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bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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全射と単射

以下の記事の続きを書く。 bananake-tai.hatenablog.com

まずは、演習の解答からする。

演習

  1. 一般的には、$f(A\cap B)=f(A)\cap f(B)$ は成立しない。成立していない状況を図で表せ。
  2. $f:X\to Y$ とし、$B\subset Y$ とする。このとき、
    $f\left(f^{-1}(B)\right)\subset B$ を示せ。

説明1

以下の図のようなイメージができていれば良いと思う。また、具体的にイコールにならない写像を構成してもよい。

f:id:bananake-tai:20170330130917j:plain:w500

つまり、$A-B$ の元と $B-A$ の元で行き先が同じ元があるということである。

証明2

$$ \begin{align} y\in f\left(f^{-1}(B)\right)&\Leftrightarrow \exists x\in f^{-1}(B)\ ;y=f(x)\\ &\Leftrightarrow f(x)\in B\\ &\Rightarrow y\in B \end{align} $$ よって、$f\left(f^{-1}(B)\right)\subset B$

$\Box$

これも、一般的にはイコールが成立しない。図で表すと以下のようなことが起こっている。

つまり、$X$ の元から飛んできていない $B$ の元があるということである。

上の例や前の練習問題でもみたように、行き先が被ると都合が悪いときがある。そのようなものを除くために次の定義をする。

定義(単射

$f:X\to Y$ とする。
$f$ が単射である
$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\forall x,x'\in X\ (x\neq x'\Rightarrow f(x)\neq f(x'))$
$\Leftrightarrow \forall x,x'\in X\ (f(x)=f(x')\Rightarrow x=x')$

つまり、単射という性質は、行き先が被らないということである。

どのようなときに単射がつくれるかを集合の要素の数に着目して調べる。

例1

まずは、集合の要素が同じ場合を考える。
$X=\{1,2,3\},Y=\{a,b,c\}$ とする。
以下の図のように写像を定めれば単射は作れる。

f:id:bananake-tai:20170330131036j:plain:w400

例2

今度は、定義域の集合の要素の方が少ない場合を考える。
$X=\{1,2\},Y=\{a,b,c\}$ とする。
以下の図のように写像を定めれば単射は作れる。

f:id:bananake-tai:20170330131056j:plain:w400

例3

最後に、定義域の集合の要素の方が多い場合を考える。
$X=\{1,2,3,4\},Y=\{a,b,c\}$ とする。
どのような対応を考えても単射はつくれない。

f:id:bananake-tai:20170330131047j:plain:w400

この考察から、単射がつくれるのは、定義域の要素のほうが値域より少ない場合につくれることが分かった。

前回の記事の演習で説明したとおり、一般的には $f^{-1}(f(A))=A$ は成立しないのであった。イコールの成り立たなさは、行き先が同じ元が存在することにあった。 単射ならイコールが成立すると考えられる。よって、次の命題が成立する。

命題

$f:X\to Y$ とし、$A\subset X$ とする。このとき、次の $(1),(2)$ は同値である。
$(1)\ f$ は単射である。
$(2)\ f^{-1}(f(A))=A$

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$
すでに、$「f^{-1}(f(A))\supset A 」$ は示したので、$「f^{-1}(f(A))\subset A 」$ を示す。
$$ \begin{align} x\in f^{-1}(f(A))&\Leftrightarrow f(x)\in f(A)\\ &\Rightarrow \exists x'\in A\ ;f(x)=f(x') \end{align} $$ $f$ は単射なので、$x=x'$ である。よって、$x\in A$ なので、$f^{-1}(f(A))\subset A$ が成立する。
すなわち、$f^{-1}(f(A))=A$ である。

$\underline{(1)\Leftarrow (2)}$
$\forall x,x'\in X$ に対し、$f(x)=f(x')$ とする。
$A=\{x\} ,\{x'\}$ とすると、$A\subset X$ なので、仮定より、
$f^{-1}(f(\{x\}))=\{x\}$ かつ $f^{-1}(f(\{x'\}))=\{x'\}$ である。
また、$f(x)=f(x')$ なので、$\{x\} =\{x'\}$ である。よって、$x=x'$ なので $f$ は単射である。

$\Box$

次に、全射という性質について定義する。

定義(全射

$f:X\to Y$ とする。
$f$ が全射である
$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $f(X)=Y$
$\Leftrightarrow \forall y\in Y\ ,\exists x\in X\ ;y=f(x)$

これはどういう性質かというと、すべての $Y$ の元に $X$ の元が飛んできているということである。
なぜこのような性質を考えるかというと、たとえば、演習で $f\left(f^{-1}(B)\right)\subset B$ を証明したと思うが、これも一般的にはイコールは成り立たない。 イコールの成り立たなさは何だったかというと、$X$ の元から飛んできていない $B$ の元があるということであった。つまり、全射ならイコールが成り立ちそうである。これは演習とする。

単射と同様どのようなときに全射がつくれるかを集合の要素の数に着目して調べる。

例4

まずは、集合の要素が同じ場合を考える。
$X=\{1,2,3\},Y=\{a,b,c\}$ とする。
以下の図のように写像を定めれ全射は作れる。

f:id:bananake-tai:20170330131056j:plain:w400

例5

今度は、定義域の集合の要素の方が多い場合を考える。
$X=\{1,2,3,4\},Y=\{a,b,c\}$ とする。
以下の図のように写像を定めれば全射は作れる。

f:id:bananake-tai:20170330131047j:plain:w400

例6

最後に、定義域の集合の要素の方が少ない場合を考える。
$X=\{1,2,3\},Y=\{a,b,c,d\}$ とする。
どのような対応を考えて全射はつくれない。

f:id:bananake-tai:20170330131056j:plain:w400

この考察から、全射がつくれるのは、定義域の要素のほうが値域より多い場合につくれることが分かった。

これで、全射単射の性質はなんとなくわかっていただけたと思う。自分で、色々な写像の例を作ってほしい。

定義(全単射

$f:X\to Y$ とする。
$f$ が単射かつ全射であるとき、$f$ を全単射であるという。

次は、合成写像に関しての単射全射を調べる。

命題

$f:X\to Y,g:Y\to Z$ とする。このとき、$f,g$ がともに全射ならば、$g\circ f$ も全射である。

証明

$\forall z\in Z$ を1つ固定する。
$g$ は全射なので、$\exists y\in Y\ ;z=g(y)$
また、$f$ も全射なので、$\exists x\in X\ ;y=f(x)$
よって、$z=g(y)=g\left(f(x)\right)=(g\circ f)(x)$
したがって、$g\circ f$ は全射である。

証明は以下の図のようなことを行っている。

f:id:bananake-tai:20170330131306j:plain:w500

つまり、図の $6\in Z$ には $3\in X$ が対応するということである。
これは、単射についても成立するが、演習とする。

演習

  1. $f:X\to Y$ とし、$B\subset Y$ とする。このとき、次の $(1),(2)$ は同値である。
    $(1)\ f$ は全射である。
    $(2)\ B\subset Y\Rightarrow f\left(f^{-1}(B)\right)=B$
  2. $f:X\to Y,g:Y\to Z$ とする。このとき、$f,g$ がともに単射ならば、$g\circ f$ も単射であることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

鎌田正良, 集合と位相, 近代科学社, 2015.
斎藤正彦, 数学の基礎, 東京大学出版会, 2014.
松坂和夫, 集合・位相入門, 岩波書店, 2004.
内田伏一, 集合と位相, 裳華房, 2013.
雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.