bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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群の生成と2面体群

以下の記事の続きを書く。

bananake-tai.hatenablog.com

まずは、演習の解説からする。

演習

  1. 命題2の $(4)\Rightarrow (1)$ を示せ。
  2. 命題5を直交群の同値命題 $(3)$ を用いて証明せよ。また、幾何学的な意味も考察せよ。
  3. $G$ を可換群、$G'$ を群とする。
    $f:G\to G'$ を準同型なら、${\rm Im}(f)$ は可換群となることを示せ。
  4. $G$ を群とする。
    $H<G,K\lhd G$ のとき、$H\cap K \lhd H$ となることを示せ。

証明1

$\forall A\in O(n)\ ,\forall \boldsymbol{v}\in \mathbb{R}^n$ をとる。

$$ \begin{align} |A\boldsymbol{v}|^{2}&=(A\boldsymbol{v})\cdot (A\boldsymbol{v})\\ &={}^t(A\boldsymbol{v})(A\boldsymbol{v})\\ &=({}^t\boldsymbol{v}{}^tA)(A\boldsymbol{v})\\ &={}^t\boldsymbol{v}({}^tAA)\boldsymbol{v}\\ &={}^t\boldsymbol{v}I_n \boldsymbol{v}\\ &={}^t\boldsymbol{v} \boldsymbol{v}\\ &=\boldsymbol{v} \cdot \boldsymbol{v}\\ &=|\boldsymbol{v}|^{2}\\ \end{align} $$

よって、$|A\boldsymbol{v}|=\boldsymbol{v}$

$\Box$

証明2

$\forall A\in SO(2)$ をとると、$a,b,c,d\in \mathbb{R}$ が存在して、

$$ A= \left( \begin{array}{c} a & b \\ c & d \\ \end{array} \right) $$

と表せる。

$ \boldsymbol{v}\_{1}= \left( \begin{array}{c} a \\ c \\ \end{array} \right) , $ $ \boldsymbol{v}_{2}= \left( \begin{array}{c} b \\ d \\ \end{array} \right) $

とおくと、直交群の同値命題$(3)$ より、次の3条件が成立する。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)&\boldsymbol{v}_{1}\cdot \boldsymbol{v}_{1}=1\Leftrightarrow |\boldsymbol{v}_{1}|=1\\ (2)&\boldsymbol{v}_{1}\perp \boldsymbol{v}_{2}=1\Leftrightarrow \boldsymbol{v}_{1}\cdot \boldsymbol{v}_{2}=0\\ (3)&\boldsymbol{v}_{2}\cdot \boldsymbol{v}_{2}=1\Leftrightarrow |\boldsymbol{v}_{2}|=1 \end{array} \right. \end{align} $

$(1)$ より、$\ a^{2}+c^{2}=1$

これを図で表すと、以下のようになる。

f:id:bananake-tai:20170518153538j:plain:w300

$(2)$ より、$\boldsymbol{v}_{1}$ と $\boldsymbol{v}_{2}$ は直交していることがわかるので、$\boldsymbol{v}_{2}$ は以下の図の2つである。

f:id:bananake-tai:20170518155602j:plain:w250

これは、$(3)$ を満たす。

あとは、$|A|=1$ ということを使えば、最終的に、

$$ A= \left( \begin{array}{c} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{array} \right) $$

となる。

$\Box$

証明3

$\forall a',b'\in {\rm Im}(f)$ をとる。
$\exists a,b\in G\ ;a'=f(a),b'=f(b)$

$$ \begin{align} a'b'&=f(a)f(b)\\ &=f(ab)\\ &=f(ba)\\ &=f(b)f(a)\\ &=b'a' \end{align} $$

$\Box$

証明4

$\Box$

では、$SO(2)$ の続きからやっていく。

定義

$G$ を群とする。
$|G|<\infty$ のとき、$G$ を有限群という。

$n\in \mathbb{Z}_{\geq 0}$ とする。
ことのき、

$$ \mu_n=\{R_{\theta}\mid \theta =\frac{2\pi k}{n}\ ,(k=0,\dots n-1)\} $$

と定義すると、$\mu_n<SO(2)$ となる。

証明

$\forall a,b\in \mu_n$ をとる。
すると、$\exists k,l\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;a=R_{\frac{2\pi k}{n}},b=R_{\frac{2\pi l}{n}}$

$$ \begin{align} a^{-1}b&=R_{\frac{2\pi k}{n}}R_{\frac{2\pi l}{n}}\\ &=R_{-\frac{2\pi k}{n}}R_{\frac{2\pi l}{n}}\\ &=R_{\frac{2\pi(n-k)}{n}}R_{\frac{2\pi l}{n}}\ (0\leq n-k\leq n)\\ &=R_{\frac{2\pi(n-k+l)}{n}} \end{align} $$

また、$\exists q,r\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;n-k+l=nq+r\ (0\leq r\leq n)$
よって、

$$ \begin{align} a^{-1}b&=R_{\frac{2\pi(nq+r)}{n}}\\ &=R_{2\pi q+\frac{2\pi r}{n}}\\ &=R_{\frac{2\pi r}{n}}\\ \end{align} $$

よって、$a^{-1}b\in \mu_n$ なので、$\mu_n<SO(2)$

$\Box$

よって、$\mu_n$ は位数 $n$ の有限群の例となっているのである。

これから、少し抽象的な話をする。

定義

$G$ を群とし、$S\subset G$ とする。
$x\in S$ が $S$ の元による語である $\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\exists n\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;\exists x_1,\cdots ,x_n\in S\ ;x=x_1^{\pm 1}\cdots x_n^{\pm 1}$
但し、重複もゆるし、$n=0$ のときは、$S$ の語は $G$ の単位元 $1$ を表すものとする。
$<S>$ を $S$ の元による語全体の集合とする。

少し、難しいかもしれないが、言い方を変えれば $S$ の元による語 というのは、$S$ の元を有限個並べて積をとったものと等しい。
なぜ、このようなものを定義するのかというと、群の部分集合をさだめ、$<S>$ というものを考えれば自然に群を構成できるからである。 次の命題が成立する。

命題

$G$ を群とし、$S\subset G$ とする。 このとき、$<S><G$ が成立する。

証明

$\forall a,b\in <S>$ をとる。
すると、$\exists n,m\in \mathbb{Z}_{\geq 0}\ ;\exists x_1,\cdots ,x_n,y_1,\dots y_m\in S\ ;x=x_1^{\pm 1}\cdots x_n^{\pm 1},y=y_1^{\pm 1}\cdots y_n^{\pm 1}$

$$ \begin{align} x^{-1}y&=(x_1^{\pm 1}\cdots x_n^{\pm 1})^{-1}(y_1^{\pm 1}\cdots y_n^{\pm 1})\\ &=x_m^{\mp 1}\cdots x_1^{\mp 1}y_1^{\pm 1}\cdots y_n^{\pm 1} \end{align} $$

よって、$x^{-1}y\in <S>$ なので、$<S><G$

$\Box$

$<S>$ を $S$ によって、生成された部分群という。

定義

$G$ を群とする。
$G$ が巡回群である$\overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow}$ $\exists g\in G\ ;G=<g>$

$Z=<1>$ である。

$a= R_{\frac{2\pi}{n}}$ とすると、$\mu_n=<a>$ である。

$ T= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\\ 0 & -1 \end{array} \right) $ $ , T'= \left( \begin{array}{c} -1 & 0 \\\ 0 & 1 \\ \end{array} \right) $

とすると、$T,T'$ はそれぞれ、$x$ 軸と $y$ 軸による折り返しで、$T,T'\in O(2)$ である。
このとき。$V_4=<T,T'>$ をクラインの4元数群という。
$<T,T'>$ で生成される部分群は実際どのようなものになるのだろうか。実際に求めていく。

さて、今、次の2つの関係式が成立する。 $$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& TT'=T’T\\ (2)& T^{2}=T'^{2}=I \end{array} \right. \end{align} $$

今、$x=TT'TT’T$ という $S=\{T,T'\}$ の元による語を考えてみる。
$(1)$ の関係式を使って次のような変形を行う。

$$ \begin{align} x&=TT'TT’T\\ &=TT'TTT'\\ &=TTT'TT'\\ &=TTTT’T'\\ \end{align} $$

と変形できる。
次に、$(2)$ の関係式を使って次のような変形を行う。

$$ \begin{align} x&=TTTT’T'\\ &=ITT’T'\\ &=TT’T'\\ &=TI\\ &=T \end{align} $$

となる。
よって以上の議論より、任意の $S$ の元による語が与えられたとき、$(2)$ を使い、$T$ を左に、$T'$ を右に移動させ分けることができる。 次に $(1)$ を使うと $x$ は次のいづれかになる。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& T &(T:odd,T:even)\\ (2)& T' &(T:even,T:odd)\\ (3)& TT' &(T:odd,T:odd)\\ (4)& I &(T:even,T:even) \end{array} \right. \end{align} $

$T,T'$ の個数が偶数か奇数というのを表している。
これで、$S$ によって生成される部分群の元が全て決定された。つまり、

$$ V_{4}=\{I,T,T',TT'\} $$

の4つの元である。
実はこの群は、巡回群でない位数が最小の群である。

$O(2)$ の別の元で生成される部分群を調べる。

例 

$t=R_{\frac{2\pi}{n}}\ ,$ $ r= \left( \begin{array}{c} 1 & 0 \\\ 0 & -1 \end{array} \right) $

とする。このとき、$D_n=<t,r>$ を正2面体群という。
クライン4元数群よりもやや複雑であるが、これも同様に、$t$ と $r$ で生成される部分群を記述していく。

今、次の2つの関係式が成立する。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& t^{n}=I,r^{2}=I\\ (2)& t^{k}r=rt^{n-k}& (k\in \mathbb{Z}) \end{array} \right. \end{align} $

これは演習とする。

$D_{2}$ のときを考察してみると、次の関係式となる。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& t^{2}=I,r^{2}=I\\ (2)& t^{k}r=rt^{2-k}& (k\in \mathbb{Z}) \end{array} \right. \end{align} $

今、$t,r$ の元による語として、$x=t^{6}r^{5}t^{-2}tr^{-3}t^{4}r$ を考える。

$(1)$ の $r^{2}=I$ を使い $r$ を1次へ変形する。

$$ \begin{align} x&=t^{6}r^{5}t^{-2}tr^{-3}t^{4}r\\ &=t^{6}rt^{-2}trt^{4}r\\ \end{align} $$

次に、$(2)$ を使い $t$ を前へ、$r$ を後ろへ移動させる。

$$ \begin{align} x&=t^{6}rt^{-2}trt^{4}r\\ &=t^{6}rt^{-2}tt^{-2}rr\\ &=t^{6}t^{-2}rtt^{-2}rr\\ &=t^{6}t^{-2}trt^{-2}rr\\ &=t^{6}t^{-2}tt^{-2}rrr\\ \end{align} $$

$t$ と $r$ を計算し、 $r$ の次数を1次以下にすると、

$$ x=t^{3}r^{3}=t^{3}r $$

となる。
最後に、$(1)$ の $t^{2}=I$ を使うと、$x=tr$ となる。よって、任意の $S$ の元による語に対して、同様の議論を使えば、$x$ は

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& e,t&(r:even)\\ (2)& r, tr &(r:odd) \end{array} \right. \end{align} $

と表せる。
よって、$D_{2}=\{e,t,r,rt\}$ となる。

以上の議論を使えば、一般の $D_{n}$ に対しても適応でき、$x$ は次のいずれかの元になる。

$ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& e,t,t^{2},\dots ,t^{n-1} &(r:even)\\ (2)& r, tr,,t^{2}r,\dots ,t^{n-1}r &(r:odd) \end{array} \right. \end{align} $

よって、$D_{n}$ のすべての元が確定でき、

$$ D_{n}= \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} e,t,t^{2},\dots ,t^{n-1}\\ r, tr,,t^{2}r,\dots ,t^{n-1}r \end{array} \right\} \end{align} $$

となる。つまり、$D_{n}$ は 位数 $2n$ の群となる。

このように、一般に群があり、ある生成元が与えられて、その元で生成される部分群をの元を全て決定するのは、なかなか大変である。
このように、きれいに求まるのはめずらしいのである。めちゃくちゃな生成元も考えようと思えば山ほどかんがえられるが、普通はこのようには決定できない。

さて、最後に $D_{n}$ という群がどのような意味を持つのかを幾何学てきに考える。
今、$D_{3}$ で考えるとする。それと、次のような番号のついた正6角形を考える。

それを、分かりやすいように単位円上の $(1,0)$ に1つの頂点があるように配置する。

f:id:bananake-tai:20170518151824j:plain:w250

各頂点を $t^{2}r\in D_{3}$ という元によって移動させると、$r$ は$x$ 軸に関しての折り返しなので、次のようになる。

f:id:bananake-tai:20170518153620j:plain:w250

$n=3$ なので、$t^{2}$ によって、$\frac{2\pi}{3}$ 回転を2回行うことになる。
すると、次のようになる。

f:id:bananake-tai:20170518151753j:plain:w250

つまり、幾何学的な記述では次のように言い換えることができる。
$P_{n}$ を単位円周上に頂点をもつ正 $n$ 角形として、

$$ D_{n}=\{A\in O(2)\mid A(P_{n})=P_{n}\} $$

つまり、回転しても折り返しても図形が一致するような、$A$ 全体である。つまり、$D_{n}$ というのはどうやら図形の対称性を表しているような群であるということが分かった。

これは、結構おもしろい結果である。このように、群というものの構造を調べていった結果幾何学的な意味も持つということが分かったのである。
このように、非可換な群というのは、対称性を記述することができるのである。
ここまできて、ようやく群というものが少しは、分かってもらえたと思う。

演習

  1. $G$ を群とし、$S\subset G$ とする。このとき、$<S>$ は $S$ を含む最小の部分群であるということを示せ。
  2. $D_{n}$ に対し、
    $ \begin{align} \left\{ \begin{array}{l} (1)& t^{n}=I,r^{2}=I\\ (2)& t^{k}r=rt^{n-k}& (k\in \mathbb{Z}) \end{array} \right. \end{align} $ が成立することを示せ。
  3. $V_4$ と $D_2$ が同型になることを示せ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
森田康夫, 代数概論, 裳華房, 1987.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
部分群 http://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf