bananake-tai’s diary

大学数学初学者のブログ

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イデアル

イデアルとはクンマーがフェルマーの最終定理を解く過程で考え出されたものである。

定義(イデアル

$A$ を環とする。
$I\subset A$ が次の条件をみたすとき $I$ を $A$ のイデアルという。
$(1)$ $x,y\in I \Rightarrow x-y\in I$
$(2)$ $a\in A,x\in I\Rightarrow ax\in I$

$A$ を環とする。
$I=\{0\}$ は $A$ のイデアルである。
特に、零イデアルという。
$I=A$ もイデアルである。
特に、自明なイデアルという。

$\Box$

$A$ を環とする。
$I=\{a\in A\mid \exists n\in \mathbb{N}\ ;a^{n}=0\}$ はイデアルとなる。
特に、根基という。

$\Box$

定義

$A$ を環とし、$S\subset A$ とする。
$(S)=\{a_{1}s_{1}+\cdots +a_{n}s_{n}\mid n\in \mathbb{N},a_{i}\in A,s_{i}\in S\}$ とすると、$(S)$ はイデアルになる。
$(S)$ を $S$ で生成されたイデアルという。
特に、$S=\{s_{1},\dots ,s_{n}\}$ なら、 $(S)=\{a_{1}s_{1}+\cdots +a_{n}s_{n}\mid a_{i}\in A,s_{i}\in S\}$
となり、有限生成であるという。
また、$S$ が1元集合なら、$(S)$ を単項イデアルという。

$A=\mathbb{Z}$ とする。
$I=n\mathbb{Z}$ は 単項イデアルである。

$\Box$

命題

$\mathbb{Z}$ の任意のイデアルは単項イデアルである。

証明

$I$ を $\mathbb{Z}$ の任意のイデアルとする。
$a=min\{x>0\mid x\in I\}$ とする。
$\forall b\in I$ をとり、$\exists q,r\in \mathbb{Z}\ ;b=aq+r\ (0\leq a<b)$ とできる。
$r=b-aq$ なので、$r\in I$ となる。
よって、$a$ の最小性より、$r=0$ とならなければならない。
よって、$b=aq$ となり、$b\in (a)$ なので、$I\subset (a)$
$(a)\subset I$ は自明なので、$I=(a)$

$\Box$

命題

$A$ を環とし、$S\subset A$ とする。
$(S)$ は $S$ を含む最小のイデアルである。
すなわち、$I\subset A$ がイデアルで、$S\subset I$ なら $(S)\subset I$ である。

証明

$s_{1},\dots ,s_{n}\in I$ なら $I$ イデアルなので、$As_{1}+\cdots +As_{n}\in I$
よって、$(S)\subset I$

$\Box$

命題

$A$ を環とする。
$a\mid b \Leftrightarrow (b)\subset (a)$

証明

$\underline{\Rightarrow}$
$x\in (b)$ をとる。
$\exists x'\in (b)\ ;x=x'b$
$b=ab'$ と書けるので、$x=x'b'a$ となり、$x'b'\in A$ なので、 $x\in (a)$

$\underline{\Leftarrow}$
$(b)\subset (a)$ なので、$b\in (a)$
よって、$b=b'a$ なので、$a\mid b$

$\Box$

$(573)$ を含む $\mathbb{Z}$ の単項イデアルは、$1,3,191,573\mid 573$ なので、
$(573)\subset (191) \subset (3) \subset (1)$ である。

$\Box$

命題

$A$ を環とし、$I\subset A$ をイデアルとする。
このとき、次は同値。
$(1)$ $I$ が自明なイデアル
$(2)$ $1\in I$

証明

$\underline{(1)\Rightarrow (2)}$
$I=A$ なので、$1\in I$

$\underline{(2)\Rightarrow (1)}$
$\forall a\in A$ に対して、$a\times 1\in I$ なので、$A\subset I$

$\Box$

$A=\mathbb{Q}[X,Y]$ とする。
$I=\{f(X,Y)\in A\mid f(0,0)=0\}$
と定義すると、$I$ は $A$ のイデアルとなる。
$I=\{f(X,Y)\in A$ の定数項は $0\}$ とも表せる。
$f(X,Y)\in A$ とすると、$f(X,Y)=\sum_{i,j=0}^{n}c_{ij}X^{i}Y^{j}$ という形をしているので、 $f(0,0)=c_{00}=0$ となり、定数項は $0$ となる。逆も同様。
また、$I=\{f(X,Y)\in A\mid f(X,Y)=aX+bY, a,b\in A\}$
これも、定数項がないので級数表示を考えれば自明である。
この形は生成元で表すと、$I=(X,Y)$ となっており、有限生成である。
さらに、実はこれは単項イデアルではない。

証明

もし、$I$ が単項イデアルだと仮定すると、$\exists g\in A\ ;I=(g)$
$X=1・X+0・Y$ で表されるので、$X\in I$
すると、$\exists r\in A\ ;X=r・g$ となり、$Y$ に関して次数を考えると、$deg_{Y}X=deg_{Y}r+deg_{Y}g$
$deg_{Y}X=0$ で、$deg_{Y}r\geq 0,\deg_{Y}g\geq 0$ なので、$deg_{Y}r=0,\deg_{Y}g=0$ となるしかない。
よって、$X=r(X)g(X)$ と表される。
また、$deg_{X}X=1$ なので、$deg_{X}g(X)$ は $0$ か $1$ のどちらかである。
$deg_{X}g(X)=0$ とすると、$g(X)=c\in \mathbb{Q}\backslash \{0\}$ なので、定数関数である。
$1/c\in A$ であり、$I$ イデアルなので、$1/c・g=1\in I$ であるが、$I\neq A$ なので、矛盾。
$deg_{X}g(X)=1$ とすると、$g(X)=cX+d\ (c\neq 0)$ と表される。
$deg_{X}r(X)=0$ なので、$r(X)=e\in \mathbb{Q}\backslash \{0\}$ と表される。
よって、$X=e(cX+d)=ecX+ed$ となり、係数を比較すると、$d=0$
よって、$I=(X)$ となるが、$X=0・X+1・Y$ で表されるので、$Y\in I$ なので、矛盾。

$\Box$

命題

$A$ は体 $\Leftrightarrow$ $A$ のイデアルは $(0)$ か $A$ のみ

証明

$\underline{\Rightarrow}$
$I\subset A$ を零でないイデアルとする。
$x\in I$ とすると、$A$ は体なので、$x^{-1}\in A$ となる。
よって、$xx^{-1}=1\in I$ なので、$I=A$

$\underline{\Leftarrow}$
$x\in A\backslash \{0\}$ をとる。
$(x)=A$ なので、$1\in (x)$
よって、$\exists y\in A\ ;1=yx$ となり、$x^{-1}=y$

$\Box$

命題

$A,B$ を環とする。
$f:A\to B$ が準同型なら、$ker(f)$ は $A$ のイデアルである。

証明

$x,y\in Ker(f)\ ,a\in A$とする。
$f(x-y)=f(x)-f(y)=0$ かつ $f(ax)=af(x)=0$ なので、$x-y,ax\in ker(f)$

$\Box$

命題

体から環の準同型は単射である。

証明

$k$ を体とし、$A$ を環とし、$f:k\to A$ を準同型とする。
命題より、$ker(f)$ は $k$ のイデアルで $k$ は体なので、$ker(f)$ は $k$ か $(0)$ である。
$f(1)=1$ なので、$ker(f)\neq A$ であるので、$ker(f)=\{0\}$

$\Box$

定義

$A$ を環とし、$I,J\subset A$ とする。
$I+J=\{x+y\mid x\in I,y\in J\}$ を $I,J$ の和という。
$IJ=\{\sum_{i}a_{i}b_{i}\mid a_{i}\in I,b_{i}\in J\}$ を $I,J$ の積という。

命題

$A$ を環とし、$I,J\subset A$ とする。
$I+J=(I\cup J)$ が成立する。

証明

$(1)$ $\underline{I+J\subset (I\cup J)}$

$\forall x\in I+J$ をとる。
$\exists a\in I\ ;\exists b\in J\ ;x=a+b$ となり、もちろん、$a,b\in I\cup J$ でもあるので、$x\in (I\cup J)$

$(2)$ $\underline{I+J\supset (I\cup J)}$

$\forall x\in (I\subset J)$ をとる。
$x=a_{1}s_{1}+\cdots +a_{n}s_{n}\ (a_{i}\in A,s_{i}\in (I\cup J)$ と表せる。
必要なら番号を付け替えて、$s_{1},\cdots ,s_{i}\in I\ ,s_{i+1},\cdots ,s_{n}\in J$ としてよい。
よって、$x=a_{1}s_{1}+\cdots +a_{n}s_{n}\ (a_{1}s_{1}+\cdots +a_{i}s_{i}\in I\ , a_{i+1}s_{i+1}+\cdots +a_{n}s_{n}\in J)$ と表せるので、 $x\in I+J$

$\Box$

ちなみに、$IJ=(\left \{ ab\mid a\in I,b\in J \right \} )$ である。

$IJ$ を自然に定義しようとすると、$IJ=\left \{ ab\mid a\in I,b\in J \right \}$ かもしれないが、
実は、一般的にはこう定義すると、$IJ$ はイデアルにはならない。
例をあげてみよう。

$A=\mathbb{Z}[x]$ とする。
$I=(x,3)\ ,J=(x,2)$ とすると、$I,J$ は $A$ のイデアルとなる。
$IJ$ がイデアルになったとする。

$3x,2x\in IJ$ なので、$x=3x-2x\in IJ$ である。
$I=\{xp(x)+3q(x)\mid p(x),q(x)\in \mathbb{Z}[x]\}=\{xF(x)+3a\mid F(x)\in \mathbb{Z}[x]\ ,a\in \mathbb{Z}\}$ と表せる。
$J$ も同様に、$J=\{x G(x) +2b\mid G(x)\in \mathbb{Z}[x]\ ,b\in \mathbb{Z}\}$
よって、$x=(xF(x)+3a)(x G(x) +2b)$ と表せる。
係数比較をすると、左辺は $x^{2}$ の項がないので、$F(x)=0$ または、$G(x)=0$ である。
$F(x)=0$ とすると、 $$ x=3a(x G(x) +2b)\Leftrightarrow \frac{x}{3}=a(x G(x) +2b)\in \mathbb{Z}[x] $$ となり、矛盾である。
$G(x)=0$ の場合も同様。

$\Box$

参考文献

雪江明彦, 代数学2, 日本評論社, 2015.
新妻 弘, 群・環・体 入門, 共立出版, 2016.
http://www.math.keio.ac.jp/~takaaki/class/ProductOfIdeals.pdf