bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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直交群

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

とりあえず、演習の証明からする。

演習

  1. $G,G'$ を群とし、$f:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、 $$ N'\lhd G'\Rightarrow f^{-1}(N')\lhd G $$ を示せ。
  2. $1$ を用いて命題3を証明せよ。
  3. $G,G'$ を群とし、$\phi:G\to G'$ を準同型とする。
    このとき、${\rm Im}(\phi)<G'$ である。

証明1

$\forall g\in G\ ,\forall h\in f^{-1}(N')$ をとる。
このとき、$f(g)\in G',f(h)\in N'$ であり、$N'\lhd G'$ なので、$f(g)f(h)f(g)^{-1}\in N'$ である。

よって、$f(ghg^{-})=f(g)f(h)f(g)^{-1}$ なので、$ghg^{-1}\in f^{-1}(N')$ である。
よって、$f^{-1}(N')\lhd G$

$\Box$

証明2

$\{1'\}<G'$ であるのはいいだろう。
$\forall g\in G'$ をとる。

$$ g1'g^{-1}=gg^{-1}=1'\in \{1'\} $$

よって、${1'}\lhd G'$ なので、演習1より、${\rm ker}(f)=f^{-1}(\{1'\})\lhd G$ である。

$\Box$

つまり、$kef(f)$ が $G$ の正規部分群になるのは演習1の特別な場合だったというわけである。

証明3

$\forall x,y\in {\rm Im}(\phi)$ をとる。
すると、$\exists x_1,y_1\in G\ ;x=f(x_1),y=f(y_1)$

$$ \begin{align} x^{-1}y&=f(x_1)^{-1}f(y_1)\\ &=f(x_1^{-1})f(y_1)\\ &=f(x_1^{-1}y_1)\\ \end{align} $$

$G$ は群なので、$x_1^{-1}y_1\in G$ である、よって、${\rm Im}(\phi)<G'$ である。

$\Box$

さて、今回はもう少し、群の実際の例についてみてく。

命題1

$O(n)=\{A\in GL_n{(\mathbb{R})}\mid \forall \boldsymbol{v}\in \mathbb{R}^n\ ,|A\boldsymbol{v}|=\boldsymbol{v}\}$
と定義すると、$O(n)<GL_n(\mathbb{R})$ となる。

証明

$\forall A,B\in O(n)$ をとる。
定義より、$\forall v\in \mathbb{R}^n\ ,|A\boldsymbol{v}|=|\boldsymbol{v}|,|B\boldsymbol{v}|=|\boldsymbol{v}|$ $$ \begin{align} |A^{-1}B\boldsymbol{v}|&=|A^{-1}(B\boldsymbol{v})|\\ &=|A^{-1}\boldsymbol{v}|\\ &=|A(A^{-1}\boldsymbol{v})|\\ &=|(AA^{-1})(\boldsymbol{v})|\\ &=|I_n\boldsymbol{v}|\\ &=\boldsymbol{v}\\ \end{align} $$

$\Box$

つまり、この群は、ベクトルの長さを変えないような変換群である。 以下のようなイメージである。

f:id:bananake-tai:20170514174742j:plain:w400

さて、これが群になるということが分かったが、長さを変えないという群ってどんなものか良く分からない。 なので、この群をもっと別の形で記述してみる。
前に、群の例で、$O(n)$ と書いて直交群というのを例であげたが、実は先の $O(n)$ というのと、前の直交群は同じなのである。 それを証明していく。いちお、もう一度直交群の定義を書いておく。

例5(直交群)

$O(n)=\{A\in GL_n{(\mathbb{R})}\mid ^tAA=I_n\}$
と定義すると、$O(n)<GL_n(\mathbb{R})$ となる。
$O(n)$ を直交群という。

命題2

$\forall A\in GL_n(\mathbb{R})$ に対し、次の $(1)\sim (4)$ は同値である。
$(1)\ A\in O(n)$
$(2)\ \forall \boldsymbol{v},\boldsymbol{w}\in \mathbb{R}\ ,(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})=\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w}$
$(3)\ A=(\boldsymbol{v}_1|\boldsymbol{v}_2|\cdots |\boldsymbol{v}_n)$ を列ベクトル分解として、$\boldsymbol{v}_{i}\cdot \boldsymbol{v}_{j}=\delta_{ij}$
$(4)\ {}^tAA=I_n$

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$ $$ \begin{align} |A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|=|A(\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w})|=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}| \end{align} $$

なので、

$$ \begin{align} |A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}|&\Leftrightarrow |A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}|^{2}\\ \end{align} $$

よって、

$|A\boldsymbol{v}+A\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}+\boldsymbol{w}|^{2}$
$\Leftrightarrow |A\boldsymbol{v}|^2+2(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})+|A\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}|^{2}+2(\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w})+|\boldsymbol{w}|^{2}$
$\Leftrightarrow |\boldsymbol{v}|^{2}+2(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})+|\boldsymbol{w}|^{2}=|\boldsymbol{v}|^{2}+2(\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w})+|\boldsymbol{w}|^{2}$
$\Leftrightarrow 2(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})=2(\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w})$
$\Leftrightarrow (A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{w})=\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{w}$

$\underline{(2)\Rightarrow (3)}$
$1\leq \forall i\leq n\ ,\boldsymbol{v}_i=A\boldsymbol{e}_i$ なので、 $$ \boldsymbol{v}_i\cdot \boldsymbol{v}_j=A\boldsymbol{e}_i\cdot A\boldsymbol{e}_j=\boldsymbol{e}_i\cdot \boldsymbol{e}_j=\delta_{ij} $$

$\underline{(3)\Rightarrow (4)}$
${}^tAA$ の $(i,j)$ 成分は $$ {}^t\boldsymbol{v}_i\boldsymbol{v}_j=\boldsymbol{v}_i\cdot \boldsymbol{v}_j=\delta_{ij} $$ よって、${}^tAA=I_n$

$\underline{(4)\Rightarrow (1)}$ ここは、演習とする。

$\Box$

今、証明した命題から、長さを変えないような変換の特徴づけをすることができた。
実際にどのような元が $O(n)$ に入っているのだろうか。 特にわかりやすいように $n=2$ のとき、すなわち $O(2)$ のときについて考えていく。

$$ T= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\ 0 & -1 \\ \end{array} \right) $$ とすると、$T\in O(2)$ である。実際、

$ T \left( \begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right) $ $ = \left( \begin{array}{c} x \\ -y \end{array} \right) $

となるので、明らかに長さを変えない。 これは、$x$ 軸に対しての折り返し変換となる。イメージ的には下の図のような変換である。

f:id:bananake-tai:20170514174759j:plain:w400

直交群の行列式は $\pm1$ なので、(これは演習とする。)次のような部分群を定義する。

定義

$SO(n)=\{A\in O(n)\mid det(A)=1\}$
を特殊直交群という。

これは、あきらかに $SO(n)<O(n)$ であるが、$SO(n)\lhd O(n)$ ともなっている。

命題3

$SO(n)\lhd O(n)$

証明

${\rm det}:O(n)\to \mathbb{R}^{\times}$ を考えると、行列式の性質より、${\rm det}$ は準同型である。
また、${\rm ker}({\rm det})=1$ なので、${\rm ker}({\rm det})=SO(n)$ となり、前に示した定理より、${\rm ker}\lhd G$ がいえるので、$SO(n)\lhd O(n)$ である。

$\Box$

$SO(2)$ の元にはどんなものがあるのだろうか。

定義

$\forall \theta \in \mathbb{R}$ に対して、 $$ R_{\theta}= \left( \begin{array}{c} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{array} \right) $$
と定義する。

これは、ある点を $\theta$ 回転させる回転行列と呼ばれるものだったが、実際に次の命題が成り立つ。

命題4

$\forall \theta \in \mathbb{R}$ に対して、$R_{\theta}\in SO(2)$ が成り立つ。

証明

明らかに、${}^tR_{\theta}=R_{\theta}^{-1}$ である。
よって、$R_{\theta}\in O(2)$
また、${\rm det}(R_{\theta})=1$ なので、$R_{\theta}\in SO(2)$ である。

$\Box$

$R_{\theta}\in SO(2)$ は分かった。しかし、先ほどの例で考えた $T$ は ${\rm det}(T)=-1$ なので、$T\not\in SO(n)$ である。
おもしろいことに、次の命題が成立する。

命題5

$\forall A\in SO(2)\, \exists \theta \in \mathbb{R}\ ;A=R_{\theta}$

証明

$\forall A\in SO(2)$ をとると、$a,b,c,d\in \mathbb{R}$ が存在して、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a & b \\ c & d \\ \end{array} \right) $$

と表せる。

直交群の同値命題 $(4)$ と ${\rm det}A=ad-bc=1$ より、${}^tA=A^{-1}$ なので、

$ \left( \begin{array}{c} a & c \\\ b & d \end{array} \right) $ $ = \left( \begin{array}{c} d & -b \\\ -c & a \\ \end{array} \right) $

よって、$d=a,b=-c$ である。すなわち、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a & -c \\ c & a \\ \end{array} \right) $$

と表せる。${\rm det}A=a^{2}+c^{2}=1$ なので、$\exists \theta\in \mathbb{R}\ ;a=\cos \theta, c=\sin \theta$ と表せる。
よって、$A=R_{\theta}$ となる。

$\Box$

これは、代数的な意味が強い証明であるが、幾何学的にはどのようなことをしているのかを、同値命題 $(3)$ を用いて考察してほしい。これは演習とする。

さらに、$SO(2)$ に対して次の命題が成立する。

命題6

$SO(2)$ は可換群となる。

証明

$\forall A,B\in SO(2)$ をとる。
すると、$\exists \theta ,\varphi\in \mathbb{R}\ ;A=R_{\theta},B=R_{\varphi}$
$\sin$ と $\cos$ の加法定理より、
$$ AB=R_{\theta}R_{\varphi}=R_{\theta +\varphi}=R_{\varphi +\theta}=R_{\varphi}R_{\theta}=BA $$

$\Box$

これは、$\theta$ 回転させて、$\phi$ 回転するのと、$\phi$ 回転させて、$\theta$ 回転するのが同じであるということを言っているのである。
図的には明らかである。

f:id:bananake-tai:20170514174800j:plain:w400

さて、代数学では具体化と抽象化が行き来できるようになることが重要だと前に話したが、これを抽象化すると、次の命題が成り立つ。

命題6

$G$ を群、$G'$ を可換群とする。
$f:G\to G'$ を準同型なら、${\rm Im}(f)$ は可換群となる。

これも、演習とする。証明は命題6と同じである。

演習

  1. 命題2の $(4)\Rightarrow (1)$ を示せ。
  2. 命題5を直交群の同値命題 $(3)$ を用いて証明せよ。また、幾何学的な意味も考察せよ。
  3. $G$ を可換群、$G'$ を群とする。
    $f:G\to G'$ を準同型なら、${\rm Im}(f)$ は可換群となることを示せ。
  4. $G$ を群とする。
    $H<G,K\lhd G$ のとき、$H\cap K \lhd H$ となることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
部分群 http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf