bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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正規部分群

以下の記事の続きを書く。 bananake-tai.hatenablog.com

まずは、演習の証明からする。

演習

  1. $G$ を群とする。次を示せ。
    $H<G\Leftrightarrow\forall x,y\in H\ ,x^{-1}y\in H$
  2. 例5に関して、演習の1の同値条件を用いて部分群であることを証明せよ。
  3. $G$ を群とし、$H_1,\dots ,H_n<G$ とする。
    このとき、 $$ \bigcap_{i=1}^{n}H_i<G $$ である。

証明1

$(\Rightarrow)$
$\forall x,y\in H$ をとる。
部分群の同値命題(3)より、$x^{-1}\in H$
部分群の同値命題(2)より、$x^{-1}y\in H$

$(\Leftarrow)$
$\underline{(1)}$
$x\in H$ をとる。
仮定より、$xx^{-1}\in H$
よって、$1\in H$

$\underline{(3)}$
$x\in H$ をとる。
$(1)$ より、$1\in$ なので、仮定から $1x^{-1}=x^{-1}\in H$

$\underline{(2)}$
$\forall x,y\in H$ をとる。
$(3)$ より、$x^{-1}\in H$
仮定より、$(x^{-1})^{-1}y=xy\in H$

$\Box$

証明(例5)

$\forall A,B\in O(n)$ をとる。
${}^tA=A^{-1}$ なので、$A {}^tA=I_n$ でもある。


\begin{eqnarray}
{}^t(A^{-1}B)(A^{-1}B)&=&({}^tB{}^t(A^{-1}))(A^{-1}B)\\
&=&({}^tB ({}^tA)^{-1})(A^{-1}B)\\
&=&{}^tB (A{}^tA)^{-1}B \\
&=&{}^tB(I_n)^{-1}B\\
&=&{}^tBI_nB\\
&=&I_n
\end{eqnarray}

よって、$A^{-1}B\in O_(n)$

$\Box$

証明3

$$ \begin{align} x,y\in \bigcap_{i=1}^{n}H_i&\Leftrightarrow \forall i\in\mathbb{N}\ x,y\in H_i \end{align} $$

$H_i<G$ なので、$x^{-1}y\in H_i$ となる。$i$ は任意だったので、$x^{-1}y\in\bigcap_{i=1}^{n}H_i$

$\Box$

とりあえず、正規部分群の定義をする。

定義(正規部分群

$G$ を群とし、$H<G$ とする。
$H$ が $G$ の正規部分群である
$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\forall g\in G\ ,\forall h\in H\ ,ghg^{-1}\in H$
また、$H\lhd G$ と表す。

群があったら、その部分集合がまた群になることがということは、まあ想像はできると思う。今度は、その部分群に条件を加えて正規部分群を考える。 なぜ、このような定義を考えるのかは後々やるが、簡単に説明すると、実は部分群を1つ決めると、それに対する同値関係を入れることができる。 同値関係があるということは、商集合を考えることができた。そこまでは、同値関係のところで扱ったことだが、今回はただの集合ではなく、 群に同値関係が入っている。群があり、その中に部分群という構造があった、次は商集合にも群構造が入るのではないかと考える。 しかし、一般の部分群で割って商集合を作っても群にはならない。そこで、必要になるのが正規部分群という条件なのである。
先ほども言ったが、これに関しては後々やる。

正規部分群は一体どのくらい多くあるのだろうか。

例1

$G$ を可換群とする。
$H<G$ とすると、$H\lhd G$ である。

証明

$\forall g\in G\ ,\forall h\in H$ をとる。
$ghg^{-1}=gg^{-1}h=1_Gh=h\in H$

$\Box$

前回部分群の引き戻しを考えた際に、引き戻しも部分群であったが、実は、正規部分群の引き戻しも正規部分群になる。これは演習とする。
正規部分群の定義が成立するのは一見難しそうにみえたが、実は可換群で考えると任意の部分群は正規部分群になってしまうのである。 ということは、あまり可換群で考えても面白くなさそうである。(無意味という意味ではない)非可換の正規部分群を探す。

例2

前回の記事から、$SL_n({\mathbb{R}})<GL_n({\mathbb{R}})$ であったが、実は $SL_n({\mathbb{R}})\lhd GL_n({\mathbb{R}})$ である。

証明

$\forall g\in GL_n({\mathbb{R}}),\forall h\in SL_n({\mathbb{R}})$ とする。

$$ \begin{align} {\rm det}(ghg^{-1})&={\rm det}(g){\rm det}(h){\rm det}(g^{-1})\\ &={\rm det}(g){\rm det}(g)^{-1}\\ &=1 \end{align} $$

よって、$ghg^{-1}\in SL_n({\mathbb{R}})$ なので、$SL_n({\mathbb{R}})\lhd GL_n({\mathbb{R}})$ である。

$\Box$

一般線形群は非可換の例であったが、なぜこのように特殊線形群正規部分群になるのかよくわからない。 なぜ、このような現象が起こるのかを説明する前に2つほど定義をする。

定義

$G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。 $$ {\rm Im}(\phi)=\{\phi(x)\mid x\in G\} $$ を $\phi$ の像という。 $$ {\rm Ker}(\phi)=\{x\in G\mid \phi(x)=1'\} $$ を $\phi$ の核という。

像の概念は一般の集合のところで出てきているので良いと思う。$\phi$ の核は以下の図のようにイメージしてもらえればよい。

f:id:bananake-tai:20170503143218j:plain:w400

次の命題は多々つかうので証明しておく。

命題1

$G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、次の $(1),(2)$ は同値である。
$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)\phi:{\rm inj.}\\ (2){\rm Ker}(\phi)=\{1\} \end{array} \right. \end{align} $

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$ $\forall x\in {\rm Ker}(\phi)$ をとる。
$1\in {\rm Ker}(\phi)$ なので、$\phi(x)=\phi(1)$
$\phi$ は単射なので、$x=1$ である。
よって、${\rm Ker}(\phi)=\{1\}$

$\underline{(2)\Rightarrow (1)}$
$\forall x,y\in G$ をとる。

$$ \begin{align} \phi(x)=\phi(y)&\Rightarrow \phi(x)\phi(y)^{-1}=1'\\ &\Rightarrow \phi(x)\phi(y^{-1})=1'\\ &\Rightarrow \phi(xy^{-1})=1'\\ &\Rightarrow xy^{-1}=1\\ &\Rightarrow x=y\\ \end{align} $$

よって、$\phi$ は単射である。

$\Box$

命題2

$G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、${\rm Ker}(\phi)<G$ である。

証明

$\forall x,y\in{\rm Ker}(\phi)$ をとる。

$$ \begin{align} \phi(xy^{-1})&=\phi(x)\phi(y^{-1})\\ &=\phi(x)\phi(y)^{-1}\\ &=1'・(1')^{-1}\\ &=1'・1'\\ &=1' \end{align} $$

$\Box$

実は、${\rm Im}(\phi)<G'$ となるが、これは演習とする。

さて、なぜ特殊線形群一般線形群正規部分群になるかというと、実は次の命題の特別な場合であったからである。

命題3

$G,G'$ を群とし、$f:G\to G'$ を準同型とする。
このとき、${\rm Ker}(\phi)\lhd G$ が成立する。

証明

$\forall g\in G,\forall h\in {\rm Ker}(\phi)$ をとる。


\begin{eqnarray}
\phi(ghg^{-1})&=&\phi(g)\phi(h)\phi(g^{-1})\\
&=&\phi(g)1'\phi(g)^{-1}\\
&=&\phi(g)\phi(g)^{-1}\\
&=&1'
\end{eqnarray}

よって、$ghg^{-1}\in {\rm Ker}(\phi)$ なので、${\rm Ker}(\phi)\lhd G$ である。

$\Box$

演習

  1. $G,G'$ を群とし、$f:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、 $$ N'\lhd G'\Rightarrow f^{-1}(N')\lhd G $$ を示せ。
  2. $1$ を用いて命題3を証明せよ。
  3. $G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、${\rm Im}(\phi)<G'$ である。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
部分群 http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf