bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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代数拡大

この話は、基本的な群、環の知識を持っていると仮定し、体の定義も知っていると仮定する。

定義(拡大体)

体 $L$ の部分環 $K$ が体であるとき、$K$ は $L$ の部分体、$L$ は $K$ の拡大体という。
また、$L/K$ は拡大体であるともいう。

$\mathbb{R}/\mathbb{Q}$ のは拡大体である。

$\mathbb{Q}[\sqrt{2}]=\{a+b\sqrt{2}\mid a,b\in \mathbb{Q}\}$ とすると、 $\mathbb{Q}[\sqrt{2}]/\mathbb{Q}$ は拡大体である。

$K$ を体とする。
$K(x)$ を1変数有理関数体とすると、$K(x)/K$ は拡大体である。

定義

$L/K$ を拡大体とすると、$L$ は $K$ のベクトル空間とみなせる。 $$ [L:K]=dim_{K}L $$ とし、$L$ の $K$ 上の拡大次数という。
$[L:K]<\infty$ なら$L$ は $K$ の有限次拡大といい、
そうでなければ無限次拡大といい、$[L:K]=\infty$ とかく。
$[L:K]=d$ なら、$d$ 次拡大であるという。

$\mathbb{R}\subset \mathbb{C}$ であり、$\mathbb{C}$ の $\mathbb{R}$ ベクトル空間としての基底を、 $\{1,\sqrt{-1}\}$ としてとれるので、$[\mathbb{C}:\mathbb{R}]=2$

$[\mathbb{Q}[\sqrt{2}]:\mathbb{Q}]=2$ である。

$[K(x):K]=\infty$ である。

定理

$L/M,M/K$ を有限次拡大とする。
このとき、$L/K$ も有限次拡大で、 $$ [L:K]=[L:M][M:K] $$ が成立する。

証明

$[L:M]=l,[M:K]= m $ とおく。
$B_{1}=\{x_{1},\dots ,x_{l}\}$ を $L$ の $ M $ 上の基底、$B_{2}=\{y_{1},\dots ,y_{m}\}$ を $ M $ の $K$ 上の基底とする。
$B=\{x_{i}y_{j}\mid i=1,\dots ,l,\ j=1,\dots ,m\}$ とおき、$B$ が $L$ の $K$ 上の基底となることを示す。

$(1)$ 生成
$\forall x\in L$ をとる。
$B_{1}$ は $L$ の基底なので、 $$ \exists a_{1},\dots ,a_{l}\in M\ ;x=\sum_{i=1}^{l}a_{i}x_{i} $$ となる。$B_{2}$ は $ M $ の基底なので、$1\leq \forall i\leq l$ に対して、 $$ \exists b_{i1},\dots ,b_{im}\in K\ ;a_{i}=\sum_{j=1}^{n}b_{ij}y_{j} $$ となる。よって、 $$ x=\sum_{i=1}^{l}\sum_{j=1}^{n}b_{ij}x_{i}y_{j} $$ となる。

$(2)$ 一次独立
$$ \forall b_{11},\dots ,b_{lm}\in K\ ,\sum_{i=1}^{l}\sum_{j=1}^{n}b_{ij}x_{i}y_{j}=0 $$ とする。$B_{1}$ は $ M $ 上一次独立なので、 $$ \sum_{j=1}^{n}b_{ij}y_{j}=0 $$ である。$B_{2}$ は $ K $ 上一次独立なので、 $$ 1\leq \forall i\leq l\ ,1\leq \forall j\leq m\ ,b_{ij}=0 $$ よって、$B$ は $K$ 上一次独立

$\Box$

補題

$L/K$ を拡大体とする。
$S\subset L$ とすると、$S\cup K$ を含む最小の部分体が存在する。

証明

$\forall \lambda\in \Lambda\ ,S\cup K\subset M_{\lambda}$ とする。
$S\cup K\subset L$ なので、$\Lambda \neq \varnothing$
$M=\bigcap_{\lambda\in \Lambda}M_{\lambda}$ とおくと、$ M $ は体である。
$\forall \lambda\in \Lambda\ ,K\cup S\subset M\subset M_{\lambda}$ であるので、最小の部分体は $ M $ である。

$\Box$

いくつか、定義をする。

定義

$L/K$ を体の拡大とする。
$S\subset L$ とすると、$S\cup K$ を含む $L$ 最小の部分体を $K(S)$ と書き、$K$ に $S$ を添加した体という。
$S=\{s_{1},\dots , s_{n}\}$ が有限集合のときは $K(S)$ のことを $K(s_{1},\dots , s_{n})$ と書く。
また、$K(S)$ を $K$ 上 $S$ で生成された体ともいう。

$K(S)$ の同値表現として、次の表現がある。

命題

$L/K$ を体の拡大とする。
$S=\{s_{1},\dots , s_{n}\}\subset L$ とし、  $$ A=\left\{\frac{f(s_{1},\dots , s_{n})}{g(s_{1},\dots , s_{n})}\mid f,g\in K[X_{1},\dots , X{n}],\ g(s_{1},\dots ,s_{n})\neq0\right\} $$ とおくと、$A=K(S)$ である。

証明

$A\subset K(S)$を示す。
$A$ の元は、$f(s_{1},\dots , s_{n})/g(s_{1},\dots , s_{n})$ という形をしていて、 $f(s_{1},\dots , s_{n})$ と $g(s_{1},\dots , s_{n})$ は $K\cup S$ の元の和や積で表されているので、$K(S)$ の元である。
また、$K(S)$ は体であり、$g(s_{1},\dots , s_{n})$ の逆元が存在するので、$f(s_{1},\dots , s_{n})/g(s_{1},\dots , s_{n})\in K(S)$ である。

$K(S)\subset A$を示す。
自明な考察により、$A$ は体となる。
明らかに、$K\cup S$

$\Box$

補足

$L/K$ を体の拡大とし、$a.b\in L$ とする。
$K(a,b)=K(a)(b)$ となる。
なぜなら、$K(a,b)$ は $K\cup \{a,b\}$ を含む最小の部分体で、$K(a)(b)$ は $K(a)\cup \{b\}$ を含む最小の部分体であるが、 $K(a)$ は $K\cup \{a\}$ を含む最小の部分体であるので、結局、$K(a)(b)$ は $K(a)\cup \{a\}\cup \{b\}$ 含む最小の部分体である。

定義

$L/K$ を体の拡大とする。
$\exists a\in L\ ;L=K(a)$ となるとき、$L$ を $K$ の単拡大という。
また、$\exists a_{1},\dots , a_{n}\in L\ ;K=(a_{1},\dots , a_{n})$ となるとき、$L$ は $K$ 上有限生成であるという。

有限生成の性質をしらべるまえに代数拡大を定義する。

定義(代数拡大)

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ とする。
$\exists f(x)\in K[x]:minic\ ;f(a)=0$ となるとき、$a$ は $K$ 上代数的であるという。
さらに、$\forall a\in L$ に対して、$K$ 上代数的なら、$L$ を代数拡大という。

代数拡大の性質を調べる。

命題

$L/K$ を体の拡大とし、$a\in L$ のとき、次は同値。
$(1)$ $a$ は $K$ 代数的である。
$(2)$ $K[a]=K(a)$

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$
$K[a]\subset K(a)$ は自明なので、逆の包含を示す。

$\phi :K[x]\to K[a]$ を $\phi(f)=f(a)$ とする。
$K[a]$ の定義より、$\phi$ は全射であり、また、凖同型でもある。
よって、凖同型定理より、$K[x]/Ker(\phi)\cong K[a]$
$a$ は代数的なので、$a\in Ker(\phi)$ より、$Ker(\phi)\neq (0)$
$L$ は体なので、$K[a]\subset L$ は整域であり、$K[x]/Ker(\phi)$ も整域である。
よって、$Ker(\phi)$ は素イデアルで、$K[x]$ はPIDなので、$Ker(\phi)$ は極大イデアルである。
よって、$K[x]/Ker(\phi)$ は体なので、$K[a]$ は体となる。
$K(a)$ の最小性より、$K(a)\subset K[a]$ よって、$K[a]=K(a)$

$\underline{(2)\Leftarrow (1)}$
$a=0$ は $K$ 上代数的なので、$a\neq 0$ とする。
$K[a]=K(a)$ なので、$a^{-1}\in K[a]$
よって、$\exists n\geq 0\ ;\exists c_{0},\dots ,c_{n}\in K\ ;a^{-1}=c_{0}+c_{1}a+\cdots +c_{n}a^{n}$
すなわち、$0=-1+c_{0}a+c_{1}a^{2}+\cdots +c_{n}a^{n+1}$ となり、$a$ は $K$ 上代数的である。

$\Box$

間違いや、感想がありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

参考文献

雪江明彦, 代数学2, 日本評論社, 2015.