\Rightarrow (1)}$ ここは、演習とする。

$\Box$

今、証明した命題から、長さを変えないような変換の特徴づけをすることができた。
実際にどのような元が $O(n)$ に入っているのだろうか。 特にわかりやすいように $n=2$ のとき、すなわち $O(2)$ のときについて考えていく。

$$ T= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\ 0 & -1 \\ \end{array} \right) $$ とすると、$T\in O(2)$ である。実際、

$ T \left( \begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right) $ $ = \left( \begin{array}{c} x \\ -y \end{array} \right) $

となるので、明らかに長さを変えない。 これは、$x$ 軸に対しての折り返し変換となる。イメージ的には下の図のような変換である。

f:id:bananake-tai:20170514174759j:plain:w400

直交群の行列式は $\pm1$ なので、(これは演習とする。)次のような部分群を定義する。

定義

$SO(n)=\{A\in O(n)\mid det(A)=1\}$
を特殊直交群という。

これは、あきらかに $SO(n)<O(n)$ であるが、$SO(n)\lhd O(n)$ ともなっている。

命題3

$SO(n)\lhd O(n)$

証明

${\rm det}:O(n)\to \mathbb{R}^{\times}$ を考えると、行列式の性質より、${\rm det}$ は準同型である。
また、${\rm ker}({\rm det})=1$ なので、${\rm ker}({\rm det})=SO(n)$ となり、前に示した定理より、${\rm ker}\lhd G$ がいえるので、$SO(n)\lhd O(n)$ である。

$\Box$

$SO(2)$ の元にはどんなものがあるのだろうか。

定義

$\forall \theta \in \mathbb{R}$ に対して、 $$ R_{\theta}= \left( \begin{array}{c} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{array} \right) $$
と定義する。

これは、ある点を $\theta$ 回転させる回転行列と呼ばれるものだったが、実際に次の命題が成り立つ。

命題4

$\forall \theta \in \mathbb{R}$ に対して、$R_{\theta}\in SO(2)$ が成り立つ。

証明

明らかに、${}^tR_{\theta}=R_{\theta}^{-1}$ である。
よって、$R_{\theta}\in O(2)$
また、${\rm det}(R_{\theta})=1$ なので、$R_{\theta}\in SO(2)$ である。

$\Box$

$R_{\theta}\in SO(2)$ は分かった。しかし、先ほどの例で考えた $T$ は ${\rm det}(T)=-1$ なので、$T\not\in SO(n)$ である。
おもしろいことに、次の命題が成立する。

命題5

$\forall A\in SO(2)\, \exists \theta \in \mathbb{R}\ ;A=R_{\theta}$

証明

$\forall A\in SO(2)$ をとると、$a,b,c,d\in \mathbb{R}$ が存在して、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a & b \\ c & d \\ \end{array} \right) $$

と表せる。

直交群の同値命題 $(4)$ と ${\rm det}A=ad-bc=1$ より、${}^tA=A^{-1}$ なので、

$ \left( \begin{array}{c} a & c \\\ b & d \end{array} \right) $ $ = \left( \begin{array}{c} d & -b \\\ -c & a \\ \end{array} \right) $

よって、$d=a,b=-c$ である。すなわち、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a & -c \\ c & a \\ \end{array} \right) $$

と表せる。${\rm det}A=a^{2}+c^{2}=1$ なので、$\exists \theta\in \mathbb{R}\ ;a=\cos \theta, c=\sin \theta$ と表せる。
よって、$A=R_{\theta}$ となる。

$\Box$

これは、代数的な意味が強い証明であるが、幾何学的にはどのようなことをしているのかを、同値命題 $(3)$ を用いて考察してほしい。これは演習とする。

さらに、$SO(2)$ に対して次の命題が成立する。

命題6

$SO(2)$ は可換群となる。

証明

$\forall A,B\in SO(2)$ をとる。
すると、$\exists \theta ,\varphi\in \mathbb{R}\ ;A=R_{\theta},B=R_{\varphi}$
$\sin$ と $\cos$ の加法定理より、
$$ AB=R_{\theta}R_{\varphi}=R_{\theta +\varphi}=R_{\varphi +\theta}=R_{\varphi}R_{\theta}=BA $$

$\Box$

これは、$\theta$ 回転させて、$\phi$ 回転するのと、$\phi$ 回転させて、$\theta$ 回転するのが同じであるということを言っているのである。
図的には明らかである。

f:id:bananake-tai:20170514174800j:plain:w400

さて、代数学では具体化と抽象化が行き来できるようになることが重要だと前に話したが、これを抽象化すると、次の命題が成り立つ。

命題6

$G$ を群、$G'$ を可換群とする。
$f:G\to G'$ を準同型なら、${\rm Im}(f)$ は可換群となる。

これも、演習とする。証明は命題6と同じである。

演習

  1. 命題2の $(4)\Rightarrow (1)$ を示せ。
  2. 命題5を直交群の同値命題 $(3)$ を用いて証明せよ。また、幾何学的な意味も考察せよ。
  3. $G$ を可換群、$G'$ を群とする。
    $f:G\to G'$ を準同型なら、${\rm Im}(f)$ は可換群となることを示せ。
  4. $G$ を群とする。
    $H<G,K\lhd G$ のとき、$H\cap K \lhd H$ となることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
部分群 http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf

対称群2

以下の記事の続きを書く。 bananake-tai.hatenablog.com

まずは、演習の解説からする。

演習

  1.  \sigma$\in S_n$ が $\forall k\in X_n$ に対して  \sigma$(k)\leq k$ のとき、 \sigma$=1_{X_n}$ であることを示せ。
  2. $\forall$ \sigma$\in S_n$ と  \tau$=(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)$ に対して、
     \sigma\tau\sigma$^{-1}=($ \sigma$(i_1)$  \sigma$(i_2)$ $\cdots$  \sigma$(i_r))$ が成立する。
$\Box$

証明1

 \sigma$\neq1_{X_n}$ と仮定する。
すると、$\exists k\in X_n\ ;$ \sigma$(k)\neq k$
$k_0={\rm min}\{k\in X_n\mid$ \sigma$(k)\neq k\}$ とおく。
すると、  \sigma$(1)=1,\dots ,$ \sigma$(k_0-1)=k_0-1,$ \sigma $(k_0)<k_0$
となる。 \sigma$(k_0)=i$ とすると、仮定より、$i<k_0$
よって、 \sigma$(i)=i$ とならなければならないが、これは、$i=k_0$ となり、矛盾。

$\Box$

証明2

$\forall$ \sigma$\in S_n$ をとる。
$1\leq \forall k\leq r-1$ に対して、

 \sigma\tau\sigma$^{-1}($ \sigma$(i_k)$$)=$ \sigma\tau$(i_k)=$ \sigma$(i_{k+1})$

$k=r$ のとき、

 \sigma\tau\sigma$^{-1}($ \sigma$(i_r)$$)=$ \sigma\tau$(i_r)=$ \sigma$(i_1)$
$\Box$

前回同様、対称群の性質について調べていく。

定義(巡回域)

$S_n$ を対称群とする。
 \sigma$=(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)$ なる巡回置換に対して、 $$ \{i_1,i_2,\dots ,i_r\} $$ を \sigmaの巡回域という。

前回の命題から、 \sigma \sigma$^{-1}$ の巡回域は一致する。

定義(互いに素)

$\forall$ \sigma ,\tau$\in S_n$ に対して、 $A,A'$ をそれぞれ、 \sigma ,\tauの巡回域とする。
 \sigma ,\tauが互いに素である $\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $A\cap A'=\varnothing$

一般的に、対称群は可換ではないが、ある条件のときに2つの元は可換になる。

命題1

互いに素な2つの巡回置換は可換である。

証明

$\forall$ \sigma ,\tau$\in S_n$ を互いに素な巡回置換とする。
それぞれの巡回域を $A,A'$ とする。

$\forall i\in X_n$ に対して、次の3通りが考えられる。
$(1)\ i\in A$
$(2)\ i\in A'$
$(3)\ i\notin A \land i\notin A'$

$\underline{(1)}$
今、$A\cap A'=\varnothing$ なので、$i\notin A'$ である。
よって、 \tau$(i)=i$ なので、 \sigma\tau$(i)=$ \sigma$(i)$
また、 \sigma$(i)\notin A'$ でもあるので、 \tau\sigma$(i)=$ \sigma$(i)$

$(2)$ も同様に証明できる。

$\underline{(3)}$
仮定より、 \sigma$(i)=i$ かつ  \tau$(i)=i$
よって、 \sigma\tau$(i)=$ \sigma$(i)=i$
また、 \tau\sigma$(i)=$ \tau$(i)=i$

$\Box$

定理1

任意の置換$($ \sigma$\neq 1)$はいくつかの巡回置換の積として表せる。

証明

$\forall$ \sigma$\in S_n$ をとり、帰納法で証明する。
$n=2$ のときは明らか。

$k<n$ に対して主張が成り立つと仮定する。
$n=k$ のときを考える。
 \sigma$(n)=n$ のときは、 \sigma\in S_{n-1} と考えられるので成立する。
 \sigma$(n)\neq n$ のときは、 \tau$=($ \sigma$(n)\ n)$ とおく。
すると、 \tau\sigma$(n)=n$ なので、 \tau\sigma \in S_{n-1} となる。
帰納法の仮定より、  \tau\sigma$=$ \tau_1\cdots\tau_k と、いくつかの巡回置換の積として表せる。
よって、 \sigma$=$ \tau^{-1}\tau_1\cdots\tau_k となり、主張が成り立つ。

$\Box$

定理1は命題2の同値関係を用いた方法もある。
この命題は自明なように思えるが、かなり重要で、結局なにを言っているのかというと、対称群を調べたかったら巡回置換を調べなさいと言っているのである。

系1

任意の置換$($ \sigma$\neq 1)$は、いくつかの互換の積で表せる。

証明

任意の置換はいくつかの巡回置換の積で表され、任意の巡回置換はいくつかの互換の積で表せるので、系は成り立つ。

$\Box$

ある群の生成元が分かるとその群はある程度分かったものとされる。その意味である群の生成元を求めるのは重要である。

命題

$n\geq 2$ のとき、$S_n$ は互換 $$ (1\ 2),(1\ 3),\dots ,(1\ n) $$ によって生成される。

証明

系1より、任意の置換はいくつかの互換の積で表せるので、互換の生成元を求めればよい。
$\forall i,j\in X_n$ に対して、 $$ (i\ j)=(1\ i)(1\ j)(1\ i) $$ となる。よって、任意の互換は $(1\ k)$ という形をしている。

$\Box$

演習

  1. $n\geq 2$ のとき、$S_n$ は互換 $$ (1\ 2),(2\ 3),\dots ,(n\ n-1) $$ によって生成されることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

http://www.econ.hit-u.ac.jp/~yamada/algebra_pdf/2_1_2_symmetric_group.pdf
http://mathematics-pdf.com/pdf/symmetric_grp.pdf
http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf http://sci.kj.yamagata-u.ac.jp/~waki/jpn/GroupText.pdf

正規部分群

以下の記事の続きを書く。 bananake-tai.hatenablog.com

まずは、演習の証明からする。

演習

  1. $G$ を群とする。次を示せ。
    $H<G\Leftrightarrow\forall x,y\in H\ ,x^{-1}y\in H$
  2. 例5に関して、演習の1の同値条件を用いて部分群であることを証明せよ。
  3. $G$ を群とし、$H_1,\dots ,H_n<G$ とする。
    このとき、 $$ \bigcap_{i=1}^{n}H_i<G $$ である。

証明1

$(\Rightarrow)$
$\forall x,y\in H$ をとる。
部分群の同値命題(3)より、$x^{-1}\in H$
部分群の同値命題(2)より、$x^{-1}y\in H$

$(\Leftarrow)$
$\underline{(1)}$
$x\in H$ をとる。
仮定より、$xx^{-1}\in H$
よって、$1\in H$

$\underline{(3)}$
$x\in H$ をとる。
$(1)$ より、$1\in$ なので、仮定から $1x^{-1}=x^{-1}\in H$

$\underline{(2)}$
$\forall x,y\in H$ をとる。
$(3)$ より、$x^{-1}\in H$
仮定より、$(x^{-1})^{-1}y=xy\in H$

$\Box$

証明(例5)

$\forall A,B\in O(n)$ をとる。
${}^tA=A^{-1}$ なので、$A {}^tA=I_n$ でもある。


\begin{eqnarray}
{}^t(A^{-1}B)(A^{-1}B)&=&({}^tB{}^t(A^{-1}))(A^{-1}B)\\
&=&({}^tB ({}^tA)^{-1})(A^{-1}B)\\
&=&{}^tB (A{}^tA)^{-1}B \\
&=&{}^tB(I_n)^{-1}B\\
&=&{}^tBI_nB\\
&=&I_n
\end{eqnarray}

よって、$A^{-1}B\in O_(n)$

$\Box$

証明3

$$ \begin{align} x,y\in \bigcap_{i=1}^{n}H_i&\Leftrightarrow \forall i\in\mathbb{N}\ x,y\in H_i \end{align} $$

$H_i<G$ なので、$x^{-1}y\in H_i$ となる。$i$ は任意だったので、$x^{-1}y\in\bigcap_{i=1}^{n}H_i$

$\Box$

とりあえず、正規部分群の定義をする。

定義(正規部分群

$G$ を群とし、$H<G$ とする。
$H$ が $G$ の正規部分群である
$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\forall g\in G\ ,\forall h\in H\ ,ghg^{-1}\in H$
また、$H\lhd G$ と表す。

群があったら、その部分集合がまた群になることがということは、まあ想像はできると思う。今度は、その部分群に条件を加えて正規部分群を考える。 なぜ、このような定義を考えるのかは後々やるが、簡単に説明すると、実は部分群を1つ決めると、それに対する同値関係を入れることができる。 同値関係があるということは、商集合を考えることができた。そこまでは、同値関係のところで扱ったことだが、今回はただの集合ではなく、 群に同値関係が入っている。群があり、その中に部分群という構造があった、次は商集合にも群構造が入るのではないかと考える。 しかし、一般の部分群で割って商集合を作っても群にはならない。そこで、必要になるのが正規部分群という条件なのである。
先ほども言ったが、これに関しては後々やる。

正規部分群は一体どのくらい多くあるのだろうか。

例1

$G$ を可換群とする。
$H<G$ とすると、$H\lhd G$ である。

証明

$\forall g\in G\ ,\forall h\in H$ をとる。
$ghg^{-1}=gg^{-1}h=1_Gh=h\in H$

$\Box$

前回部分群の引き戻しを考えた際に、引き戻しも部分群であったが、実は、正規部分群の引き戻しも正規部分群になる。これは演習とする。
正規部分群の定義が成立するのは一見難しそうにみえたが、実は可換群で考えると任意の部分群は正規部分群になってしまうのである。 ということは、あまり可換群で考えても面白くなさそうである。(無意味という意味ではない)非可換の正規部分群を探す。

例2

前回の記事から、$SL_n({\mathbb{R}})<GL_n({\mathbb{R}})$ であったが、実は $SL_n({\mathbb{R}})\lhd GL_n({\mathbb{R}})$ である。

証明

$\forall g\in GL_n({\mathbb{R}}),\forall h\in SL_n({\mathbb{R}})$ とする。

$$ \begin{align} {\rm det}(ghg^{-1})&={\rm det}(g){\rm det}(h){\rm det}(g^{-1})\\ &={\rm det}(g){\rm det}(g)^{-1}\\ &=1 \end{align} $$

よって、$ghg^{-1}\in SL_n({\mathbb{R}})$ なので、$SL_n({\mathbb{R}})\lhd GL_n({\mathbb{R}})$ である。

$\Box$

一般線形群は非可換の例であったが、なぜこのように特殊線形群正規部分群になるのかよくわからない。 なぜ、このような現象が起こるのかを説明する前に2つほど定義をする。

定義

$G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。 $$ {\rm Im}(\phi)=\{\phi(x)\mid x\in G\} $$ を $\phi$ の像という。 $$ {\rm Ker}(\phi)=\{x\in G\mid \phi(x)=1'\} $$ を $\phi$ の核という。

像の概念は一般の集合のところで出てきているので良いと思う。$\phi$ の核は以下の図のようにイメージしてもらえればよい。

f:id:bananake-tai:20170503143218j:plain:w400

次の命題は多々つかうので証明しておく。

命題1

$G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、次の $(1),(2)$ は同値である。
$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)\phi:{\rm inj.}\\ (2){\rm Ker}(\phi)=\{1\} \end{array} \right. \end{align} $

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$ $\forall x\in {\rm Ker}(\phi)$ をとる。
$1\in {\rm Ker}(\phi)$ なので、$\phi(x)=\phi(1)$
$\phi$ は単射なので、$x=1$ である。
よって、${\rm Ker}(\phi)=\{1\}$

$\underline{(2)\Rightarrow (1)}$
$\forall x,y\in G$ をとる。

$$ \begin{align} \phi(x)=\phi(y)&\Rightarrow \phi(x)\phi(y)^{-1}=1'\\ &\Rightarrow \phi(x)\phi(y^{-1})=1'\\ &\Rightarrow \phi(xy^{-1})=1'\\ &\Rightarrow xy^{-1}=1\\ &\Rightarrow x=y\\ \end{align} $$

よって、$\phi$ は単射である。

$\Box$

命題2

$G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、${\rm Ker}(\phi)<G$ である。

証明

$\forall x,y\in{\rm Ker}(\phi)$ をとる。

$$ \begin{align} \phi(xy^{-1})&=\phi(x)\phi(y^{-1})\\ &=\phi(x)\phi(y)^{-1}\\ &=1'・(1')^{-1}\\ &=1'・1'\\ &=1' \end{align} $$

$\Box$

実は、${\rm Im}(\phi)<G'$ となるが、これは演習とする。

さて、なぜ特殊線形群一般線形群正規部分群になるかというと、実は次の命題の特別な場合であったからである。

命題3

$G,G'$ を群とし、$f:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、${\rm Ker}(\phi)\lhd G$ が成立する。

証明

$\forall g\in G,\forall h\in {\rm Ker}(\phi)$ をとる。


\begin{eqnarray}
\phi(ghg^{-1})&=&\phi(g)\phi(h)\phi(g^{-1})\\
&=&\phi(g)1'\phi(g)^{-1}\\
&=&\phi(g)\phi(g)^{-1}\\
&=&1'
\end{eqnarray}

よって、$ghg^{-1}\in {\rm Ker}(\phi)$ なので、${\rm Ker}(\phi)\lhd G$ である。

$\Box$

演習

  1. $G,G'$ を群とし、$f:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、 $$ N'\lhd G'\Rightarrow f^{-1}(N')\lhd G $$ を示せ。
  2. $1$ を用いて命題3を証明せよ。
  3. $G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、${\rm Im}(\phi)<G'$ である。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
部分群 http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf

対称群

群に関しての記事を書いているが、特に重要な対称群とうトピックについて個別に書いていくことにする。
なぜ、対称群が重要なのかというと、5次以上の方程式の場合解の公式がないという定理ついて聞いたことがある人もいるかもしれないが、 それと関わってくる。

定義(対称群)

$X$ を集合とする。
${\rm End}X$ を $X$ 上の対称群といい、${\rm End}X$ の元を置換という。
特に、$X_n=\{1,\dots,n\}$ のとき ${\rm End}X_n$ を $n$ 次対称群といい、${\rm End}X_n$ を $S_n$ と表す。
$n$ が明らかな場合は単に対称群という。

全単射全体が群になるのは、群の例のところで確認したが、この群は可換群とはならない。

次に記法の定義をする。

記法

$S_n$ を対称群とする。
$\forall$ \sigma$\in S_n\forall a_i\in X_n$ に対して、 \sigma$(a_i)=b_i$ とするとき、 \sigma を

 \sigma $ = \left( \begin{array}{c} a_1 & a_2 & \cdots & a_n \\\ b_1 & b_2 & \cdots & b_n \end{array} \right) $

と表す。

なぜ、対称群という名前なのか疑問に思う人がいるとおもうが、少しだけ対称ということについて話す。

お話

$X=\{a,b,c\}$ として、以下の図をイメージしてほしい。

f:id:bananake-tai:20170429220233j:plain:w200

$a,b,c$ がこのような正三角形の頂点にある場合、次のような置換を考えてみる。

 \sigma $ = \left( \begin{array}{c} a & b & c \\\ a & c & b \end{array} \right) $

つまり、図で表すと、以下のようになる。

f:id:bananake-tai:20170429220246j:plain:w400

このような、この移動で対称性が表らわれたのに気付いていただけただろうか。
実は、$a$ から $bc$ へ垂直2等分線をおろし、その直線に対して対称に移動させたのである。

f:id:bananake-tai:20170429220258j:plain:w200

このように、対称と呼ばれる所以が少しは分かっていただけたと思う。

定義(巡回置換)

$S_n$ を対称群とする。
$i_1,\dots ,i_r$ に対して、

 \sigma$(i_1)=i_2\ ,$ \sigma$(i_2)=i_3,\dots,$ \sigma$(i_r)=i_1$

とし、他の元は固定する。このとき、 \sigmaを長さ $r$ の巡回置換といい、

 \sigma$=(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)$

と表す。

定義(互換)

長さが2の巡回置換を互換という。

巡回置換や互換についての性質をとり扱っていく。

命題

$S_n$ を対称群とする。
 \sigma$=(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)$ とする。
このとき、 \sigma$^{-1}=(i_r\ i_{r-1}\ \cdots\ i_1)$ である。

証明

 \tau$=(i_r\ i_{r-1}\ \cdots\ i_1)$ とおく。
$2\leq k\leq r$ にたいして、

 \sigma\tau$(i_k)=$ \sigma(i_{k-1})$=i_k$

$k=r$ のとき

 \sigma\tau$(i_r)=$ \sigma(i_1)$=i_1$
$\Box$

補題

$S_n$ を対称群とする。
このとき $$ (i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)=(i_1\ i_r)(i_1\ i_2\ \cdots\ i_{r-1}) $$ が成立する。

証明

 \sigma$=(i_1\ i_r)\ ,$ \tau$=(i_r,i_{r-1},\dots ,i_1)$ とおく。
$1\leq k\leq r-2$ にたいして、

 \sigma\tau$(i_k)=$ \sigma(i_{k+1})\sigma$=i_{k+1}$

$k=r-1$ のとき

 \sigma\tau$(i_{r-1})=$ \sigma(i_1)\sigma$=i_r$

$k=r$ のとき

 \sigma\tau$(i_{r})=$ \sigma(i_r)\sigma$=i_1$
$\Box$

定理

任意の巡回置換はいくつかの互換の積で表される。

証明

補題を繰り返し用いると、


\begin{eqnarray}
(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)&=&(i_1\ i_r)(i_1\ i_2\ \cdots\ i_{r-1})\\
&=&(i_1\ i_r)(i_1\ i_{r-1})(i_1\ i_2\ \cdots\ i_{r-2})\\
&\vdots&\\
&=&(i_1\ i_r)(i_1\ i_{r-1})(i_1\ i_{r-2})\cdots(i_1\ i_2)
\end{eqnarray}
$\Box$

ただし、注意しなくてはいけないのは、巡回置換の互換の表し方は一意ではない。

$$ \begin{align} (1\ 2\ 3)&=(1\ 3)(1\ 2)\\ &=(1\ 2)(2\ 3) \end{align} $$

演習

  1.  \sigma$\in S_n$ が $\forall k\in X_n$ に対して  \sigma$(k)\leq k$ のとき、 \sigma$=1$ であることを示せ。
  2. $\forall$ \sigma$\in S_n$ と  \tau$=(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)$ に対して、
     \sigma\tau\sigma$^{-1}=($ \sigma$(i_1)$  \sigma$(i_2)$ $\cdots$  \sigma$(i_r))$ が成立する。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

http://www.econ.hit-u.ac.jp/~yamada/algebra_pdf/2_1_2_symmetric_group.pdf
http://mathematics-pdf.com/pdf/symmetric_grp.pdf
http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf