bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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剰余類

る今回は、群論で非常に重要な概念となる剰余類についてかく。

定義

$H$ を 群 $G$ の部分群とする。 $\forall x,y\in G$ に対し、
$$ x\sim y\Leftrightarrow x^{-1}y\in H $$ と定義すると、$\sim$ は $G$ 上の同値関係となる。 このとき、$x\in G$ の同値類$C(x)$ を $xH$ と書く。
この同値関係による商 $G/\sim$ を $G/H$ と書く。
$\forall x,y\in G$ に対し、
$$ x\sim y\Leftrightarrow xy^{-1}\in H $$ と定義すると、$\sim$ は $G$ 上の同値関係となる。 このとき、$x\in G$ の同値類$C(x)$ を $Hx$ と書く。
この同値関係による商 $G/\sim$ を $G\backslash H$ と書く。

上の関係が同値関係となるのは演習とする。

命題

$H$ を 群 $G$ の部分群とする。
このとき、 $$ xH=\{xh\in G\mid h\in H\} $$ が成立する。

証明

$$ \begin{align} xH&=\{y\in G\mid x\sim y\} \\ &=\{y\in G\mid x^{-1}y\in H\} \\ &=\{y\in G\mid \exists h\in H;x^{-1}y=h \} \\ &=\{y\in G\mid \exists h\in H;y=xh\}\\ &=\{xh\in G\mid h\in H\} \end{align} $$

$\Box$

例1

$G=\mathbb{Z}_{6}$ の部分群 $<2>$ による剰余類を求める。

$<2>=\{0,2,4\}=H$ とする。
$1+H=\{1,3,5\}$
よって、$\mathbb{Z}_{6}=H\cup (1+H)$
$G/H=\{H,1+H\}$

例2

$D_2=\{e,t,r,tr\}$ の部分群 $<t>,<r>$ による剰余類を求める。
$H= <t>=\{e,t\}$ のとき、$rH=\{r,tr\}$ である。よって、
$D_{2}=\{H,rH\}$

$H= <r>=\{e,r\}$ のとき、 $tH=\{t,tr\}$ である。よって、
$D_{2}=\{H,tH\}$

命題

$H$ を群 $G$ の部分群とする。
次の $(1),(2)$ が成り立つ。
$(1)$ $|G/H|=|H\backslash G|$
$(2)$ $\forall g\in G, |H|=|gH|=|Hg|$

証明

$(1)$
$f:|G/H|\to |H\backslash G|$ を $f(gH)=Hg^{-1}$ とすると、$f$ はwell-defined $\forall a,b\in G$ をとる。

$$ \begin{align} aH=bH&\Leftrightarrow a^{-1}b\in H \\ &\Leftrightarrow a^{-1}b\in H\\ &\Leftrightarrow z^{-1}(b^{-1})^{-1}\in H\\ &\Leftrightarrow Ha^{-1}=Hb^{-1} \end{align} $$ よって、$f$ はwell-defined

同様に、$g:|H\backslash G|\to |G/H|$ を $f(Hg)=g^{-1}H$ とすると、$g$ はwell-defined
$f,g$ は互いの逆写像であるので、全単射である。よって、$|G/H|=|H\backslash G|$

$(2)$
$\forall g\in G$ をとる。
$\phi:H\to gH$ を $\phi(h)=gh$ とする。
$\forall h_1,h_2\in H$に対し、$gh_1=gh_2$ なら $h_1=h_2$ である。 よって、$\phi$ は単射
全射は明らか。よって、$\phi$ は全単射である。 $|H|=|Hg|$ も同様。

$\Box$

定義

$|G/H|$ を $G$ における $H$ の指数といい、$|G:H|$ で表す。

剰余類を考えることは、次の強力な定理が成り立つため重要である。

定理(ラグランジュの定理)

$H$ を群 $G$ の部分群とする。
このとき、 $$ |G|=|G:H||H| $$ が成り立つ。

証明

$G/H$ の完全代表系 $\{x_{i}\}_{i\in I}\subset G$ をとる。
$G=\coprod_{i\in I}x_{i}H$ である。 $\forall i\in I$ に対し、$|x_{i}H|=|H|$ なので、
$|G|=|G:H||H|$ が成り立つ。

$H$ を有限群 $G$ の部分群とする。
$|H|$ は $|G|$ の約数である。

$\Box$

証明

ラグランジュの定理から明らかである。

$\Box$

なぜ、ラグランジュの定理が強力かというと、ガロア理論などで、ある群の部分群を決定する必要がある場合がある。
部分群を決定するさいに、ラグランジュの定理は非常に役立つ。 いくつか、位数に関する命題をあげる。

命題

$G$ を位数 $p$ の群とする。
$G\in x\neq 1$ なら、$G=<x>$ である。

証明

$H=<x>$ とすると、$H<G$ である。
ラグランジュの定理より、$p=|G|=|G:H||H|$ であり、$x\neq 1$ なので、$|H|\neq 1$
よって、$|H|=p=|G|$。$H\subset G$ なので、$G=H$。

$\Box$

命題

$x\in G,ord(x)=d$ とする。
$|H|=<x>$ とすると、$|H|=d$ となる。

証明

$H=\{x^{n}\mid n\in \mathbb{Z}\}$ である。
$\exists q,r\in \mathbb{Z};n=qd+r$ $(0\leq r< d)$
$x^{n}=x^{r}$ なので、$H=\{1,x^{2},\dots , x^{d-1}\}$
もし、$|H|\neq d$ とすると、$\exists 0\leq i<j< d,x^{i}=x^{j}$
すると、$x^{j-i}=1$ で、$1<j-i<d$ となり、$d$ の最小性に矛盾。
よって、$|H|=d$

$\Box$

同様に、この命題の逆も言える。

問題

$S_3$ の部分群を決定せよ。

$|S_3|=6$ なので、ラグランジュの定理より、部分群 $H$ の位数は、$1,2,3,6$ のどれかである。

$(1)$ 位数 $1$ の部分群
$H=\{e\}$ のみである。

$(2)$ 位数 $2$ の部分群
$|H|=2$ で、$2$ は素数なので、$|H|$ は巡回群である。
よって、命題より、$H$ は $x\in S_3,ord(x)=2$ なる $x$ で生成される。
位数2の $S_3$ の元は、$(1,2),(1,3),(2,3)$ である。
よって、位数2の部分群は、$H=\{e,(12)\},\{e,(1,3)\},\{e,(2,3)\}$ の3つである。

$(3)$ 位数 $3$ の部分群
$|H|=3$ で、$3$ は素数なので、$|H|$ は巡回群である。
よって、命題より、$H$ は $x\in S_3,ord(x)=3$ なる $x$ で生成される。
位数3の $S_3$ の元は、$(1,2,3),(1,3,2)$ である。
$(1,2,3)^{2}=(1,3,2)$ である。 よって、位数3の部分群は、$H=\{e,(1,2,3),(1,3,2)\}$ の1つである。

$(4)$ 位数 $6$ の部分群
$H=S_3$ のみである。

演習

  1. $V_4$ の部分群を決定せよ。
  2. $D_2,D_3$ の部分群を決定せよ。

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学1, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.